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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

乙女ゲーの悪役令嬢に転生しましたがヒロインが多すぎませんか

作者: 福来 由良

休日前の飲み会でベロンベロンに酔っ払った学生時代からの悪友に肩を貸しながらアパートに送り届けている途中、バランスを崩して階段からダイナミックに転がり落ちてどうやら私は死んだらしい。まじ悪友ファ◯ク!!……とか思っていたら転生していた。剣と魔法のファンタジーな世界の公爵令嬢として。



……って悪役令嬢やないかーい!!



と前世の記憶を思い出した3歳のある雨の日、心の中で盛大にツッコミを入れた。ちなみに思い出した切っ掛けはフッカフカの絨毯が敷かれたお屋敷の階段で蹴っ躓いて階下にいた兄にローリングアタックを極めたことだ。

ここは前世で大人気だった乙女ゲームの世界。

どれだけ人気かと言うと、ノベライズやコミカライズは勿論。通常の会話して選択肢を選ぶタイプの普通の乙女ゲーだけでなく、RPGっぽいのやクイズゲームにまでなっており、発売の度にゲーム雑誌で特集を組まれるくらいのかなり息の長いシリーズだったと言えばお分かりだろうか。

ヒロインはシリーズ毎に変わり、攻略対象達もいわゆるメインヒーロー以外は増えたり減ったり入れ替えられたりしているがそれはライバルポジにいる悪役令嬢も同様である。

そんな悪役令嬢の中でもシリーズ1作目から変わらずトップに君臨し続けるベストオブ悪役令嬢。悪役令嬢の中の悪役令嬢とも呼ぶべき存在。舞台となるこの国の王太子殿下である第1王子の婚約者であり、公爵家ご令嬢であるステラ・マルグリート。

それが、私である。


もう1度言おう。 私である。


理解した途端に頭を抱えて全力で悶えてしまったが仕方あるまい。だって あの ステラ・マルグリートなのだ。

このまま行けばお約束の婚約破棄に実家の没落。王城の地下牢に投獄、修道院に生涯幽閉、一家離散に国外追放、下手すりゃ処刑されてしまうんだぞ。まさしくお先真っ暗。

冗談じゃないっちゅーの!!

破滅は嫌!!と一念発起した私。ゲーム本編が始まる魔法学校入学までに、全力で自分磨きを決行する。

マナーやらダンスやら貴族社会ならではのルールやら、この世界の歴史や国の歴史に他の国の情勢、魔法に護身術。とにかく。とにっかく!学べるものは何でも学び、身に付けられるだけの知識や教養、そして特大サイズの立派な猫ちゃん(淑女仕様)を身に付けた。

奇しくも例のローリングアタックを極めてしまった兄が前世の私とともに転落死した悪友であったと判明し(TS転生かよ…!とリアルorzになってたな)、2人で努力に努力を重ねた結果、ゲーム本編の年齢に育った頃にはパーフェクトな淑女レディへと成長していたのだった。

……パーフェクトにやり過ぎてうっかり原作通りに王太子殿下と婚約してしまったのは予定外だったが。

まぁ…イケメンです。思わず目を逸らしたくなるくらいのイケメンですとも。

幸いにも現時点では彼は私にほ、ほ、惚れ…って言うかベタ惚れみたいな感じでありまして、現世兄である悪友にニヤニヤと見守られつつまぁその…う、上手くやってます。

もうこうなったら全力で破滅フラグを回避して王子と幸せになってやらぁ!と決意を新たに、ヒロインがナンボのもんじゃいかかってきやがれー…あっ、でも出来ればお手柔らかにお願いします!と魔法学校の門を潜ったのだった。
















そんなこんなで入学から暫く経ったわけなのだが、私の周りは多少騒がしくなったりする事はあるものの概ね平和である。うん。

パーフェクトな淑女レディである私がヒロインをイジメるなんて事は勿論無く、前世で読んだ逆ハーレム狙いの転生ヒロインに嵌められるような事も無く当然ざまぁ展開も、無い。

毎日のように魔法の実技訓練や座学に精を出し、休日や休憩時間なんかのプライベートには1学年上の第1王子とい、い、いちゃらぶ?ななななーんて事してそりゃもう充実した日々を送っていることですのよっ。

私が魔法学校に入学したのと同じくしてヒロインも入学しゲーム本編に突入したと言うのに、この乙女ゲー的イベントの起こらなさは一体どうした事なのか。むしろ悪役令嬢の私と第1王子との絆ばかりが深まってゲフッゴフン!…何故かと言えば勿論理由はある。その理由とは……。



「「「「レオ様!ご機嫌よう!!」」」」



レオニダス王太子殿下を囲み、輝くばかりの花も恥じらうとびきりの笑顔で挨拶した美少女達。

ところがどっこい、愛称呼びを許してないのに呼ばれてちょっとムッとしたらしい殿下が何か口を開く前に、彼を取り囲んでいたキラキラ笑顔達が一転して般若に変わった。



「ちょっと、アナタ達いい加減諦めたらどうなの?」

「は?そう言うあんたはどうなのよ」

「逆ハー狙いはスッこんでろよ…(ボソッ)」

「何か言った?あんたなんて所詮ライバルポジの踏台のくせに!」

「あの!レオ様!私この間とっても素敵な花畑を見つけてぇ!」

「「「「何抜け駆けしてんの(だ)よ!!!」」」」



ひ、ヒエェェェエエエエ!!怖ッ!女の争いマジ怖ッ!

