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自殺したのに異世界来たら不老不死になっていた。  作者: 三毛犬
第1章:この世界へさよならを言うために
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1話:エンカウント

 目を覚ますと、頭上には木々が生い茂っていた。

 背中に広がる冷たい土の感触で、自分が地面に横たわっていることに気がつく。



 これさっきもやらなかった?


 どうしてまた倒れているのだろう。

 起き上がって辺りを見渡してみたが、さっきと変わったことは何もなさそうだ。

 何故かここ数分の記憶が飛んでいる気がして頭をひねってみるも、トリップしたと考えた後は思い出せない。

 ひょっとしてトリップの衝撃が強すぎて気絶してしまったんだろうか。何か大きな生き物を見た気がするけれど、気のせいか。


 何にせよ、私がここにいるのはトリップしたと仮定することにした。生まれ変わりだと考えるよりも、まだその方が心のダメージが少ない。

 トリップならまた死ねば、今度こそ本当に死ねるかもしれない。死ぬ度に同じことが起こる可能性もあるけれど、とりあえず死んでみないと何も分からない。


 そうとなれば、早速実践に移すのみである。

 周りに自殺の道具になりそうなものがないか見渡してみる。しかし森の中ということもあって、草と木しかないようだった。ロープの代わりに服を使って首を吊ろうかと考えたが、肝心の木が大きすぎて、私の身長では枝まで手が届かなかった。

 舌を噛めばいい話ではあったが、私は案外痛みには弱い。校舎の屋上から飛び降りることは出来ても、自分で舌を噛み切ることは出来ない。要するにただのヘタレであった。


 仕方ない、ここで死ぬことは諦めよう。

 どこかに崖とか、死にやすそうな場所がないか探しに行くことにした。




 探して歩くことおおよそ1時間、一向に森を抜けられる気配がない。

 運動不足気味の私の足は、早くも悲鳴を上げていた。

 こんなに歩いたのなんて、修学旅行以来だった。持久走や体育祭はいつもサボっていたし、ましてや森の中を歩いたことがない。

 足が痛くて、私はとうとう座り込んでしまった。

 もうこのままここにいたら、そのうち餓死で死ねるんじゃないだろうか。でも餓死って辛そうだなあ。


 木にもたれながら、ぼんやり何処かで鳴いている鳥の声を聞いていると、妙な音がすることに気が付いた。

 一体何の音だろうと耳を澄ます。ガサガサと、草や土を踏みしめているようだ。

 何かの足音じゃないか……?

 それは徐々に大きくなっていく。つまり、こっち近づいて来ている。


 人……?動物?わからない。もし肉を食べる系の動物だったらどうしよう……。確実に死ねるだろうけど、即死出来るか怪しい。もしかしたら自分の身体が食べられるのを見ながら死んでいくことになるかもしれない……。


 無理だ。逃げよう。


 私は立ち上がって、足音とは反対方向に走り出した。すると、ゆっくりだった足音は急に早くなった。追いかけてきている。


 これ絶対食べられるやつ!!


 全速力で走っても、距離が離れるどころか、どんどん近づいてきている。

 体育をサボり続けたツケがこんなところで回ってくるとは……。

 いやでも食べられるのは無理!痛いのも無理!


「誰か……!助けて!!」


 叫んではみたものの、ここは森の中である。

 他に人がいるわけが……と思ったが、突然目の前に人影が現れた。


 天が私に見方した!!


「あの!たすけ……」


 その人影は、異様に大きかった。

 2メートルはありそうな巨体をゆっくり見上げた先のその顔は、人では無かった。

 鋭い眼光と、口からは牙が除いている。まるで人と獣を混ぜ合わせたような顔をしていた。


 驚愕で固まっている私を見て、その大きな生き物は驚いたような顔をした。

 太い腕は私の制服の襟を片手でつまみ、悠々と私の身体を持ち上げた。


「ひいいいいいっ」


 恐怖のあまり、口から聞いたこともない声が出た。


 奥歯と身体がガタガタ震えている。

 わからない。見たこと無い生き物過ぎて、何をされるのかわからない。

 すぐに食らいついてこない辺り、知性はあるのか。服とか来ちゃってるし。

 でもこんな生き物今まで存在すら知らなかった。やっぱりここは日本じゃない。というか地球ですらないかもしれない。

 私は何処に来てしまったのだろう。


「―――――!―――――――!?」

「えぇぇ、何言ってるか全然わかんない……」


 それはおそらく言葉のようなものを話しているような気がしたが、こんな生き物知らないのにその言葉が分かる訳がない。

 あと持ち上げられているせいで首が苦しい。


「―――――!」

「ぎゃあ!!」


 後ろからもう一つの声がして、身をすくめる。

 その声を発した生き物も、私をつまみ上げている生き物とよく似た姿をしていた。


 後ろから来たということは、さっき追いかけてきていたのはこの人だったのか。

 いや、人かどうかは分からないが。


 どうやら二人は仲間らしく、私を見ながら何かを話し合っている。

 どっちが食べるかとか話されてたらどうしよう……。


 二人は何か決めたように頷いて、つまみ上げていた私を、その肩に担ぎ直した。


 家に持って帰ってから料理するパターンだったか。

 生きたままかじられる事態は避けられたようで、少し安心した。


 抵抗を諦めて、大人しく担がれながら森の中を移動する。しばらくすると、道に出た。依然として森の中であることには変わりないが、明らかに整備された道があった。

 二人はその道をまた歩いて、少し離れたところに停めてあった馬車の荷台に私を下ろした。

 馬車があることにも驚いたが、なによりその馬車を引いている二頭の動物に驚いてしまった。


 馬!ちゃんとした馬がいる!わけわかんない生き物だけじゃなかった!


 しげしげと馬を眺める私の隣に、わけわかんない生き物その1が座った。その2は馬の手綱を握り、馬車を走らせる。

 今日の餌(私)を収穫したから家にでも帰るのかな。せめて殺してから料理してくれるとありがたいのだけど……。



 私を乗せた馬車は森を走り抜け、広い丘に出た。

 そこから見える景色に、私は思わず声をあげた。


「町だ……!」


 丘の麓を流れる川の向こうに町があった。カラフルな屋根が連なるそれは、小さいころに読んだ絵本を思い出させた。

 はしゃぐ私を見て、その1は鼻を鳴らした。

 笑っているのか……?なんで……?

 その理由を閃いて、また身体が震えた。


「あの、元気だからって躍り食いはやめて下さいね……」

「―――――」

「あ、わかんないですごめんなさい」


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