エピローグ1 解説:勇者召喚魔法
魔法陣は周囲から最も年若い人物を呼び寄せ、強化を施して召喚するものだった。
召喚は召喚者と被召喚者の絆を持って成り立つ魔法である。
通常は契約という魔法をもって絆を明確にしておくものだ。
それを命を生贄にする邪法でもって一方通行にした。
そして生贄の魔力から召喚で余った分を使い、肉体を強化した状態で召喚することを可能にしたのだった。
召喚の魔法陣に捧げられたのは、魔法使いとその周りの男たちの魔力と命である。
召喚の範囲は小さいが、年若い王子が範囲に入った。
王子に施された強化は、通常の強化と違い数十人分の魔力が籠められていたため、魔王を傷つけることができた。
その一撃が魔王の心の臓を突いたのは僥倖と言わざるを得ないが、魔王を倒す決意の強さか最後に幸運をもたらしたのだろう。
魔王を失った魔物たちは、習性どおり一目散に散って行った。
途中、強力な個体が包囲する各国の軍を突破しようとし、甚大な被害を与えた。
そのせいもあって処刑後に侵略をする国は少なく、あっても「勇者の国を襲った大罪」をもって周囲の国から制裁という侵略を受けることになったのだった。
勇者である王子は召喚直後は強力な力を有し、力加減ができない状態だったが、半日もすれば強化は薄れ、力自慢の騎士と並ぶ程度の力に落ち着いた。つまりは強化が定着したのである。
このことに目を付けた各国が召喚の魔法陣を研究したが、今のところ召喚が行えるほどの優秀な魔法使いの命に匹敵するほどの戦士を作り出すことに成功した事例はまだない。
今回のことを忘れぬよう、この魔王は「大魔王」と区別されるようになった。過去に類を見ない大いなる力を持つ魔王という意味である。
そしてこの経験を活かし、人々は魔物のボスは群れが小さいうちに倒すようになった。
それに伴う騎士団や兵士の巡回、討伐により人の世から魔物の脅威は減ったのである。
しかし
勇者が魔王を倒して数十年。
再び大魔王が現れた。