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003・死なない方法

003・死なない方法


「武田晴彦。お前は今夜の一時ちょうどに―――、死ぬ」

「は?何だって?」

少女の言葉はとても信じられなかった。しかし、不思議と体から力が抜け、虫がまとうように不快感が走った。俺は嫌な汗が出て、地面にしてしまっていた。

「どういうつもりよ!」

辛うじてマトモに働く聴覚から、妖子が少女を押さえ付けているのがわかった。

得体のしれない重力と不安が俺の全身を捕え込んだ。視界が真っ暗になり、脳に声が響いた。


「赤松マドカの最も大事なものを奪え」

「は?」

赤松という名前には心当たりがなかった。その大事なものなどと言われてもまるで覚えがない。

「お前が死ぬという運命を避ける方法だ。私はこれを伝えに来た。そう、やればわかるということだ。」


「待て、そんな名前なんか知らない」

辛うじて脳内で力いっぱい返事をした。声は出せそうにない。


「お前をここまで送り届けた男のうちの一人がもうすぐ死ぬ。これで少しは信じられるか?」

脳内をあるイメージが流れ込み、学校の正面を映していた。

自分でも強制的に脳をジャックされているのだとわかった。


俺を連行してきた男の一人が倒れている。

車の中で何とか大声を出そうと抵抗を試みる俺を、メチャクチャに殴り付けてきた男だった。

別の黒服が倒れている男の首元を触ってみた。脈がないと慌てる様子が見える。そんなまさか、本当に死んでいるなんて。


「私があやめたのではないぞ。たまたまこの時間に死ぬ男だったからな。これで少しは信じられるか」

死神の血の気のない老婆のような手が俺の頬を撫でた。そして、俺の耳のそばで囁いた。

「もう一度だけ伝えるぞ。一時までに赤松マドカの最も大事なものを奪え。そうすればわかる」

立ち去ろうとするルナの背中に「待て」と叫んだが、無駄だった。

いつの間にか重みは引き、体は何ともなかったが、背筋が凍てつくように寒かった。


ルナは学校の正面にある薄暗い大通りの車の群れに飲まれるように消えた。俺はなぜかニワトリ小屋ではなくその場所にいる。

呆然である。目の前で消滅したところを見ると、ルナは本当に人間ではない気がした。


「走って」

妖子が俺の手を取って急に走り始めた。俺は駆け出しながら「逃げるのか」と尋ねた。

「当たり前でしょ。さっきの話が本当なら時間がないんだからね」

「あっ」

俺はルナという死神の言葉を思い出した。

深夜一時までにアカマツ・マドカという人物から大事なものを奪う、それができなければどうやら俺は本当に死ぬ。すぐに行動に移さねばならない。

救急車のサイレンの音が近づいてくるのがわかる。警察も来るだろう。相手をしている暇はない。


「妖子は、やっぱり俺の身に何があったかわかっているのか」

「わからない。でも何があっても私は君のことを助けるよ」

それだけ言って妖子はまた俺の手を引いて歩き出した。


「恥ずかしいんだけど…」

その時、思わず口に出そうになった言葉を喉元へ引っ込めたことは読者諸君にご報告しておこう。


(このお話の続きは、11月中に更新します。ぜひご覧ください)


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