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ドラゴンリング  作者: 坂井美春
第壱章 ルテチア
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フランス南東部リヨン市内オペラ劇場前

 偵察用二輪車が到着したリヨンは、ローヌ川とソーヌ川の合流点にある街である。ルテチアから約四百五十キロ離れたこの街は、フランスの南東部に位置する都市で、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の首府、メトロポール・ド・リヨンの県庁所在地であった。フランスの金融センターのひとつであり、都市圏としてはフランスで第二の規模をもっていた。かつての街並みは特に美しいと言われていたが、今となっては、どこにでもある廃墟に過ぎなくなっていた。

 ドミニク・メイスン曹長とホセ・サンティアゴ一等兵は、サン・ジャン通り、ブブ通り、ジュイヴリー通りを一巡したのち、オペラ劇場の前で停車した。

「やはり生存者は見当たりませんね」

 メイスン曹長は第一報を〈デリンジャー〉に届けた。

「こちらは徐行のまま接近中しつつある。安全な場所を確保してくれ」

 〈デリンジャー〉から返答があった。

「了解」

 サンティアゴ一等兵が、ビーコン発信機を設置して戻ってきた。

「気がつきましたか? 死体がまったくありません。最後まで籠城したというよりはまるで連れ去られた感じですね」

「そんなはずはない。ここには五十万もの人間がいたのだぞ。そんなに大勢の人間をどこへ連れ去るというのだ」

 メイスン曹長は、ごくりとつばを飲み込みながら言った。

「生存者はシェルターに隠れていたのかもしれません。建物の中に入ってみましょう。なにか、わかるかもしれません」

 サンチャゴ一等兵は、じれったそうに言った。

「通信機のそばを離れるのは、まずいな」

 メイスン曹長は不安が隠し切れない様子である。

「軍曹はここで待っていてください。私が調べてきます」

 サンチャゴ一等兵はいちばん大きな建物に見当をつけ、小走りで中に入っていった。メイスン軍曹はその後ろ姿を見守っていた。実は、彼はその前から街全体がカビのような菌糸で覆われていることに違和感を感じていた。


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