閑話 拾った手帳
「なんだいこりゃあ」
手帳を閉じて俺こと暇な大学生──四谷──は万年床に寝転がった。
見渡す天井。乱雑に下に置かれた本。いつもの阿佐ヶ谷の安アパートだ。
用事があって古道具屋の前を通りがかった際、この手帳を見かけた。安物っぽくない、薄い茶色の本革らしい作りの古い手帳だった。なんの革なのかは知らないが、とにかく安かったしその時は酔っ払っていたので流れで買ってしまった。
コートに入れて1週間ほどしてからやっと買ったことを思い出して今中身を見ている。
なんと最初のページになにか書いてあった。真ん中しかみていなくて未使用だと思ってたぞクソ。
仕方なくどんなものなのか読んでみると、書かれた内容は旅人の日記のような話し。それもなんだか小説調な語り口だ。わざとらしいな。しかも日本語じゃん。
というか、いかにも「異文化に僕は理解ありますよ」という顔をして書きながら微妙に見下してる雰囲気があるぞ。こういうやつが民俗学のフィールドワーク先で現地で変なトラブル起こすんだよ。
そもそもアベナウってガイドがこうなったのは楽観視してたこいつの責任もあんだろ?
なに「お幸せにね」みたいな感じで締めてんだこのバカ。
ロダナウやらチャンガナウやらそんな民俗や国聞いたこともない。Google様にも引っかからない。地名や風習は完全に想像だろう。ようはこれは趣味で書かれた小説の類いだ。
ともあれ、俺のような暇な大学生にはこういうものも貴重な暇つぶしになる。残りはあと5か6ページほど。
まあいいさ。買った値段分楽しめれば。