やってこない眞子
文化祭当日。二人のダンスの噂は広がっていた・・・わけではなかった。その年の文化祭では他のクラス発表会で予定されていた演目の方の中にいくつも注目されているものがあった。中には露出が多いだの、学校のアイドル的存在による歌謡ショーだの、注目されていたからだ。
唯一話題になっていたのが、顔が比較的美形である眞子がせっかくのダンスで顔を隠して出演するということだった。他のクラスからはもったいないという声があった。まあ、全身タイツという衣装の特色上あたりまえではあったけど。
そんなノー注目の演目である「ゼンタイ・ダンスショー」であったが、文化祭当日問題が起きた。眞子が登校しないのである。彼女の家は学校から車で5分離れたところにあるので、様子を見に行くことも出来たが、ギリギリのタイミングでドタキャンなのか? そんなふうに演出を担当した紗代をはじめ他のクラスメートが思い始めていた。
「どうして蘆澤さんが来ないのよ! それに彼女って無遅刻無欠席で今まで来ていたのになんでよ!」
紗代は半ば切れ気味にいっていた。彼女もそれなりに責任感があるのでケガキではなかった。だから、一層の事別の女子生徒に無理やり全身タイツを着せて悠太と一緒に出演させるつもりだったようだ。なぜなら紗代はクラス一の巨漢だったからだ。スマートな眞子とは別の雰囲気になってしまうからだ。
担任の粟井先生は眞子の自宅に電話したけど、登校させますのでちょっと待ってくれませんかという答えだったので、とりあえず他の女子生徒が全身タイツの餌食になるのは避ける方向になった。しかし、それでも眞子は午前中には登校してこなかった。
クラスではあんな勝ち気な女が来ないことに動揺が走っていた。まさか全身タイツを全校生徒の前で披露するのが嫌という事なんか? そんな風に認識する空気が流れていた。
「おかしいよなあ、昨日の晩も彼女の家で練習していたんだよ。その時に問題はなかったはずだ。あの眞子がわざわざダンス教室にいれてくれたんだ俺を! それなのになぜなんだ」
悠太はそんな風に説明したけど、ひとつ気になる点があったことを思い出した。彼女の全身タイツになにかが憑依したような気がしていたのだ。
「それってなによ? いくら霊感が強いと言われていても、それって関係ないんじゃないのよ?」
紗代におう突っ込まれていたが、登校してこない彼女の理由がわからなかった。その時、粟井先生が悠太と紗代をそっと呼び出した。