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第2話 悪夢であってほしい

――目を開くとそこは王宮の前であった。周りを見ると着飾った貴婦人とそのパートナー達が王宮へ向かっている。けれど……、なんだろうこの違和感…。

彼らの顔をよく見てみると……

「…ふむ。ここは私たちの未来の世界、正確に言えば、15年後の世界ってところかしら。」

「…なぜわかった?」神が微笑を浮かべながら問いかけた。


「そうね…まずはあそこの紫色のドレスを着ている彼女。首のほくろの位置、特徴的な唇の形からして、テリスタ侯爵家の次女、ガブリエル嬢でしょう?現実で彼女はまだ10歳の少女…それがあんなにナイスバディになるなんて…!彼女の母君の胸囲と、現在と未来の彼女の身長を照合して算出するに、今は25、6歳といったところかしら。ちなみに隣にいるのが ギルバート・タリオット伯爵…こちらは…30歳くらいかしらね。」

「なるほど。お前の観察眼と推理力が、特出していることはよく分かった…。それからお前の順応力にもな。しかしなぜあの男が30代なんだ?あれはどう見ても50くらいの髪の量だ…」

「……タリオット家は、代々薄毛なの…」

「なるほど…ちなみにあそこの2人から生まれる子供はおそらく男児だぞ。」


「「…………」」


 流石に居心地の悪い空気になってしまったので、私は王宮の中に向かった。


「周りの人の視線の無さからして、私達はあちら側からは見えていないということよね?わざわざこんなところに連れてきたんだもの。ここで、アシュルス殿下に何かが起きるのでしょう?」


「…ははっ!その通り!お前のその察しの良さも一周回って心地がいい!ここでお前はアシュルス・ベルタリーに婚約破棄されるんだ。…ほら、主役のお出ましだ。」


 王宮の中心部にある螺旋階段から4人の男に囲まれた1人の女性が降りてきた。栗色の髪と瞳は特別綺麗というわけではないが、愛らしい雰囲気を纏った美少女。彼女の周りにはもう一つの公爵家の御長男に、伯爵家の…こちらも長男、隣国の皇太子と…そして私の婚約者、アシュルス殿下。彼らに手を引かれ、ピンク色のリボンのついた愛らしい女性が微笑みながら、階段を降りていく。少し恥づかしがりつつも、いつまでも癒しの笑顔を絶やさない彼女を見て悟った。


「…彼女が神の愛し子、ということでしょうか?」

「…あぁ。」

神は目を細めながらでそう答えた。…神様にも視力のいい悪いがあるようね…。


「見えにくいようでしたら、私が解説いたします。」


「え、あ、いや別に見えにくいというわけでは……」


「可愛らしいツインテールをされたご令嬢が4名の男性に手を引かれ螺旋階段を降りて行っています。左からベンサム公爵家の後継リチャード様、グルチョフ伯爵家ウィジー様、隣国トレスティアナの第二王子ハスマフ王子、そして1番左にいらっしゃる方が…アシュルス殿下です。愛し子様、大変美しいですよ。…私には、あんな可愛いピンクの服、着れないわ…。」


「………」


アシュルス様はあのようなピンクの似合う可愛らしい女性が好きなのかしら…。


少し陰鬱な気持ちになり、話題を逸らす。


 「あ、ちなみにあの階段の上にあるシャンデリア、ダイアモンドでできてるんです。我領土の特産品です。ほら、もう少し近くで見てみてください。透明感が売りの宝石でして…あれ?」


私の前を朱色のドレスを着た女性が通り過ぎた。

 (私だわ…未来の。)背格好が今の私より大きく成長している、しかし胸が……胸が…!はたと、私の顔を見てみると――ゾッとした。

痩せこけていた。顔はひどく青白く見え、今にも倒れそうだった。


「ニフェル・アルグランデ!ここへ!」

玉座の前に4人が我が物顔で立ち、そのそばにアシュルス殿下もいた。今から何が起こるのかなんて、推理するまでもない。

「…見たくないです。」そういって王宮を去ろうとする私を神が引き留めた。

「少しだけでも見てみるんだ。お前の、破滅を。」――

 ――「ニフェル・アルグランデ!お前はこの偉大なる神の愛し子、ココロに度重なるいじめを繰り返した!これは事実か!?」

「っいいえ!それは全くの嘘でございます!リチャード様…」

「はぁ…しらばっくれても無駄だよ、全部ココロが証言してくれているんだ。君は、彼女に毒の入った手紙を送ったり、肌に良い香水と偽って皮膚が爛れる薬品をプレゼントしたそうじゃないか!」

「嘘です!私はそのようなことを一切しておりません!!そ、そうだ…その手紙を送った日、プレゼントを送った日を教えてください!毎日の行動記録が記されているはず…」

「あー!うるせぇなぁ!神の愛し子がそういっているんだよ!厚化粧女。ならばそれが真実!そうだろ?ココロ。」

 先程まで男性陣に隠れていたココロとかいう神の愛し子が前に出てきた。

「ひぐっ…、えぇ…全て真実よ…でも、わ、私がいけないの…私なんかがニフェル様のドレスを素敵だっていっちゃいけなかったのぉ…うぅっ…」ココロという女性がリチャードの胸に体を倒した。

「まぁ、ドレスを褒められていじめをするなんて…次期皇后の名前が聞いて呆れますね!」

「ほんとうに!あぁ、可哀想なココロ様、我が帝国を思ってこの地に舞い降りてきてくださったというのに…」

どうやら会場はココロに味方をするものが多いようであった。

「…それにしても、あの『能無し豚』はなんであんなところにいらっしゃるの?」「そうよねぇ、他の殿方は皆麗しい方々だっていうのに…1人だけ生ゴミが混ざっているのかと思いました!」

「いやですわ夫人!あ・ん・な・の・でも一応この国の王子様で有らせられるのよ?」

殿下のいる玉座までは届かない、小さな、囁くような声で殿下への悪態が次々と飛び交った。

「っそ!それは違います!」

 耐えきれなかったのだろう、私はひどく声を張り上げてそう言った。


 会場中しん、と静寂に包まれた。


 すると、ココロが

「っひくっ!すいません!私なんかが喋るなんておごがましかったですよねっ!う、うぅ…すいませぇん…」

 そして、アシュルス殿下が言った。


「き、ききき君は!何度彼女を、、なか、せたら気がすむん、だ!ぼ、僕との婚約は破棄させてもらう!!え、ええええ、えぇ衛兵ぃ!つ、連れていけ!」

「で、殿下…いやっ!離して!私は無実です!みなさん!話を聞いて!お願い!お願いします!」


 そう言いながら私は衛兵によって牢獄へと連れて行かれた。


「うふふふ、昔は『天の御使』とも呼ばれていたあの完璧令嬢が今ではこんな大悪人になるなんて、誰が想像していたんでしょうね?」


「えぇ!ある意味『能無し豚』によくお似合いだったんじゃぁないの?ふふふっ。」

 

とてつもなく気分が悪くなった。いつかこんな未来が来るなんて、絶対に嫌だ。けれど未来というものを変えることが本当にできるのか…結局何をしてもおんなじ結果になってしまうのでは…


「…未来は変わる。変えられる。これはあくまで今のままだとこうなるという予測に過ぎない。お前のこれからが、この結末を変えるかもしれない。さぁ、もう少しこの演劇を見ていこう。これからまた、面白いことが起こるから。」

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