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告白  作者: まつだつま
6/6

事情聴取

「西岡陽翔さんですね」

「はい」

「担任の先生から山田芽依さんが、遺体で発見されたことは聞いてるよね」

「自習の後、教室で聞きました」

「聞いて、どう思った?」

「どうって、ビックリしました」

「それだけ?」

「はい」

「二ヶ月前まで野球部キャプテンだったよね」

「あ、はい」

「今日は生徒さんには帰ってもらったけど、山田芽依さんと仲が良かった生徒と野球部の部員には残ってもらったけど、なぜだかわかるかな?」

「山田さんと仲が良かった生徒はわかりますけど、野球部が残された理由はわかりません」

「君と山田さんの関係を教えてくれるかな」

「関係もなにも、ほとんど話したことないです」

「君は昨日、この学校の裏にある愛山に行ってるよね。何しに行ったの」

 西岡の頬がひきつった。

「いっ、いってません」

 西岡が慌てて首を振る。その態度が愛山に行ったことを認めている。

「嘘はつかない方がいいよ。君によく似た生徒が昨日の夕方に愛山の登山口を登って行く姿を、登山口近くの駐車場の防犯カメラがとらえてるから」

 西岡の顔から血の気が引いた。やはり防犯カメラに映っているのはこの生徒だ。

「すいません」

 西岡は認めたようだ。

「昨日、愛山に行ったんだね」

「はい」

「なぜ行ったの。山田さんを呼び出してイタズラでもしようと思ったの。けど彼女に断られてカッとなっちゃったかな」

「違います。俺が行った時には山田さんはいませんでした。それに呼び出したのは山田さんの方です。俺は何も知りません」

「そう、わかった。ありがとう。じゃあ、今日はこれでいいわ。また話を聞かせてもらうかもしれないから、その時はよろしく」


「清水葵さんですね」

「はい」

「担任の先生から山田芽依さんが、遺体で発見されたことは聞いてるよね」

「はい」

「どう思った?」

「ただただショックです」

 清水は俯いていた。

「仲良しだったんだね。悲しいね」

「はい」

「なぜこんなことになったのか知りたいよね」

「はい」

「じゃあ、捜査に協力してくれるね」

「もちろんです」

「昨日の夕方に山田さんは愛山に行ってるんだけど知ってるかな」

「はい、隣のクラスの西岡くんを愛山に呼び出して会う約束をしてました」

「山田さんと西岡くんはどういった関係かわかるかな」

「これまではほとんど話したことないはずです」

「ほとんど話したことないのに山田さんと西岡くんは会う約束をしたの」

「はい、山田さんは西岡くんに告白をするつもりでした。それで山田さんの代わりに西岡くんを愛山に呼び出したのはわたしです」

「あなたは愛山には行かなかったのかな」

「はい、登山口の前で山田さんと別れました。告白するのにあたしがいたら邪魔になりますから」

「でもね、その後、あなたが登山口から愛山を登っていく姿を防犯カメラはとらえてるんだけどね。それについて説明してくれるかな」

「えっ」

 清水の顔色がすっと引いた。

「昨日、山田さんから遅れて愛山に行ってるよね。なぜ行ったのかを説明してほしいんだ」

「実は、あたし西岡くんを山田さんにとられたくなくて、山田さんが告白するのを邪魔しようとしました。でも、あたしが行った時にはもう広場には誰もいませんでした。あの時、まさか山田さんが崖から落ちてたなんて知らなかったから、そのまま帰りました」

「よくわかりました。あなたも西岡くんのことが好きで、山田さんにとられたくなかったわけですね」

「でも、山田さんを殺したりしてません。あたしは野球部じゃないからバットも持っていませんし」


「高梨倫子さんですね」

「担任の先生から山田芽依さんが、遺体で発見されたことは聞いてるよね」

「はい」

「どう思った?」

「いや、山田さんのことはあまり知らないので、可哀想だとは思いますが、あまりピンときてません」

「今日は生徒はみんな帰って自宅待機してもらっているのに、何故あなたは残されたのかわかるかな」

「野球部のマネージャーだったからですか」

「なるほど、何故野球部だと残されると思ったの」

「山田さんがバットで殴られて殺されたからですよね。だから野球部が疑われてるんじゃないですか」

「なるほど、そういうことですか。それと昨日の夕方あなたは愛山へ行ってるよね。防犯カメラにあなたの姿が映ってたから間違いないと思うんだけど、何しに行ったのかな」

 高梨の顔から血の気が引いていく。

「いえ、特に何もないですが」

「何もないのに、愛山に行くわけないんじゃない。何か目的があったんでしょ」

「目的というより、気になっただけです」

「何が気になったの」

「あたしは西岡くんと付き合ってるんですが、山田さんが西岡くんを愛山に呼び出してたので、西岡くんが来たら連れて帰ろうと思ったんです。西岡くんにちょっかい出されたくないですから」

「西岡くんは来たの」

「いえ、来ませんでした」

「それで、直接、自分の彼氏にちょっかいだしてきた山田さんにクレームをつけたわけか」

「それはしてません。あたしが行った時は山田さんはいませんでした。あたしが帰った後、誰かがバットで殴り殺したんだと思います」


「教頭先生、犯人の目星はつきました。今日はこれで結構です。切ない事件になりますが、来週にも犯人は逮捕できます。ご協力ありがとうございました」



               完

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