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眠れる森の  作者: 百乃
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夢現

青空には大きな白い雲が浮かんでいて、窓を開けると涼しい風が木々を揺らしながら部屋に吹きこんでくる。

のんびり外を眺めているとなんだか眠たくなってくる。


風が勢い良く吹いて、木々が揺れざわざわと騒がしく音を立てる。


目をあけると自分の部屋にいたはずの私は、なぜか知らない部屋にいた。

ここはどこなんだろう?

洋室だった私の部屋が和室になっている。

起き上がると自分が浴衣を着ていることに気づく。

何で浴衣着てるんだろう?

さっきまで、ワンピース着てたのに。

あたりを見回すと襖が開いていて、竹林が見えた。

布団から出て、廊下に出と庭では風が竹の葉を揺らしている。

竹林を眺めていると、誰かに名前を呼ばれる。

ゆう!」

声のする方に振り向くと、知らない男の子がゆっくり歩いてくる。

茶色い髪に、同じ色の瞳、袴を  着こなしていてつい見とれてしまう。歳は私と同じ16歳くらい?

「起きたのか。」

そう言って抱きしめられる。

・・・誰?

いきなり知らない人に抱きつかれ、びっくりして突き飛ばしてしまった。

顔を見ると、怒ってる?

「・・あの、ごめんなさい・・・。えっと私のこと知ってるの?」

「知ってるに決まってる。・・・幼馴染なんだから。」

幼馴染?

あなたと会ったのは、今日が初めてなんだけど・・・。

「えぇぇっと、私とあなたが?」

「覚えてないのか?」

からかっている様子もなく真顔で聞かれる。

「ごめん。意味が分からないんだけど。」

知らない場所で、知らない人、覚えてるもなにも記憶にない。


「優は、2年間ずっと寝てたんだよ。」

2年間も寝てた?そんなに寝れるもの?

それより私には、2年前もここにいた記憶なんてないし、困ったな;

「あのぉ〜たぶん人違いだと思います。」

「人違じゃない。」

思いつめたようにそう言われる。

「でも私、あなたのことも、ここがどこなのかもわからないの。」

「・・・」

考え込んでいるのか、怒っているように見える。

「ごめん。怒らせて・・・。」

しーん、とした空気に耐えきれなくて、謝ってしまった。

「怒ってない。あと俺の名前、しゅうだから。」

「しゅう君?」

「君とかつけるな。」

「ごめん。」

「謝るな。優らしくない。」

私らしくない?

「ごめ・・、私ってどんな人だったの?」

衆に睨まれて、謝るのをやめた。

私の何を知ってるんだろう?気になる。

「優は、我儘で、無愛想で、自己中で、頑固で・・・とにかくそんな奴だよ。」

誰その人?ほんとに私?ひどい言われようだな。

でも、ここにいた記憶なんて全くない。

「ほんとに私ここにいたの?」

「疑ってるのか?」

怒ったように聞いてくる。

怖い。

疑うに決まってるよ。知らない男の子に、いきなりそんなこと言われて信用する方が変でしょ。

なんて怖くて言えない。

「疑ってないよ。ただ思い出せないから。」

「じゃぁ思い出させてやる。」

衆はそう言って意地悪くほほ笑んだ。

怒った顔しか見ていなかったせいか、笑った顔にドキッとする。


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