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第3話 この世界の正体

「さぁ、もう少しこの喜劇を見ていこう。これからまた、面白いことが起こるから。」


 ――もう、十分見た。私の破滅。これ以上に辛いことなんて………


「コ、コココ、ココロ!これで、き君の願いは叶えた!ぼぼ、僕と、!けけけ、結婚してくりぇ!」


 あぁ、殿下は彼女を愛しているのね…義務で会っていたような、いつも政治や領地の話をする女なんかより、可愛らしくて、神にも愛された愛し子に恋をするのは必然なんだろう…。

とっても優しくて、思いやりのある殿下…彼女のこのプロポーズへの返答はもちろんイエスに…


「ふ、ふぇぇぇ!なんだか気持ちの悪い人が私に話しかけてきますぅぅぅ!ハスマフ王子…!私ぃ、怖いぃぃぃ!!」



 ……………え?



「お前…気づいてなかったのか?あのデブのさっきからの待遇…階段では集団から1人省かれたように後に突っ立って、オロオロしていたし…私の愛し子はあのデブに一度も声もかけてないし、ボディータッチもしていない。他の奴らにはベタベタしているのにだ。完全に空気扱いされているだろう?」


確かに、今までの光景を振り返ってみると、愛し子の殿下への待遇はよもや1人の女子が一国の皇太子にする仕打ちではなかった。


「まさか、私を破滅させるために…殿下を使うだけ使ったということ?」


「まぁ、だいたいお前の言う通りだな。ついでに言うと、愛し子のつけているアクセサリー類、全てあのデブ持ちだ。要するに、都合のいい財布だったわけ。いつもは空気みたいに扱っておいて、気分がいい時には可愛く挨拶をする、そうすればあのデブのちょろいことちょろいこと。愛し子の欲しいと言ったもの全て買ってくるわけよ。」


 ――「…うぇ?!ココ、ココロ!なんで!ぼぼぼ、僕は、ききき、君を愛ししている、んだよ…!い、今まで、だって、き、きき君の、欲しがったものは、、す、全て!プレゼントしたじゃない、か!」


「うぇぇぇ…何度かプレゼントを渡しただけで、婚約者のふりをするなんて…ココロ、怖いよぉ… 」


 そんな!殿下が振られた?!あまりの衝撃に言葉が漏れた。



「なんで…」



神は愛し子たちから目を全く離さず言った。


「君はまだ気づいていないのかい?君の婚約者はデブ・ブス・不器用の三拍子の落ちこぼれだぞ?良いところなんか、金を持っていることだけだ。ほら、周りの声を聞いてみろ。」


「あぁ、愛し子様、可哀想に!あのような能無し豚に発情されてしまうとは!」

「殿下も殿下よ!きっと自分の身分を笠に着て、愛し子様に強引に近づいたのだわ!」

 おしゃべりな小鳥たちが王族には面と向かって言えないからと扇で顔を隠しながらそう囀っていた。

不快極まりなかった。


………?シャンデリアが急に点滅し始めた。

「そ、そそそんな…ぼぼ、僕は、きき、き君のことを、おもも、お、想っていたのに、そそそそそそそそそそ、そんな、バカなバカなバカなバカなバカな…うわぁぁぁぁぁ!!」


 ――っ?!殿下から何か黒いものが…?


「お、きたようだな。アレだ。滅亡の原因。今までのストレス・不満・悲しみ・憎しみそれらの魔力の集大成さ。おぉ、おぉ。赤いツノに、とんがった牙に、ドス黒い羽…。その上理性を失って、人が吸ったら即死の毒ガスを振り撒いている…立派な魔王になってしまっているな。まぁ、こんなところだろう。ここから先は…賢いお前ならすぐに気づくだろう?」


確かに、容易く想像はつく…おそらくその毒ガスで、帝国を混乱に導くのだろう。王宮でやっているからには、このパーティーもとても規模の大きなもののはず…一夜にして数百人の貴族が死ねば、それこそ帝国の混乱は間違いない…、


