エピローグ2 改良召喚魔法陣
年若い王子は、先王と呼ばれるほどに成長し、年老いた。
既に国政から離れ、今では手作りの木工細工で孫を喜ばずのを楽しみにしながら、外交で現王(息子)の手助けをする毎日であった。
そこに大魔王の再来である。
しかも原因は他国の貴族が自分も英雄になりたいなどという理由で、領地の魔物で魔王を作り、結局手に負えなかったという自業自得っぷりである。
大魔王に匹敵するよう領地の各地で計画的に魔物の群れを調整し、長年かけて育てたというからこれまたひどいものだった。
各国は勇者である先王に期待し、また擦りつけようとしていた。
大魔王の強さを忘れてはいないのだ。
先王は召喚直後の力を有しているわけではないが、過去に大魔王を倒したという実績が何も知らない民からの期待という非難になって責め立ててくる。
さらには孫に「おじい様は勇者だから二代目大魔王なんてすぐ倒してしまいますよね」と笑顔を向けられたら、命をかけるしかないというものだ。
先王は大魔王討伐に出た。
初代大魔王討伐の地を道中にはさみ、二代目大魔王の討伐を行う計画である。
同行するのは先王直属の騎士団であり、初代大魔王討伐に参加した者たちの子らを中心とした精鋭である。
初代大魔王討伐の地に到着した。
初代大魔王討伐の地であり、召喚魔法陣の残されたこの地は、魔法使いたちの研究都市として発展していた。
召喚魔法陣の強化魔法の定着に注目した各国が召喚魔法陣の情報公開を条件に出資し、自国の魔法使いたちを派遣しているのである。
そして発動に人命が必要な改良召喚魔法陣の運用のため、燃料として各国の囚人が集められる監獄都市でもある。
先王はここで改良召喚魔法陣を使うつもりだった。
すでに先王はただの騎士程度の力しか持たない。
初代大魔王に匹敵する二代目大魔王に傷一つ付けられるとは思っていなかった。
二代目大魔王を倒すには召喚魔法陣の力が必要なのである。
各国も召喚魔法陣の使用を承諾した。
最優先は二代目大魔王の討伐であり、ここでは囚人の命と魔力という燃料が既に揃っている。
さらに未だ各国の研究では召喚直後の強化が持続する戦士の召喚には至っていないことから、先王が奥の手を見せることに期待をよせる意図もあった。
今回召喚魔法陣に命を賭すのは、とある国でクーデターを起こし失敗した傍流王家の貴族たちである。
魔力の高い魔法使いが戦果を挙げ、取り立てられやすいために貴族には魔力の高い魔法使いが多い。
また王族やその血に連なる者はしがらみも多く、罪を公表できない者も多い。
そのためここ監獄都市で国家の為に働く名目で幽閉されている者もいるのである。
今回はその囚人貴族たちの命で召喚魔法陣を使うのだった。
今回の召喚魔法陣で二代目大魔王が討たれれば、命をかけて召喚した者は名誉ある献身の使徒であり、その影響も加味して選ばれた者たちだった。
先王はこれから召喚魔法陣を動かす者たちの献身をたたえ、名誉が未来永劫残ることを約束する。
周囲で見守るのは各国を代表する魔法使いだ。
勇者が先導して行う新しい召喚魔法陣の発動を、一瞬でも見逃さないよう、また歴史的瞬間を目に焼き付けるようにしてみている。
先王が魔法陣の発動を宣言する。
誓言が届くよう周囲の風を止め静寂に
言霊で石板を作り魔剣で魔法陣を刻み
聖樹の洞から彫りだした聖杯を祭壇に
邪竜の生血で満たして万魔に染め
呪歌で魔力を集めて魔法陣を起動する
周囲の魔力と命を代償に『魔王を倒す』ために
召喚魔法陣の前に光が集束し
召喚された二代目魔王は強力な弱体化を受けており、勇者の一撃で討伐された。
「召喚対象」が指定できて「バフ」がかかるなら「デバフ」も可能ですよね?
めでたしめでたし