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私の婚約者は悪役令息(じゃなかったんですか?!)  作者: 焼きそばこっこ


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第21話 ストーカー(本人無自覚)

今日は、ニファがトラフィズ領へ行くらしい。なんでもトラフィズ領に妙な点があるとか。

 ――さすが私のニファだ!こんなにも面倒になりそうな案件を処理してしまおうとするとは…!

私も今トラフィズ家で起きていることについて、


昨年の私の誕生日パーティーの時に侯爵の言動があまりにも違和感があったので、たっぷりと酔わせた後に色々と聞き出して何が起きているのか完全に把握していたものの、何もしなかった…



 なぜって?



 そんなこと解決してる暇があったらニファを眺めていたいから!



 正直、ニファに関わりのないものは見るのでさえも時間の無駄だから、みんな地下で生活していてほしい。(いや…地下にいるのも鬱陶しいな。存在が。)


 それに最近は、ニファをベタ惚れにさせるために剣術ダイエットをしている。


あの時の神が言っていたことによると、私はとても都合のいい体をしているらしく、一度本気になってしまえば、スリムかつ見苦しくない程度の筋肉をつけるのは4ヶ月あれば十分だそうだ。


自分でもこの醜い体型を捨てようと思えばいつでも捨てられると思っていたが、何もメリットがなかったためにいつも剣の鍛錬では本気の10000分の1の力で挑んでいた。


それが急に剣術に目覚めたとか言って私がメキメキと上達していくものだから、指南役はそれはもう喜んでいた。まぁ、おそらく本気を出してしまうと指南役は木剣一発で死んでしまうだろうし…あまり急激に成長するのもおかしいだろうから、適度に力を調節して、あたかも『類稀な剣の才能』があっただけのように見せかけた。



 勉強面もそうだ。今まで出来損ないを演じるため、ちょっと叱責を受けただけで大袈裟に泣いたり、逆上したり。居眠りやサボりをした回数も星の数だ。しかし、今まで寝ていたとしても、聞いていないように見せかけていたとしても、私の頭の中には大体全て入っているし…。

 

これなら後2ヶ月ほどダイエットをすればニファも惚れ惚れするかっこいい王子、神が言っていた『スパダリ』なるものになれるであろう。


 だから、今回トラフィズ領に1人で行くと聞いた時も(※彼には使用人達が見えていません)私が一緒に同行したかったが、まだ今までのたった半分ほどしか絞れていなく、いまだに醜い体であることは変わり無かったので、ここは大人しく影でニファを応援することにしたのだ。


 ――ニファをじっくり見れる最高の時間だと思っていたが、ニファには多くの虫がついてしまっていた。

 到着早々ニファに胃もたれするほど気色悪い甘い視線を送る執事がニファの手を自分の手に添えさせようとしていた。



いてもたってもいられず、近くにいた鷲をぱぱっと調教してあの青髪変態執事の上ピンポイントにフンを落とすよう指示をした。


 青髪を川送りにして一安心したのも束の間、次は青髪執事の座を狙っていた使用人どもがニファに手を差し出そうとそわそわしていたが、しっかり全員に圧をかけておいた。

そうしたら、その後ニファが1人で馬車を降りようとして…!可愛いんだけど、もし私の可愛いニファが転けてでもしてしまえば、その超絶胸キュンシーンを見てしまったここにいる全員を私は処分しなければならない。



 『!…っに、ニファ…!』



隠れていることも忘れて一瞬飛び出そうとしたが、側近のコーシュに引き止められる。


『いけません、殿下!あなたが今はニフェル公爵令嬢に直接会わないと決意したのではありませんか…!それにほら…!あそこに侯爵家次男ウィジー様がいらっしゃいます!彼が支えてくれるでしょう!』


コーシュのいる後ろを振り返って、うっせぇな…とあからさまに顔に出して相変わらずお堅いジジイだ、と思いつつも確かに、私の体型変化の最終形態を一発ドカンと披露する方がニファの印象が強くなりそうだったのでここは引き下がった。


そうだ、私はニファの幸せを第一に考えている。たとえ私が支えられなくとも、どこぞの馬の骨が上手くいい感じに極力触らず必要最低限の接触でニファを助けてくれることだろう…


 そう思い直しながら前を向き馬車の方に目をやると――



 ……ん?




『……あ…』


 コーシュがやっちまったという顔をしている。

 あぁ。お前の予想通りだ。

私は今ものすごく怒っている。

どれくらいかって言われると難しいけれども、思わずこの領を反逆者として捕まえて、一族それに関連する親族もろとも海に投げ込んでもがく姿を高みの見物しても足りないくらい?


 だってまさかあのちんちくりんが私のニファの腰に手を回して肩まで触っているとは思わなかった。


 しかもニファ?なぜそこで赤くなってしまう?頬を赤らめるニファも可愛いけれども、それは私の腕の中であってほしい。勤勉で淑女なニファのことだ。おそらく公衆の面前で転びそうになったという事実に耐えられなかったのだろう。


 だが…だがっっ…!


 『おい、コーシュその腕をはなせ。私は至って冷静だ…!』


 『なるほど、左様でございましたか、殿下。それでは鞘から手を離してくださいませ?』


 気付かぬうちに奴に襲い掛かろうとしていた。


 一旦深呼吸をする。肩と腕の付け根の少し下をつねる。ニファが切り替えようとする時によくするやつだ。あれは、ひどい時だと一週間、つねった部分の赤みが取れない時がある。正直彼女自身であっても、ニファの体に傷をつけさせたくはなかったのだが、どれだけ優秀な家庭教師、メイドをつけてもその癖が改善されることはなかった。

 『殿下、公爵令嬢が邸宅内へ入られました。追跡しますか?』

 私はつけていた手袋を付け直しながら若干不機嫌に言った。


 『当たり前だ。』

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