表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れる森の  作者: 百乃
8/9

神木

里桜の部屋を出て、門に向かう。

門に向かう途中、庭を見る。庭は、草や木が伸び放題で手入れされた様子がない。

門まで続く石畳の隙間からも草が生えていて歩きにくい。

歩きにくそうな里桜を抱きかかえる。

「ありがと。」

里桜は可愛く笑ってお礼を言う。

「どういたしまして。」

門の前に着くと、門は壊れて空きっぱなしになっていた。ボロボロで、今にも崩れそう。

「ここから出られるの?」

門の前に立って里桜に聞く。

「うん。でも、ここもお姉様の術がかかっているから気を付けて。」

里桜が心配そうに言う。

恐る恐る門に向って手を伸ばしてみる。

何か起こりそうな気がして怖い。目を瞑りながら歩いてみる。1歩、2歩、3歩。

そろそろ出たかな?目を開けると、赤や黄色の葉が揺れざわざわと少し肌寒い風が吹いた。どうやら外に出られたようだ。

「これでいいの?」

里桜を地面に下ろしながら聞く。

「うん。ありがとう。」

里桜の目線に合うように、しゃがむ。

「外から見ると、ずいぶんボロボロなんだね。」

出てきた屋敷を見ると、内観とは違い外観は古びた空き家の様に見えた。

「術がかかってるもん。それよりお礼に小梢の願いかなえてあげる。」

嬉しそうに笑いながら言う。

「私の願い?」

何のことだろう?

「そう。衆に会いたいんでしょ?」

衆?

「衆を知っているの?っ!あれは、夢じゃないの?衆はどこにいるの?」

最後に見た衆を思い出す。やっぱり夢じゃないの?あの時、私のせいで衆は瑠夏に撃たれて!血がぽたぽた垂れて。

でも何で自分だけここにいるの?目が覚めた時、衆はどこにもいなかった。何が起こったの?

青ざめる私に向って、里桜が声をかける。

「落ち着いて!」

落ち着いてなんていられない。衆が怪我してるのに、自分だけ安全な場所にいるなんて。

「でも、衆が、血も出てて、もし何かあったら・・・。」

私のせいで怪我したのに。

「小梢!大丈夫だよ!大丈夫だから。」

必死に慰めようとする里桜を見てはっとする。

「・・・うん。」

゛大丈夫゛て言う根拠もないし、現状も変わったわけではないけど、ここで焦っても仕方ない。

「ごめん。変な言い方して。」

心配そうに私を見ながら謝る。

「へ?」

意味が良く分からなくて聞き返した。

「私の能力は、触れた人の記憶を見ることができるの。もうほとんど使えないけど・・・。それで小梢の記憶を見えたの。」

里桜も能力が使えるんだ。人形でも能力使えるのか。

「私の記憶?」

でも私の記憶って何見たんだろう。

「そう。衆が、小梢を眠らせて。そのあとは、力を使ってここにきた。」

冷静に自分の見たことを話してくれる。

「ここへきた?衆の力?」

「ここへきたのは小梢の能力だよ。」

里桜の言葉に驚いてしまう。

「私に力なんてあるの?」

「屋敷を出るときも力を使ったじゃない。」

力なんて使ってない。何言ってるんだろう?

「何もしてないよ。ただ歩いただけだよ。」

「自分の意思で、力を扱えないの?見てもいい?」

「うん。」

ゆっくり目を閉じると小さな手を伸ばして私の手に触れる。

里桜の顔が歪む。

「はっぁ、はっぁ、はっぁ。」

足元がふらついて転びそうになっている里桜を支える。

「里桜!大丈夫?」

里桜は私を見つめながら言う。

「小梢、この世界の人じゃないの?」

驚いたように訊かれる。

「ぇ?うん。」

戻れないけど・・・。

「今梢の過去を見たの。小梢の世界では、精霊の力が無くとも平和に暮らせるの?」

私のいた世界に興味を持ったのか真剣な顔で聞いてくる。

「精霊の力、ここでの不思議な能力のこと? 」

「そうだよ。私たちは精霊と融合することで力を使えるの。身を守ったり、普段の生活にも役立ってる。」

「そうか。でも私たちの世界は、力がないから平和なんだよ。」

梨花やママやパパみんなのこと思いだししながら答えた。

「そっか・・・。確かにそうかもしれない。」

そんな話をしていると足音が聞こえた。

「誰か見られる前にここを移動しよ。衆の手がかりも必要だし。」

戸惑いながらも返事をする。

「うん。」

里桜は嬉しそうに歩いている。飛んでいる蝶を追いかけたり、道に咲いている花を拾ったり、衆を探してくれているようには見えない。

「里桜。ほんとにこっちでいいの?」

少し、いや大分、心配になって聞いてみる。

「あぁ、当り前よ!こちに、衆がいる気がする!」

すごく焦ってるように見えるけど・・・。それに゛気がする!゛とか言ってるし。

「・・・それならいいんだけど。」

少し疑ったような目で見ると、里桜は少し気まずそうに目をそらした。

「私、屋敷の外に出たことないの。だから嬉しくてつい。」

しょんぼりしている里桜を見ると可哀そうになった。

里桜の頭をなでながら聞く。

「里桜は、衆を知っているの?」

顔をあげると私の顔を見て、首を振り答える。

「知らない。」

「・・・。知らないのにどうやって、案内するつもりなの?」

この子、私をからかってるのかな。衆も心配だし、これでも急いでるんだけど。

里桜は立ち止まって私の方を向くと私を見上げながら話し始めた。

「衆は、ここにいない。と言うか、この時代にいない。」

どういうこと?衆は今無事なの?

「それじゃあ衆は?」

里桜は私を励ますように話しだす。

「大丈夫だよ!衆は火の精霊を使うんでしょ?」

手から炎、風を出したり、木の能力も使ってた。

「うん。あと風と木も出してた。」

「3つも?あの歳で3体の精霊を使う能力者がは滅多にいないよ。それに火の精霊は、どれも強い能力者にしか憑かないから衆って強いとと思う」

少しほっとする。

「良かった。」

また歩き出した里桜の後に続く。

「それが良くないの。」

申し訳なさそうに言う。

「何で?」

「だってこのままじゃ、小梢は衆に会えないよ。里桜が感じた感覚では、衆は、数十年後の未来にいるもん。」

「数十年て?」

「分からない。10年後かもしれないし、50年後とかもっと先かもしれない。」

「それじゃあどうすればいいの?」

「小梢がもう一度術を使うしかないの。」

「どうやって?」

「それを助けてあげる。力の使い方教えてあげるよ。」

「力なんてそんなに簡単に使えるようになるものなの?」

「無理だよ。でも、小梢はもう使ってるじゃない。無意識にだけど。」

「自分で自覚してないのに使ってるって言えるの?」

「使ってることに変わりない。あとは自覚するだけじゃない。そうすればコントロールできるようになる。ちょうど良かった。ここで練習しよう。」

野原が目の前に広がっている。

「練習?どうすればいいの?」

「えっとね。能力は、精霊の力を借りて発動するものなの。精霊がいないと力は使えないし、精霊も術者がいないと力を使えな。だから自分の中にいる精霊を認識してあげて。」

「わかった!やってみる!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