7、女子部員
登場人物
剣道部二年
○村瀬 翔也
本作の語り手。
○秋咲 楓
女子部員。
○八田 幸太郎
喜怒哀楽、表出人間。
「あ、村瀬くん。もう着替えたんだ。いつもそんなに早いの?」
着替え終わって更衣室から道場に移動すると、同級生の女子部員、秋咲楓が既に座っていた。
全く説明していなかったが、更衣室は武道場の中にあり、着替え終わったら道場に座って、他の部員が着替え終わるのを待つのが習慣となっている。いつも俺が一番最初に着替え終わって、その後にチラホラと男子部員が出てきて、最後の方に女子部員が出てくる。ちなみに、女子更衣室は元々は教員の控え室で、男子更衣室は現在進行形で物置に使われている。そのため、体育の授業で使う卓球台や大量の竹刀が置かれていたりする。
「あれ、珍しいね。秋咲さんが早いなんて」
俺は、秋咲さんの向かいに座った。
「いつもは話しながら着替えてるんだけどね。今日は満里奈ちゃんも後藤ちゃんもいなかったから早かったの」
満里奈ちゃんこと吉田満里奈と、後藤さんは同級生だ。更衣室には後輩もいると思うのだが、今日は後輩たちと喋らなかったのだろうか。怖いので触れないことにするけど。
「そういえば二人ともいなかったね。後藤さんは風邪で学校休みで……吉田さんは?」
後藤さんと俺は同じクラスなので、彼女が休んでいることは知っていた。
「ああ、満里奈ちゃんは補習だって。小テストのときに休んでたから」
「あー。数学の林先生か。そういえば、八田もその補習に行ってるよ」
八田も俺と同じクラスだ。吉田さんは欠席したから補習を受けることになったらしいが、八田は単純に成績不振が原因だ。
「そう、八田くんと同じ補習だよ。やっぱり八田くんがいないと静かだねー」
八田はこの剣道部のムードメーカーである。
「元気な奴だからなあ」
そう言うと、秋咲さんはクスクスと笑った。
「こうやって皆んなと話しているの?」
「え?」
何の話か理解できなかった。そんな俺の様子を察した彼女は補足してくれた。
「村瀬くんと右近寺くんが話してるのを、この前見たの。あと別の日に、八田くんの話し声が聞こえてきて。八田くんって声が大きいから。話の内容は聞き取れなかったけどね」
見られたり、聞かれたりしていたとは。右近寺との話は内容が無いのでいいが、八田とは聞かれたらダメな話をしていた気がする。彼女が集中して聞いてなくてよかった。
「そうそう。あ、ほら、こうやって誰かが出てくるまで話してるんだ」
ちょうど更衣室の扉が開いた。
「じゃあ、これで終わりだね。また今度、早く着替えて話そうね」
そう言って、秋咲さんは微笑んだ。