責任
魔王討伐は各国の精鋭たちが行ったが、魔王の群れは大きく、連携も巧みであった。
人々がこの時初めて知ったことだが、魔物は強力な個体ほど知恵が回る。
魔物同士の会話と思しき遠吠えや、人の言葉を理解しているような個体も確認された。
それでも精鋭たちは陣形を組み、協力することで対抗できた。
しかしながら魔王の強さは精鋭たちでは歯が立たないほどにまで強大であった。
仲間たちが開いた血路の先で、精鋭たちは魔王に傷一つ付けられずに敗北を喫したのだった。
精鋭たちの敗北の知らせは、各国を揺るがせ、人々を不安にさせた。
これまで小規模ながら倒せていた魔物が、人以上の強さと知恵をもって襲ってくるかもしれないのだ。
実行した国々は発案した国に、国民は王に、王は発案した魔法使いに責任を取れと非難した。
魔法使いはその非難を受け入れた。
罰を受け、自分の死をもって責任をとると宣言した。
だが責任をとるなど、人一人、国一つが死しても魔王は存在し続けるのである。
それでも人々は死を望んだ。一片たりとも未来にお前の幸せがあることは許せない、と。
罰は、発案した国が魔王に挑むことだった。魔法使いが先頭に立ち、王族を含む騎士団の男たちが魔物に挑み、少しでも数を減らして死んでいくのだ。
王族のいない国は滅び、その後侵略した国々が民を奴隷として使うのは明らかだった。
魔法使いは自らの罰を受け入れたが、他の者たちはそうではなかった。だが受け入れなければ女や子どもたちまでもが死ぬだけだと言われ、逆らう者は既に家族郎党皆殺にされていた。
魔法使いは諦めていなかった。
もちろん罰として自分が死ぬことは受け入れたが、他の者たちの死は受け入れていなかった。とくに王族の中でった一人未成年だった年若い王子が他国の思惑により特別に成人扱いとされ、今回同じく処刑されることを憐れんだ。
この解決方法は魔王を討伐するしかない。魔王討伐の栄誉と自らの死によって、今回の後始末と恩赦が得られる道があると魔法使いは考えた。
そしてその考えに至ったのは他の者も同じだった。
ただ肝心の魔王を倒す方法がなかった。
魔王は一定以下の攻撃を無効化する感じです