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行き遅れ聖女の本当に正しい慰めかた

その時、加賀朗志に電流走る


とまぁ、そこまで深刻に捉えてはないけど…流石に戸惑いを隠せなかった



「なるほど……名高い初代の勇者でさえその有り様ってことは後続もおいそれと手を出せなかった訳か」


「元々無茶苦茶な方法ですの…」


「ちょいと失礼」


俺はデイジーのおデコに額をくっ付けて聖母や聖人についての記憶を漁る


イチイチ調べるのは面倒だし、これが1番手っ取り早い



「確かに無茶苦茶だな」


その実態は精霊術に似ていた


己の魔力を自然に溶かして新たな精霊を生み出す精霊術


自然だから実態は無いし、魔力が切れればまた自然に還る



聖人を生み出すにはその原理を母体と魂で行うようだった



「見ましたの…?」


「人を覗き魔扱いするな…見せてくれたんだろ?」


記憶を覗くのは少々神経を使う

デイジーほどの実力があれば簡単に突っぱねる事が出来るはずだ


それをしなかったと言うことは、何処かで俺に期待してくれているんだろう



「そんじゃさっそく」


「え、今ここでしますの!?」


俺が躊躇も無く準備し始めるとデイジーが取り乱した



本来条件が整わないと実行出来ない儀式


しかし生憎と俺はその条件を1人で達成出来る



「この前死霊術の権威に直接教わったからな、魂切り分けんのもお茶の子賽々ってなもんよ」


魂の切り分けから定着

有事の際の治癒・回復


その他様々なアクシデントに見舞われても対処出来る自信がある



成功すれば史上二人目

そして俺に至っては史上初


歴史的快挙かもしれんけど、そんな仰々しい事じゃない



きっと初代の勇者も同じ気持ちだっただろう



俺はデイジーがもう泣かなくて済むなら何だっていい


だから歴史的瞬間が民家のベッドの上でも気にしない



「お、お待ちになって!」


「どうした?」


「やっぱり止めましょう…」


この期に及んで怖じ気づくデイジー


まぁ…一寸先に死が待ち構えているかもしれないんだから無理もない



「あの…その……なるべく貴方の要望にお応えします…だから…」


「そうか…じゃあちょっとここに座り直してくれ」


そう言って俺は横たわるデイジーをベッドの上に座らせると掌にビリヤード玉くらいの大きさの丸い(もや)を出す



「…それは?」


「俺の魂(の一部)」


途端、目を丸くするデイジー


慌てふためき俺の手首を掴むとそのまま口元まで持っていこうとする


「は、早くごっくんなさってくださいまし!!」


呑み込むとか…そういう概念の物じゃない

つーか掌から出したのに何で口から戻そうとしてんだろう…(別に口からでも戻せる)


…可愛いなー



テンパってるデイジーを愛でたい衝動をグッとこらえる俺は魂を呑み込んだフリをして口の中で待機させた



「ちゃんと呑み込めましたの??喉に詰まってませんの??」


無駄な心配をしてくれるデイジーに笑顔で返す俺は彼女を抱き締めながらこの日最長の長いキスする



1分…2分…


途中で意図を理解したデイジーに背中を引っ掻かれるがお構い無し


ゆっくりと確実に俺の魂がデイジーの中に溶け込むのを確認し、3分に渡る長い口付けに終止符を打つ.



「……卑怯ですわ」


少々強引なやり方に御機嫌斜め


「ごめんな」


俺は素直に謝ることしか出来ない


それでも一切の後悔も無かった



「おー、上手くいったみたいだな」


「はぁ…もう手遅れですわ」


一瞬、デイジーの下腹部が淡く光って成功を確信する俺と溜め息を吐く彼女


対照的な反応を見せつつ俺はデイジーのパジャマのボタンを閉めていく



「さて、儀式も上手くいったし後は風邪を治すだけだな」


立ち上がり、デイジーに布団を被せ直して足早に部屋を出ようとすると袖を掴まれ引き留められた



「なんともありませんの…?」


「なんともありませんことよ」


「本当に…本当に良かったですわ」


デイジーの声は震えていて、おそらく安堵から泣いてんだろうけど…俺はその顔を確認する事が出来なかった



「もう大丈夫だから、気にしないでゆっくり休みな……夜もまた美味い粥作ってくるからよ」


「ふふっ、楽しみにしてますわ」


ふざけてたりして虚栄を張っていると上手く騙されてくれたみたいで、掴んでいた袖を解放してくれた



脚が震えていないかだけに最新の注意を払った俺は部屋を出てすぐにあのいけ好かない先輩勇者に連絡を取る




『お前の方から連絡してくるなんて珍しいな、急用か?』


「今何処に居る…?」


『あ?ぶっきらぼうに何なんだよ』


「…いいから早く教えろ」


今は憎たらしい声に嫌味を返してる余裕が無い


そんな切羽詰まった状況を察したのかデルドレは声のトーンを落とした



『祭事が終わったからそっちに向かおうとしてた…今はバカンのアグム領に稔達と居る』


「そうか……室内に居るなら建物名も教えろ」


『レオンゲラロの宿の最上階スイートだ』


畜生…デルドレの分際で良いところに泊まりやがって……腹立つ



「わかった…すぐ…行く……ゴホッ…!」


『おい…何か知らんが悪魔にでもやられたのか?』


喉の奥から込み上げる物を両手で押さえると指の隙間から飛び散った雫が壁に小さな赤い染みを作った



「チッ…あとで掃除しないと」


『何訳わかんねーこと言ってんだ…とにかく何があったか説m…』


俺は通信魔法を乱暴に切断して直ぐにアグム領にワープした



レオンゲラロの宿は有名だが行った事は無い


一番近い場所に飛んだものの、そこからは徒歩5分といったところ


徒歩1分ってのは約80m

それが5分で400mなんだが…

どうにも足取りが重い



雨の中、傘も差さず

激痛に耐えながら歩く400mは永遠にも思えた


流石にそんな手近に永遠が転がってるはずもなく3倍の時間をかけて到着



ここから更に階段を登らなくちゃいけないのか…と気が滅入っていると宿の出入口でデルドレが傘を差して待機していた


おぉ…たまには気が利くじゃねーか

感心感心



「んな血塗れでどうしたよ?」


「ちょっと魂を千切ったんだ…結構辛ぇなこれ……ナメてたわ」


「魂って……お前まさか!?」


流石は何百年も勇者をやってるだけあって察しが良い


口数を減らせるのは有難い



「ついにやりやがったか…」


「俺ぁお前と違ってお利口さんじゃねーからな…我慢出来なかった」


「へっ、見切り発射もいいとこだ」


「……違ぇねえ」


他愛も無いやり取りをしてる間にも色んな穴から血が吹き出る


正直意識を保つのもやっとだった



「一応…自分で出来る事は全部やるつもりだが……足りねえだろうから手伝え」


「お前に手を貸すのは癪だがデイジーに泣かれるのは困るからな」


「悪いな……ありが…と…う…」




内臓で雑巾絞りしてるような感覚

流し過ぎた血


身体中で破壊と再生が繰り返される激痛に俺はついに耐えられなくなった




ブラックアウトで暗い視界


薄れゆく意識





最後に得た感触は地面の硬さじゃなく


逞しい腕の硬さだった




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