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6章

次回投稿は土曜日予定(未定)です



「姫、よろしいか?」


 ギルハルトの訪問の声に、ラナが応えて扉を開けた。



「どうぞ、ギルハルトさま。」


「謁見室までご案内しようと思って来たのだが、準備は済んでいるかな?」



 リシュベリーを父王の元まで案内すべく貴賓室へとやってきたギルハルトは、国王へ挨拶するために着替えを済ませたリシュベリーを見て言葉をなくした。



 そこには今まで見て来た普段着の彼女でも、夜会で見るドレス姿の彼女でもなく、謁見のためのデルタ王国の正装を纏い、長い銀の髪をゆるく数種類のリボンと共に編み上げ、凛とした姿で立つデルタ王国、リシュベリー・リアラ・デリテル王妹姫がいた。


 デルタ王国の正装は森の緑と実りの赤を主体とした目にも鮮やかな色で、その姿はまるでデルタ王国の母と呼ばれる初代女王を思わせた。

 リシュベリーはその初代女王と同じ、新緑の瞳と白銀の髪をして産まれてきたため、【先祖返りの姫】【初代女王の生まれ変わり】とも言われて育ってきていた。



「ギルハルトさま、どうかなさいました?」


 呆然と立っているギルハルトを訝しみ、眉を寄せて言うリシュベリーの声に、我に返ったようにギルハルトは跪いた。



「ギルハルトさま??」


「我が君は、どれだけ俺の心を奪えば気が済むのか・・・


 今までも美しい君の姿にどれだけ見惚れたかわからないが、正装の君は今までとはまた違った、凛とした神々しい美しさを醸し出してくれるね。


 我が愛しの姫、君のどんな姿も仕草も声も、全て俺のモノにして誰にも見せずに閉じ込めてしまいたいよ。」



 そういって、リシュベリーの左手の甲に口付けを落とした。

 そんなギルハルトの言葉に、リシュベリーは薄いピンクの頬紅以上に顔を赤くして言う。



「ギ・・ギルハルトさま・・・恥ずかしいことおっしゃらないでくださいませ!」



 リシュベリーのそんな反応に、もう一度手の甲に口付けをしてギルハルトは


「相変わらず我が君は照れ屋だ。

そんな君も可愛くて愛おしいよ、麗しの姫。」



 と言ったのだった。







 謁見室にリシュベリーが入って来た時、カインハルトはデルタ王国の伝説にある、森の女神が現れたのかと錯覚したと後々兄王子に感想を語っていた。

 余りの神々しさに、ジッと見てはいけない気がした・・と。



「このたびは突然の訪問にも関わらず、快くお招きくださいましてありがとうございます。


 デルタ王国国王ベルオットが妹、リシュベリー・リアラ・デリテルにございます。


ジオラル陛下にはご機嫌麗しく。」



 大陸でも一、二を争う大国の姫らしく物怖じすることなく、優雅に礼をとり挨拶をするリシュベリーの姿に、ジオラル王を始め謁見室に控えていた王妃、カインハルト王子、そのほか元老院の長老たちは目を奪われていた。


 リシュベリーが自国を出て他国を訪問するのは、生まれて初めてのことである。



 デルタ王国国王ベルオット王が掌中の珠として目の中に入れても痛くないほど可愛がり、両手では足りぬ数の縁談全てを断り続けた噂の妹姫。


 舞踊・楽曲・学問の各分野の家庭教師を招き、王位継承権を持つ者として幼少の頃より有事のための努力を惜しまぬ才媛。


 それでいて、我を通すことなく常に控えめで温厚な王女。


 デルタ王国を訪問した際に彼女を見た者達の噂だけが飛び交い、所詮は尾ひれが付いた噂とばかりに皆話し半分に聞いていた。


 だがしかし、実際に今目の前にいる彼女は噂以上に光り輝く美姫であるのか・・・



「これはなんとまぁ・・・噂に違わず、いや噂以上にお美しい姫ですな。」


「これでは他の姫では、ギルハルト殿下は納得すまいて・・・」


「よほどの姫君でないと、この姫には太刀打ちできますまいな・・・」



 元老院の長老達が口々にそう感想を述べているのを尻目に、ギルハルトはいつものようリシュベリーを愛おしそうに見つめて


「俺は別に、彼女の見た目だけで好きになったわけじゃないんだが・・な。」


 そう呟いた。






「うむ、良くぞ参られた。兄王家族は皆ご健勝かな?」


「皆様お健やかに過ごしておいででございます。」


「姫には初めてお会いするが、今は亡き父君とベルオット陛下に目元がよく似ておいでだ。


 姫の国と我がリンガ国は長く親交のある友好国、自国と思われて過ごされるがよかろう。」


「ありがとうございます。陛下のご好意に感謝いたします。」



 そうやってもう一度優雅に礼をとり、リシュベリーの初めての他国訪問の謁見の儀はその場にいた人々の脳裏にその姿を焼き付けて終了したのだった。



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