胡蝶
廊下で、衆と話していると女の人が近づいてくる。
「衆様。」
衆が、小声で言う。
「俺の後ろに隠れろ。」
衆は、ゆっくり女の人の方に向く。
「なにか用?」
何で隠れなきゃいけないの?そう思ったけど言われた通り、衆の後ろに隠れた。
衆の身長が、私より20cmほど高かったおかげでうまく隠れられた。
「また、優様に会いに来られていたのですか?」
゛また?゛
そんなに会いに来てるんだ。
「そんなことより要件は?」
衆がいらいらしたように聞く。
「そろそろ出かけられないと、今日の会合に遅れますよ。」
「今日の会合には出ない。連絡入れておいて。」
「いいんですか?この会合は「聞こえなかった?同じこと言わせるな。」
衆が、めんどくさそうに言う。
なんの会合なんだろう?
「かしこまりました。」
女の人は納得してない様子でそう言うと、廊下を歩いていった。
「部屋に入ろう。」
そう言われて部屋に入ると衆が部屋の襖を閉める。
「ねぇ、私見つかるとダメなの?」
「だめじゃない。でも、起きてることが分かったら面倒なことになる。」
「なんで?」
「優は、比碼条家の後継者候補だから。」
比碼条家?後継者?
「ひめじょう家ってすごいの?」
「比碼条は、この国と、言うよりこの世界、有数の名家だ。知らない人の方が少ない。」
比碼条家なんて聞いたことないな。やっぱり人違いだと思う。
そんなことより、今何時なんだろう?変なことに巻き込まれちゃったけど、家に帰らないと。
「そうなんだ。でも私、関係ないみたいだから家に帰るね。」
とりあえず帰らないと今日は、ママ達と食事に行くことになってたし。
「帰るってどこに?」
「自分の家だよ。」
不思議そうに聞かれる。
「優の家はここだろ。」
「違うよ、私の家は蒼ヶ丘1丁目15番地!」
「蒼ヶ丘?そんなところこの世界にないぞ。」
「あるよ。ここ何処?」
「ここは、沢緑甲翡翠の社」
初めて聞いた。何処だろう?
「たくりょくこう、ひすいのやしろ?日本のどのあたり?」
知らない土地の名を聞いたせいか心配になってくる。
「日本?」
何この反応?
「国名でしょ。」
「ここは和玖国だ。」
日本じゃない?
「わく国?」
驚いてさらに質問する。
「ここ地球だよね?」
「違う。夢でも見てたんじゃないのか?」
衆は少しいらいらしたように言う。
「そんなはずなぃ。」
意味が分からない。
少し整理してみる。
私は、寝てる間にこの世界に来たってこと?
違う。
衆は、゛2年間ずっと寝てた゛って言ってた。
だとしたら゛来た゛じゃなくて゛いた゛ことになる。
考え込んでいると衆に話しかけられる。
「何が起こったのか知らないけど、優の力の影響だと思う。」
「力?」
「この力。」
そう言うと衆は、人差し指の上に小さな火の球を出した。
「なにこれ?」
「これが、俺の能力。」
「すごい。」
目の前で手品を見たような気分。
「優も使えるはずだけど。」
「ほんとに?・・・でもこれが、私とどう関係するの?」
話が本題からずれてしまったことに気づいて慌てて元に戻す。
「どんな能力は分からないけど、優がこうなったのは優の能力が関係していると思う。」
「じゃぁ、私が能力私の能力を使えば元いた所に戻れるの?」
「そうだな。でも優の力は、優にしか使えない。力を取り戻さないと帰れないだろうな。」
「じゃぁどうすればいいの?」
「力を取り戻すには、比碼条家で過ごすのが一番手っ取り早い。」。
なんだか納得できなかったが、いい案を思いつかないので、しぶしぶ衆に従うことにした。
「分かった;」