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心の底から全てに「ありがとう」と言えた夜

作者: 毛利秋王




就寝時、僕はいつも全ての明かりを消して眠るようにしている。





以前は保安球だけを点けて眠りに就いていたのだが、



ある日、



『全部消してみよう』



と、思いきって全ての明かりを消してみた。













眠る前には布団の上であぐらをかいて瞑想する習慣がついていたため、




目を閉じると、完全な闇に包まれてしまう。















動物的本能が働いているんだろう。




ひとつの灯りも無い暗闇に




得体のしれない恐怖を抱いたものだ。












だけど、




何日か暗闇の中で瞑想するようになって、




そのまま眠りに就く習慣がついたら




闇に恐怖を感じなくなってきたのは確かで、




より“宇宙”という存在を身近に感じられるようになった気がしている。















何も無い




“無の世界”が




閉じた目の前に広がっていて、




宇宙に身を委ねている。





そんな感じだ。















つい先日、いつものように部屋の明かりを全て消し、瞑想をして気持ちをリセットさせてから、僕は眠りに就いた。















布団にくるまり、仰向けになって、天井を見上げる。






真っ暗で、ほとんど何も見えはしない。







心も身体も力が抜け去り、完全にリラックスしている。















そして、






いつもお世話になっている人たちのことが思い浮かび




「ありがとう」




という言葉が自然と口をついて出る。














お世話になった人たちの輪が広がっていき、




僕の記憶の隅々まで蘇らせていく。













「ありがとう」













「ありがとう」













そのうち、どうしようもなく憎かった人たちの顔や姿が現れだす。












その中には虐待されたりと、どうしても赦せなかった人たちもいて、









“あの人たちがいてくれたから、俺は、殴られた身体の痛みがわかるようになったし、罵声を浴びせられた心の傷みがわかるようになったんだ”








そんな思いが、自然と浮かんでくる。















どうしようもなく憎くて、赦せなかったはずの人たちにも






「…ありがとう」





「ありがとう」





「ありがとう」













自分より弱い者を暴力で支配したり、集団でたったひとりの人間をいじめたり、言葉の暴力で相手を嘲笑したり、そんなことは絶対にあってはならない。













だけど、




今になって思うと、




あのときの体験があったから、




人に優しくなれたんだ。













絶対にあってはならない。




だけど、




それでも僕は、




あのときの僕は、




全てに対し、




心の底から




「ありがとう」




という言葉が自然とでていた。














なにもない闇を見上げ、




流れ落ちる涙と共に、




感謝の言葉を何度も口にして、





僕の魂は、浄化されていった。















(※この記事はアメブロ、Ameba Owned、小説家になろう他にも掲載します)

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