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私の婚約者は悪役令息(じゃなかったんですか?!)  作者: 焼きそばこっこ


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第9話 シャンデリア事件(4)

――「なぜ、フェール様を信じない!お前のような愚か者がこの高尚なるトラフィズ家にいるだけで悪しき曇りが、我らの繁栄を妨げるのだ!何が怖い?!何に怯える?!なぜ神と呼ばぬ?!…返事をしないのか!!?」

 

トラフィズ侯爵の怒鳴り声が聞こえる。しかし、1年ほど前に会った時と比べて、声に勢いがないように思えた。

 

怒鳴ってはいるけれど、掠れた、弱々しい声。


 部屋の近くで気づかれないように、こっそりと耳を立てながら、会話を聞いた。

「お嬢様…聞き耳は少々はしたないのでは…」

「黙って、レイヴン。」

確かに淑女としてあるまじき姿かもしれないけれど、今の状況がわからない以上、情報を集めるほかない…


「…!♡はい!申し訳ありません!」


 ――お、お嬢様…♡そんな冷たいお顔もとてもお美しい…♡俺を踏み潰してほし…


「…父上、貴方は騙されているのです。あのおかしな奴らに。どうか落ち着いて、僕の話を聞いては下さいませんでしょうか。」


 …先程の伯爵の声とは違う、若い男の声がした。お嬢様が驚いたような顔をしていらっしゃる。


「…!この声は、ウィジー様の声…?トラフィズ侯爵に詰められているのは…ウィジー様なの…?けれど、彼は…」

「な、なんだ?!その口の聞き方は?!だから私はお前への爵位継承を取りやめたんだ!以前はあんなに聞き分けのいい子だったというのに!何がお前をそうしたと言うのだ!」


……チッ。

 お嬢様のお美しいお声を遮って豚が喚いていた。


「なんですって?!ウィジー様の爵位継承が取り止められた!?」


 気づかれないよう小さなお声でお嬢様が驚かれた。正直、俺はお嬢様から指示された命令に関わりのある政治の話以外には、一ミリたりとも興味がないのだが、そんな俺でも少し耳を疑った。


 ――確かに、あの坊主はトラフィズ家の次男であるから、通常、爵位を継ぐのは長男のはず…だが、トラフィズ家の長男・キースとか言う奴はエルダリーの恥と噂されるほどの問題児、もといクズで、侯爵家長男・次期侯爵という肩書きであちこちで事件を起こしてきた。

 勝手に下町へ降りて、下町一帯の、古民家を燃やして、死者3人を出す大騒動を起こしたこともあったな。

だけれども被害者はその日を生きるのにも苦労する労働者達。侯爵家から一生遊んで暮らせるほどの賠償金を受け取った後は、ただただ、口を噤んでいた。

 あぁ、それから、川遊びをしていた子供達に襲い掛かって、ある子供を水の中で10分息を止められたら、お菓子を買ってやると言い、子供が息が続かず、ギブアップしようと頭を上げようとすると、あの人間やり直し案件なヤツは、子供の頭を押さえつけながら、


『まだ10分経ってねぇ、ほら、飴買ってやるから!!ほら!がんばれ!がんばれ!』


 ――結局その子供は溺死した。その事件でも侯爵家は被害者一族に金をこれでもかと言うほど積み、事態をうやむやにしたんだっけ。

 

でもって侯爵にとって、いくら愛しい我が子で、長男であったとしても、流石にこの悪事の働きようと、その反省の皆無さに、ついに侯爵の堪忍袋の尾が切れ、彼は、絶縁まではいかずも、後継者の席を下された…

そして、その座に新たに座ったのがチビの坊主。あいつは、あのクズ野郎を反面教師にしたお陰か、そこそこ優秀な人物であった。

 物事を冷静に分析し、その場の最適解を常に見つけ出せられる、社交界でもそう評価されて。

 傍若無人な兄とは正反対。おまけに、優秀で勤勉であるから、奴は侯爵にあの生きる社会迷惑の分までそれはもうデロンデロンに可愛がられてきたというのに…

…なぜ侯爵は今になって後継者の交代を….?


 あまりにも、クサすぎる…


「…申し訳ありません…っですが父上!僕は本当に父上が心配で…!」


「う、うぅ…え、ええぃ!黙れ!黙れ!黙れ!そう言っておきながら、結局は私の侯爵の座を早く奪い取りたくてしょうがないのだろう?!だが、残念だ!お前に与える爵位など、微塵もない!お前の爵位は、キースのものだ!」



「あぁ。ありがとう…父さん。」



うげぇ、あの世紀末のモラルブレイカーもいるのか…。

あの穢らわしい空間の中に俺のお嬢様をお入れしたくない…!


どうか、どうか…!お嬢様の寝巻き姿を見たこのクソ…神よ!なんかいい感じに平和的解決させちゃってくれ…!


 

(↓これ…もう手遅れっしょ。 by神)




「父上!目を覚ましてくださ…」

「えぇい!煩わしい!私の言うことが聞けないと言うのか…!」

 伯爵が一段と大きな怒鳴り声を上げた後、

 ガッシャーン!

 何かが壊れる音がした。

「っ!流石にこれは止めに入らないと…!レイヴン!行くわよ!」

「ッヒョ、りょ、了解しました…」

 あぁ、こんな汚い空間にお嬢様が入られてしまうぅぅ!俺1人だけで突入したいけど、絶対却下されるし…

 もうこんな奴らいいじゃないですか(泣)!俺と一緒におやつ食べてぐっすり寝ましょうよ(泣)!5歳児はもう寝る時間ですよ…(泣)!

 もうコンマ1秒で制圧するしかない(泣)


 ってか、神まじ色んな意味で許さねぇ…


 (いや、だからこれは流石に無理っしょ。 by神)


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