自称美しい人たち
「夕ごはんだよー」
台所から母親の呼ぶ声がした。
双子の結衣と麻衣は2階の部屋から先を争うように出てくると、階段を転げ落ちるように降りてきた。
「あんた、もう少し痩せな!」
「あんたこそ」
押し合いへし合い。
食卓につくと、……カップ麺?
「お母さん?!」
「あら今日はあんたたちのどっちかの当番だったでしょ?」
「だからってカップ麺はないよ!」
ぶーぶー。
台所の流しには汚れた食器が山積み。
「どっちかあれを洗ってね」
母親はスナック菓子の袋を手に、ボリボリ食べながら言った。
「私、前に洗ったもーん」
「何週間前ぢゃ?」
「忘れた」
ぷるぷる。
「あんたたちいい加減にして!もうずっとろくなもの食べてないわよ」
母親がぷち切れた。
「あたしぃ、ほら、手がこんなに美しいでしょ?だから家事に向いてないのよね」
「あら、白ブタの前脚かと思った」
「そうゆうあんただって白ブタぢゃない?」
「ブタぢゃないけど、白くて美しいのよ!」
「なんのこっちゃ」
「お母さん似なのね〜。うちの家系は太りやすいのよ」
「お母さんは太ってません!」
十分太っていた。丸々とした体格。双子が立ち向かっても魔王のようにそびえたってかなわない。
「お母さんがあんたたちくらいの年には痩せて儚い美少女だったわよ」
双子は一蹴した。
「お母さんがろくに料理作って管理しないから私たち痩せ細って死んじゃうわ!」
「そのくらいの年だったら料理くらい自分から作ってみせたら?」
「主婦が料理するって決まってるの!」
「決まってません」
わーわーぎゃーぎゃー。
今日も一日が過ぎてゆく。