…?愛し子が叫んでいる。


「いや、いや、いやぁ!無理無理!こんのデブ!なんでこんなのになってんの?!あんたはゲームでは、ただ私に振られて1人寂しく死んでいくだけでしょう?!それが…なんでこんなことになってるわけ?!運営ー!しっかりしなさいよ!っていうか、デブ!こっち来ないでよ!ねぇ!来ないでってば!い、い、いやぁぁぁぁぁぁ!」


 ふと違和感を覚えた。


「愛し子は、この帝国に恵みをもたらす存在なのでは…これでは破滅を導いてしまっているではないですか?!」


「《《今回は》》そのようだな…」


「それなのに、彼女を貴方は愛し子と呼ぶのですか?!」


「あぁ。そうだ。というかそうするしかないんだよ。」


「…?!どういう…ことですか?」


「…その話は現実あっちへ戻ってからするとしよう。」


 神が再び私の頭に手を乗せるとあの光がまた、私を包んだ。

 現実世界に戻ってくると、神は全てを話した――


 この世界が、愛し子や神が誕生した世界では、『乙女げぇむ』と呼ばれる人形遊びの超進化版であるということ。

 神はその『乙女げぇむ』の中に気づいたら入り込んでしまい、この世界に愛し子がくるという宣告をし、それからその世界が終わるまでを見るだけの傍観者(キャラクター)となったこと。

 愛し子は『乙女げぇむ』の『シナリオ』が完結するごとに、神のいた世界から無作為に送り込まれてくる、ただの平凡な女性だということ。

 神はこの『乙女げぇむ』で3人の男性と愛し子が幸せになる物語を100回以上、ただただ永遠と見続けていること。

 今回の世界では愛し子の『選択ミス』によって『隠しバッドエンド』になってしまったということ。

 そして、たとえ『選択ミス』をせず、この『乙女げぇむ』の『シナリオ』が完結したとしても、世界はなんらかの形で必ず破滅するということ。――


「――それはもうキツかった。私には何もできなかったから。今回送り込まれた子は性格が捻じ曲がっているやつだったが、時々、本当にこの世界を平和にしようとする、破滅に立ち向かう子達もいたんだ。

今はこんな姿でわからないかもしれないが、前の世界ではとっくに成人していてね、彼女達がどれだけ平和のために尽くしたとしても、結局は『強制力』とでもいうべきか、全部壊されて、自分より年下の女の子達が死んでいくんだ。

私のこの世界(シナリオ)での役割は、ゲームの最初、帝国の人々に自分で選んでもいない愛し子の降臨を予言するだけ…それ以降は黙って見ることしか許されなかった…この世界が129回目…もう自分も死んでしまいたい、そう思った時に、お前が、私に触れた。

今まで私に声をかけ、手を伸ばした者はいたが、私に触れられた者はいなかった。お前の、帝国への愛が私とお前とを繋いだのだ。

だからこそ私はお前に賭けを挑んだ。この世界が破滅しない結末(本当のハッピーエンド)を見てみたかったのでな。

――おや。流石に天下の才女もこの話についてくるのは難しかったか。」


「えぇ…。流石に。」


 頭に神の話した一言一句聞き逃さず覚えた上で、その情報を整理すればするほど、どれだけ広大な話になっていくのか想像もつかなくなってしまっていた。


「ふむ、まぁ頑張ってみてほしい。私はお前に未来を見せたことで9割方生命力を消耗してしまってな、少し休まなければならない。それこそ15年ほど。」


 神は私の方を見てこれまた違う種類の少しいたずらっ気のある微笑を浮かべた。


 …!神は自分の生命力を犠牲にしてまで、この世界に希望を見出してくれている。その想いに応えるべく、私はこの世界(乙女げぇむ)を必ず繁栄に導くと誓った。


「えぇ!私は死なないわ!起きた時、楽しみにしていて!素晴らしい世界を生み出してみせるわ!神!」


「…あぁ。楽しみにしておくよ…ニフェル。そして、私の本当の名前を、教えよう。ロード、だ。」


「えぇ。ロード。おやすみなさい。」

 

気がつくと目の前には誰もいなくなっていた。本当はただの夢だったのでは、と思ったのも束の間、その次の朝、帝国中が大騒ぎとなった。

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