見えてはいるけど
眞子は本当に困っていた。奇妙なコインを拾ってきてお風呂に入ってから寝ていたらこんな変な身体になっていたから。その姿は今日の文化祭で着るはずだったピンクの全身タイツそのものだけど、脱げそうになかった。もしかすると、自分の皮膚自体がそのように変化したのかもしれなかった。
「それで見えているのか眞子?」悠太にそう聞かれたけど、その答えは見えているだった。しかし見えているけどそれは人間の目ではなく、状況がピンクの皮膚を通して伝わるというのが正しかった。そう、感覚が進化しているかのようだった。
「ええ、見えているわよ。普段よりもずっと! でも、わたし元の姿に戻れるのかな?」
眞子は戸惑っていたが、そんな表情は周囲の者には誰にも分からなかった。ピンク一色に染まっている人型にしか見えなかったからだ。その人型に飛びついた者がいた、紗代だ。
「蘆澤さんたらこんな素敵なお肌になったのよね? あたいもなりたいなあ。まるで抱き枕みたい」
「宮村さんたら、いくら女同士でもそんなことをしたらシャレにならないわよ! やめてちょうだいよ!」
眞子がそういって紗代に反対に抱きついたとき恐ろしいことが起き始めた。紗代の手足の色が変わり始め苦しみ始めたのだ。