表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着替え終わるまで  作者: 似見 正樹
4/69

4、スーパーの袋と意気込み

登場人物

剣道部二年

○村瀬 翔也

本作の語り手。

○右近寺 優

真面目。


関連エピソード

第2話


「この前、スーパーに行ったんだよ」

 右近寺優が天を仰ぎながら話し始めた。

「それで俺マイバックを持ってたから、レジ袋いりませんの札を置いてたの。そしたら、総額から二円引いてくれて、得した気分になったんだよ」

 なんとも掴みどころのない話だ。

 反応に困っている俺を放って、右近寺はマイペースに話を続ける。

「それで別の日、別のスーパーに行ったんだけど、その日はマイバックを持っていくの忘れちゃってさ。そこではスーパーの袋を使用する場合、三円とられるんだよ。なんか損した気がした」

 ようやく話の方向性がわかってきた。

「一方は値引き、もう一方は加算。この差ってどうなんですかって話?」

「うん、そう。でもさ、値引きするスーパーて、袋を持ってこない前提でやってるんだよ。持ってきたら安くしてあげますよーって。それに対して、お金をとる方は、持ってくるのを前提でやってる。持ってこないと金とるぞって。環境のことを考えたら、きっと後者の方がマイバック持参率が上がると思うんだ。北風と太陽って話があるけど、この世の中って北風の方が強いんだな」

 普段から理屈っぽい奴だなと思っていたが、こんなことを考えているとは思わなかった。

「なるほど。考えさせられるな」

 これぐらいしか言うことがなかった。その通りだね、としか言いようがないのだ。

 この反応に対して、右近寺は特に不満に思った様子もなく、相変わらずのんびり話をする。

「だからさ、北風に吹かれるように、毎日毎日文句を言いながら練習を頑張ってる俺たちもパワーアップしていて、新人戦で坊主集団に勝てるんじゃないかなって」

 どうやら数日前に話した、来週の新人戦の相手が強豪校疑惑をまだ引っ張っていたらしい。

「そうだな、頑張って練習してるもんな。勝てるかもしれないな」

 そう返すと、右近寺は妙に勇ましい顔で微笑んだ。これがまた夕陽に照らされてカッコいいこと。

「おうよ、明日も頑張ろう」

 不可思議な方向から始まったこの話は、予想だにしなかった爽やかな終着点に辿り着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