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前日談
この世界は、実に面白い。
勝者と敗者――弱肉強食。
負けた者は命を失い、勝者だけが生き残る。
生物同士の純粋な力比べである単純な理。
だが、人間社会ではどうだろうか。
敗北しても命が残るなら、話は変わる。
勝者が永遠に勝者であり続けるわけではないし、
敗者が永遠に敗者でいるとも限らない。
牙を研ぎ、力を蓄え、ある日、勝者の座に立てるかもしれないのだ。
結局のところ、目まぐるしく変化する人間社会において、「真の敗者」とは、敗北そのものを意味しない。
立ち上がる意志を失った者――
敗北を認め、挑むことをやめてしまった者こそ、
人間社会における「敗者」なのではないだろうか。