1.魔力無し
館の廊下を歩いていると、聞こえてきたのは囁き声だった。
「先日の目覚めの儀式でね、あの子……魔力欠如って言われたらしいわよ。」
「ま、魔力欠如!? そんなことが本当にあるの!?」
「……ええ、神父様は千に一つの奇病だって言ってたけど、本当にそんなことあるのかしらね」
「呪いにでもかけられてるんじゃないかしら....かわいそうに....」
「かもしれないわね」
嘲笑交じりの声が、廊下に響く。
僕がキッと睨むと、メイドたちは気まずそうに下を向き、何も言わなくなった。
「やっと、この家から抜け出せる。」
心の中で、そう呟く。
正直、この家にいると居心地が悪くて仕方がなかった。
だから、抜け出すきっかけができてよかったと、安堵の気持ちが込み上げてきた。
「これで、よかったんだ。」
その瞬間、目の前に人影が現れた。
「よぉ」
にやにやと笑っている。
「……お久しぶりです、ルビィ姉様。」
「着やすく呼ぶんじゃねぇよ、魔力なしの欠陥野郎が。」
「……………………」
「……ぷっ、魔力欠如ってw
男が女よりも魔力少ないってのは当たり前だけど、
魔力無しは流石に……wwwww、あーはっはっはっはっは!!!!wwwww
やっべwwwwあんたもうこの先生きてけないじゃんwwwwwwマジwwウケるwww」
「……もういいですか、姉上。私は母上に報告をしていきますので。」
「あーっはっはっはっはっは!!!!!wwwwwww、やっばwww笑い止まんないwwww」
僕は無視して通り過ぎようとする。
ーーー「早く出てけよ欠陥野郎が」
上から二番目の姉は、いつもこうやって僕を本気で馬鹿にしてくる。
けど、もう会わなくて済む。
「……いわれなくともそうします。」
唇をかみしめて、母上の部屋へ向かう。
言うことはもう決まっていた。