あぁあのちょっとシンプルな衣装のボブカットは初代だな。隣のピンクのゆるふわロングは3代目か。他のは3人のそれぞれ個性あるヒロインから1人選んでプレイ出来る5代目ヒロインズね。あれは選ばなかったキャラがそれぞれライバルキャラとサポートキャラになるハズなのに完っ全に三つ巴の戦いじゃねぇか。

何か言おうとしていた王子も突如始まったキャットファイトに唖然呆然。しかしこれがいつもの事だからすぐに諦めて大きなため息を……幸せ逃げますよ?


そう、つまりこういう事だ。




ヒロイン、多すぎだからぁあああああ!!!!




確かに毎回ヒロインのビジュアルやデフォルト名なんかは変わっていたけども、まさか全シリーズのヒロインが大集合してるなんて誰が思うよ!思わんよ!全くの想定外だよ!

入学式の日の謎の大量投石事件(攻略対象の熱血系同級生との出会いイベ)に、大規模転倒事件(王太子殿下出会いイベ)、集団サボタージュ事件(同じく攻略対象の不良系先輩出会いイベ)エトセトラに、私はアゴが外れるかと思ったぜ…。ゲーム内ではそれぞれ蹴飛ばした石が当たっちゃってゴメンね、で。衆人環視の中転んじゃったけど助けてくれたのは1国の王子様だったよテヘペロ、で。式典会場に行こうとして迷っちゃった!桜(によく似た花)舞う校舎裏で出会ったのはミステリアスでアブナイ雰囲気の先輩でした……な感じのシナリオだったハズなんだが、ヒロイン達にしてみればどんなバグだよ!!ってなもんだろう。



「あ、あの…殿下も困ってますし場所を変えた方が…」

「「はぁ!?」」

「何1人でイイコぶってんの!?」

「どうせアンタもレオ様狙いなんでしょ?」

「見え見えなんだっての!」



あぁああ…違うんだよ。そのRPGヒロインはホントに良い子なんだよ。

ただ彼女はシステム上、初期の内に攻略対象と言う名のパーティメンバーの好感度を上げておかないと旅の仲間に入ってもらえなくなるんだよ!前世でゲームやってたなら知ってるでしょうに!好感度上げに失敗すると最悪幼馴染の攻略対象くんと旅の途中で加入する攻略対象くんとの3人だけで魔王に挑まなきゃならなくなるんだよ!ツライよ!トロフィーゲットのために挑戦したけどマジきっついよ!心が折れるよ!

とは言えこれだけ魔力チート設定のヒロイン達がこぞってこの国にいるんじゃあ、魔王復活だの隣国との戦争だのそんなの関係ねぇとばかりに世界征服すら出来ちゃいそうだけどな!パワーバランス悪すぎんだろ。


でも一応彼女の他にもマトモなヒロインはいるようで、4代目は自由気ままに学生生活を謳歌してらっしゃるし、6代目と7代目のダブルヒロイン達はそれぞれ執心の攻略対象達に一途だ。2代目なんかはどこで何をしてるのか完全にステルスしてるし、クイズヒロインはこの間王子と(悪友)と一緒にすれ違ったら「俺様美形王太子×地味系薄幸悪役令嬢兄…ふふ……ぐふふふふ……」って呟いてたからあいつは腐女子枠だな。あれ、マトモかこれ?ちなみに悪友はgkbrしてた。


そんなワケで歴代ヒロイン大集合しちゃってどこの劇場版だよってツッコンでしまったのも今は昔。

彼女達は どうせシナリオ通りに行けばバッドエンド一直線な悪役令嬢 よりも、もっと厄介な自分以外の他の女(ヒロイン)を敵認定してロックオンしたのだった。それはもう見事な足の引っ張り合いでございます。ええ、ドン引きですとも。

あんたらそれちょっとヒロイン補正じゃどうにもならんよ?と悪友と2人でアバババと醜い争いを見守っていたのだが、ふとこちらに視線をやっていた王子と目が合った。


トゥンク……なぁんてしてないからね!?ホントダヨ!!



「ステラ!」



フッと微笑みこっちに近づいてくる王子。ヒロイン達は全く気付かずにお互いを罵り合うのに夢中だ。

ちょ、ちょっと悪友!背中押さないでよ!ニヤニヤ笑ってんじゃないわよ!あんたなんか腐女子クイズヒロインにネタにされてしまえ!あっでも相手は王子以外にし、しなさいよね!?



「ステラ、特に何か用事が無いのならカフェテリアにでも行かないか?今日から新作のケーキが出されてる筈だ。好きだろう?」



私が断るわけが無いと思っているのか自信満々の笑みで腕を差し出してくる王子。

すぐさま特大サイズの立派な猫ちゃん(淑女仕様)を身にまとい、私はにっこり微笑んでその腕に自分の腕を絡ませた。……顔が熱いのは気のせいよ。



「ええ、レオ様。喜んで」





end

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[一言] ヒロインズ……まぁ一部除いて頑張れw
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