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おまえと共に
彼の中に異変が訪れたのはある日突然だった。
(もしもし、聞こえるかな)
「…………?」
(初めまして)
「?、? ??」
(あれ、もしかしてその反応はわたしのことが見えてない?)
突然見知らぬ男の声が聞こえてきて辺りをキョロキョロするも声の主らしき姿は見当たらない。
混乱する彼に尚も声が続ける。
(「外」じゃなくてここ、ここだよ。おまえの中)
「…………っ!」
聞こえてくる声に集中して耳を澄ましていると、ぼんやりとしていた頭の中に目の焦点が合わさるように段々はっきりと見覚えの無い男の姿が勝手に思い浮かんでくる。
銀髪に切れ長の目、尖った人外の耳、見たことの無い衣装……。
(良かった。今度はちゃんと見えてるみたいだね。──改めて初めまして、わたしはシン。今日からおまえの心の中に棲まわせてもらうよ。宜しくハジメ)
「は…………?」
頭の中で妖しく微笑んだ何処かミステリアスで中性的な男に、何故か名乗ってもいない名前を言い当てられた宙庭 初芽は戸惑いと驚きの表情を隠せなかったのだった──。