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二話 辿り着いた先は小迷宮

「はぁ……はぁ……とりあえず、ここまで逃げれば大丈夫だろう」


 無我夢中で走り続けて身体に限界が訪れる。鬱蒼と茂る森の木陰で一息付く。

 流石にカルロスたちも、追えば追うほど自分たちの首を絞めることになると気付いているだろう。

 それはつまり僕自身も追い詰められていることに変わりはないのだが。今は考えないようにしよう。


「……一人じゃ魔物とも戦えない。どこか安全な場所を探さないと」


 第二層【幻影ノ森】は一見、自然豊かで食材なども自力で手に入りそうなものだが。

 実際のところ目の前の自然は罠そのもので、人が食べると不調をきたす毒性の植物が大半だ。

 下手に腹を壊してしまうと貴重な水分を失ってしまう。水もまた手に入りにくい代物だから。


 水源は探せば見つかる可能性があるが、大抵強力な魔物も住み着いている。

 そうなると結局一人では対処が難しい。現に一匹の変異種にパーティが壊滅しかけたばかりだ。

 

「トラバサミは空中の敵には効果がないからなぁ……」


 僕たちを襲った変異種は、羽を持つ大型昆虫の魔物だ。

 鋭い鎌を両手に生やした【森林の殺戮者】キラーマンティス。そんなのが頭上から落ちてきたのだ。

 不意打ちでなければ、皆で協力すれば倒せない相手ではなかった。運が悪かったとしか言えない。


 まぁ、おかげでカルロスたちの本性が露呈したと考えた方が気は楽か。

 役立たずってだけで切り捨てられるなら、いずれは同じ目に遭う可能性があった。


 しばらく歩いていると、森の中に不自然な空洞を見つける。

 ――小迷宮だ。迷宮異世界ではたびたびこういった別の迷宮が生成される。

 ユグドラシルとはまた別種の魔物が生息していて、罠などもあり危険が多い。

 とはいえ、財宝などが詰まった宝箱が見つかったりと、小迷宮の方が実入りがあったりする。


「……小迷宮の方がまだマシかな」


 森の中では僕の罠は上手く誘い込む必要があって使い辛い。

 基本的に通路が狭い小迷宮ならまだ、魔物と遭遇してもやり過ごせる。

 運が良ければ水や食料が手に入る可能性もある。


「中は流石に暗いな……篝火を失くさなくてよかった」

 

 襲撃を受けて荷物を失ったが、手持ちの探索用の魔法道具はまだ無事だった。

 魔力で生み出された火を使って辺りを照らす。小迷宮に潜ってから二十分は歩いただろうか。

 幸運にも一度も魔物とは遭遇していない、ただし妙な臭いが漂っていた。

 腐敗臭だろうか……? 不快感が強く、我慢しないと胃液を吐きだしそうになる。


「……あれは、魔物の死骸だ。大きいな。もしかして――――龍?」


 目の前で巨大な顔がお出迎えしてくれた。

 頑丈な鱗に覆われた威厳のある頭、龍の亡骸だ。立派な二本の角がくっついている。

 素材として一級品なのに、手付かずのままだ。誰にも見つからず放置されていたのだろう。


「……コイツも、腹を空かせてこうなったのかな」


 普通に考えたら龍がこんな低階層で息絶えるとは思えない。

 第二層の魔物なんて、龍なら一撃で葬れるだろう。別の要因、たとえば飢餓の方が納得がいく。

 食料を求めて彷徨う僕としては一番避けたい答え。

 っと、想像したらお腹が鳴りだした。駄目だ、まだ我慢しないと。


 更に奥へ進んでいく、小迷宮の終着点に辿り着いていた。

 魔力だろうか、僕は魔法が使えないのでよくわからないけど。

 何らかの波動が全身に降り掛かっている。不思議と穏やかな気分にさせられた。


「――誰ですか。ここは魔物払いをしていたはずなのに……!」


 突然声をかけられる。弱々しい女の子の声だ。

 岩陰から現れたのは、赤い宝珠を胸に抱いた少女だった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◇変異種

 ユグドラシル第二層から出現し、一帯の魔物とは別次元の能力を持つ。

 生息数は固定。決して滅びる事はなく、討伐しても数日後には復活してしまう。

 各階層に一種類から多い時で数種類の変異種が存在し、ギルドでは戦わず逃げる事を推奨している。

 各自縄張りが決まっていて、同時に二体以上から襲われる事はない。ただし例外はある。

 

 変異種の他に厄災種と呼ばれる魔物も存在する。

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