第5話
上へ向かうために、この透明な液体を持っていきたかったのですが、運ぶ手段がないので諦めました。
お腹はペコペコですが、液体を飲んだおかげで少し元気が湧いてきました。これなら、塔を登ることができます。
ぐるぐるの階段、丸い部屋。ぐるぐるの階段、丸い部屋。
これをずっと繰り返す。
ぐるぐるの階段……次もまた丸い部屋だろうな、と思っていましたが、少しだけ様子が違いました。
いえ、部屋は相変らず丸いのですが、一部分に壁がなくてお外を見ることができるのです。
私は壁のない部分へ近づきます。
壁のない部分には固くてひんやりするナニカがありました。見た感じだと、部屋を通せんぼしていた突起物やナイフと同じような材料だと思います。
これのおかげで、塔の外へ飛び出すことはありません。
ナニカは私の背丈よりも高かったのですが、隙間だらけなのでお外を見ることができます。
私は隙間に顔を押しつけて、お外を見ました。
下はどんより灰色の雲。いつも見上げていた光景が下にあります。
そして、上は――――
「あおいろ? お父さんの目の色? ううん、目の色より薄い」
お父さんの青い目よりも薄い青色が、上には広がっていました。
私の知る空は灰色の雲がある空。ということは、青色の雲に覆われた空……なんでしょうか?
「でも、雲という感じは……うっ、気持ち悪い」
見たこともない奇妙な青色の空を見続けたせいで、ちょっと気持ち悪くなりました。
「灰色のお空の上には青い色のお空があるんだ。変なの」
不気味な空を見続けていても仕方ありません。
私は塔を登らないといけないのですから。
気を取り直して、丸い部屋の隅にある階段へ向かおうとしました。
その時、ふと、壁のない外側のことが気になりました。
「もし、あそこから飛び出したら、簡単に地面に戻れるのかな? そうしたら、お肉と飲み物を得られる?」
少しだけ悩みましたが、もう一度、この場所に戻る頃には、お肉を食べつくしているので意味がないと思い、地面に戻ることは諦めました。