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九話 小迷宮拡張

 フォンの小迷宮は、迷宮とは名ばかりの直線通路だった。

 途中、横道などもなく最深部まで迷わず辿り着くことができる。

 これは敵を迎え撃つ分には楽だが、非常用の逃げ道がないのは不味い。


「あらかじめ出口をいくつか作っておいてもいいんじゃないかな」


 罠には様々な弱点があるけど、その一つが物量で攻められる事だ。

 一つの罠で対処できる敵の数は限られている。大勢で押し入って来られると厳しい。


 たとえば広範囲に有効な罠に爆発罠、落石罠などがあるけど。これらは地形にまで影響を与える。

 唯一の出入り口を敵の亡骸と崩壊した土砂で埋まると、僕たちの方も閉じ込められてしまう。

 

「わかりました。現存魔力で出入口を一つ追加します」


「しばらくは拡張の方に魔力を使おう。外の警戒はブルースライムがしているんだよね?」


「はい。あの子たちには目はありませんが、匂いには敏感です。私たち以外の生物が近付けば知らせに来るよう命令しておきました」


「……心配だなぁ」


 現状、主戦力の一つであるブルースライムはちょっと頼りない。

 声は出せない、動きも遅い。敵の侵入を察知しても間に合わないような気がする。


 ここは連絡係としてウルフを一匹召喚しておいた方がいいか。とはいえ拡張の方も重要だし。

 やはり、何をするにも魔力不足が足を引っ張る。もっと上手く稼ぐ方法はないだろうか。


「この辺りから拡張を進めましょう」


 フォンが迷宮核を器用に片腕に抱いて作業を始める。

 彼女が壁に触れるとその箇所が削り落とされていく。そのまま奥の方へと消えていった。

 削られた壁を見ると崩壊しないよう自動で補強されていた。かなり細かく地形を変えられそうだ。

 それにしても、迷宮を広げるのに手作業だと相当時間が掛かりそうな……。


「ちょっと外の空気を吸いに行ってくるよ。ブルースライムの様子も気になるし」


「リーン。魔物には気を付けてくださいね?」


「うん、大丈夫。すぐに戻ってくるから」

  

 拡張作業の方はフォンに任せて、僕は一旦小迷宮の外に出る。

 相変わらずいつもと同じ青空が広がっている。肩を回しながら軽く柔軟を。

 小迷宮は窮屈なほど狭いわけではないけど。どうしても身体が凝ってしまう。


「他の守護者とはどれだけの差が開いているのか。このままの進みで果たして追い付けるかな……」


 これから先、周辺の魔物を狩り続けていても、得られる魔力はたかが知れている。

 今後のためにも魔石が欲しいところ。地上でならお金を払って購入する選択肢がある。

 しかし、屑魔石でも結構良い値段がするし、僕の手持ちではそこまでの数は稼げない。


 それに第二層から地上までは片道でも半月はかかる。

 フォンを一人にしておけない。今のところ他の守護者とは遭遇していないものの。

 迷宮異世界において、楽観視していいのは自殺願望者だけだ。常に最悪を想定しないと。


「吸収できる魔力量には魔物の強さも関係しているんだろうな。マッドウルフも単体では弱い方だし。魔力を持っていそうな魔導生物を狙うか、もしくは大胆に大物を狙うか……!」


 第二層に生息する大物といえば、【鋼の剣】を苦しめた【森林の殺戮者】キラーマンティスだ。

 奴を仕留めれば相応の魔力が得られるだろう。しかも連中は何度狩っても復活するのだ。

 効率的に狩れるようになれば――――まぁ、そもそも普通に戦って勝てる相手じゃないけど。 


「ん……?」


 一人思考を巡らせていると、僕の足元でブルースライムが回っていた。

 何かを知らせたいのか、しきりに身体を大きく動かしている。わからない。通訳が欲しい。


「もしかして、敵が近付いている? あ、ちょっと……!」


 確認する前に、ブルースライムが動き出す。

 僕もそのあとを追いかける事にした。森の中を進んでいく。

 毒性の植物が多いので、なるべく素肌が露出しないよう気を付けながら茂みをかきわける。


「……水の音がする」


 近くに泉があるのだろうか。微かな流れを感じる。

 注意深く耳を澄ませる。水源には強力な魔物が住み着くものだ。

 遠くの方で、誰かの荒い息遣いが聞こえてきた。人だ、何かと戦っている。


 少しだけ顔を出して状況を確認する。

 盾を構えた中年の男が、キラーマンティスに襲われていた。

 しかも周囲には他に仲間がいない。第二層の変異種を相手にたった一人で。


「あれは……ダント!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◇マッドウルフ

 第二層【幻影ノ森】の代表的な魔物。ランクはF。 

 ウルフ系はスライム並みに種類が多く、スライム以上に繁殖力が高い。

 食料となる毒性の生物を長年摂取し続けたことによって、自らも毒を宿すようになった。

 噛まれると一晩中幻覚症状に襲われる。酷い場合はそのまま衰弱、死に至る。


 素の能力は低いがとにかく数が多く。

 血の匂いに誘われ他の魔物との戦闘中にも容赦なく乱入してくる。

 Fランクは単体での評価であり。二桁の群れになると、危険度は一つ上のEランクに。

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