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私の婚約者は悪役令息(じゃなかったんですか?!)  作者: 焼きそばこっこ


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第28話 背伸び

――「…なので、申し訳ありません、犯人を取り逃してしまいました。ただ……」


「えぇ、それだけの情報があるだけ十分でしょう。それよりも取り調べまでも令嬢にやっていただき、面目が……」


「いえ、それも公爵家の矜持です。そういえば、侯爵家でアルグランデ製のシャンデリアを…」


 父どニフェル嬢がなんだか難しい話をしている。僕は何をいっているのかちんぷんかんぷんで父の隣にいるというのにまるで蚊帳の外だ。


少し拗ねてしまって、父の隣を離れて近くの書室で本を探す。


僕の自慢の大きな本棚。自然の豊かなトラフィズ家らしい、自然や地理、生物の本が並ぶ中で、一層目立つ本のシリーズがある。


一冊300ページにもなる地政学の本が年齢順にならんでいる。


1〜5歳は赤色、6〜10歳は緑色、11〜15歳は青色…と年齢ごとに表紙の色が変わってくる。


 タイトルは金の箔押しで大きく


 『13歳のための地政学』と書かれている。


 ……僕も一応ここのあたりでは神童ともてはやされていた。

10歳で、13歳の勉強を進めていたから。父上も褒めてくださっていた。


一緒に書室についてきた執事長のノルズが「まだ、貴方様は10歳でいらっしゃいますから。」と笑って励ましてくれたが、王都にはこのような…5歳で私より優秀な女の子がいるなんて、敗北感なんかより、尊敬の気持ちの方が強かった。

 

それに、僕は他の人より進度が早いと言っても家庭教師の言う通りにしただけに過ぎない。


…おそらく彼女は独学で勉強を行なっている。そうでなければ5歳であのレベルまで行けるわけがない。


どんなに頭が良かったととしても、家庭教師は例外の子供をめんどくさがるから……よしとは言わないだろう。




 少し上の段を見上げると僕にはまだ早いと言われた白色の表紙の本がある。僕にはまだ、背が届かない。


 ……僕も彼女の隣に立てるような立派な大人になりたい。


 そう、いつかは今より何倍も大きくなって、父上のように賢くなって、令嬢を助けるんだ。――()()()()


 ……?今度こそって……なんでだったっけ?


 まぁいいや。ノルズが父上がお呼びだと言った。


「今行く!待ってて!」

 



慌てながらも、ウィジーは椅子を持ってきて一冊の白い本を本棚から取り出した。


―― 『16歳のための地政学』 ――

 




 **未来でのバッドエンドルートにて**

「わぁ!見てください!ウィジーさま!このネックレスとっても綺麗じゃないですかぁ?」


気色の悪い笑顔をして、下品に胸を押し当てる女がそう言った。


 ……まぁ、僕も同類か。


「本当だ!最高に綺麗な宝石さ!…でも、君の方がもっと美しいよ。」


 彼女は僕の返答に大変ご満足いただけたようで、頬を赤らめ、私の肩を無遠慮にバシバシと叩きながら


「きゃー!!このこのー!ウィジー様、どーせお世辞でしょー??」などと言ってくる。


 まぁおっしゃるとおりなんだが、そんなことを言ってみろ。

 また機嫌が悪くなるんだ。あぁ、本当に面倒臭い。

 

兄が急に父に気に入られ、僕は後継者の座をまた奪われた。

 どんな汚い技を使ったのかは分からないが、あまりの卑劣さに軽蔑する他ない。


後継者の座を渡した後、1年ほど前から、父の病気がどんどん悪化していった。


父は急死し、見事に兄がトラフィズ家侯爵となった。それから僕がトラフィズ領から追い出されるまで時間はかからなかった。


…それでもなんとかして後継者だった間に密かに経営していた商店で生活費程度は賄えたものの、まともな貴族とは思えない生活をしてきた。


そこで働いているときにココロに出会った。全くもって恋愛感情はなかったものの、愛し子は神の御使でどんな願いでも叶えてくれると、噂を耳にしたことがあったのでココロに取り入ることにした。


しかし、蓋を開けてみればこの女は毎日毎日贅沢三昧。


(一応)この国の皇太子であるアシュルス殿下を財布がわりなんぞにしてしまい、男を何人も侍らせてまるで女王様気分である。


この女、愛し子という称号だけで、全くもって頭の中は空っぽではないか、と悟ってしまった僕はココロに対して兄に対する憎悪と同じものしか抱けなくなってしまっていた。


毎日好きでもない女に呼び出されてはおもちゃにされる日々、もう全てが面倒になり、神の愛し子がどうした!殺してやろう。と決意し、暗殺計画さえ立てていた。

 

毎日のようにあの女のいる部屋のドアを開けて、あの女が死んでいることを願ったほどだ。




 けれども、今日の舞踏会で図らずも僕の願いはかなったのだ。

 

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