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5章

今日も2話投稿します



 リンガ国王宮の一室に国王ジオラルと王妃ナーシャ、そしてギルハルトの弟で第二王子のカインハルト、さらに侍従長、女官長が揃っていた。




「ギルハルトはまだか?

まったく、あやつは何を考えてこのような事を・・・」



 イライラと椅子の肘掛を叩く国王を王妃が宥めるが、そんな父王の言葉にカインハルトは呆れたように応える。




「兄上の独断先行なんて今更じゃないですか、父上。


とりあえず既に済んだことはこの際置いといて、これからのことをどうするかが問題なのでは?」



「わかっておるわ!!

ベルオット王もベルオット王だ・・・今まで散々渋っていたものを、今更あっさりと承諾してくれようとは・・・嫌がらせとしか思えんぞ!!」



「まぁベルオット王の思惑はどうであれ、今まで兄上がリシュベリー姫以外とは絶対に結婚しないと言い張っていた以上、父上や元老院のご老人たちの思うようには簡単に行かなかったと思いますが?」



「お前はいちいち・・・・誰に似たんだ誰に!!」




「母上です。」

「私でしょう。」



 カインハルトどころか、長年連れ添っている王妃にまで言われガックリしたジオラル王であった。




「とりあえず陛下、ギルハルトと共にリシュベリー姫がいらっしゃるのはもうどうにも動かせぬ事実として捉えられませ。


 陛下が許可せぬ限りは、まだ公式には二人の婚約は認められませぬ。


 陛下が婚約を許可するか、ギルハルトを説得してリシュベリー姫を帰されるかは、陛下とギルハルトとで話し合って決めなさればよろしいことではございませんか?


 その間、リシュベリー姫には表向き友好国である我が国へベルオット陛下の代わりにご機嫌伺いに参られたということに・・・

 王妹殿下ならば名代としても申し分ありませんから、何も問題にはなりますまい。」



 王妃にどんどん決められてしまい、自分はいったいこの国のなんなのだと思うジオラル王なのであった。







 王宮へと続く街道を馬車と共に数頭の馬が並走していく。その中の一頭に乗るギルハルトの姿を街の住人達が目にした瞬間、親しげに皆が皆、声を掛けていった。



「ギルハルト様、お帰りなさい!

いい魚入ってますよー!!」


「それは美味そうだな。

王宮に届けておいてくれ、晩餐に出させよう。」



「ギルハルトさまー、お帰りなさいー。

新しい糸が手に入ったんで、また見に来てくださいよー。」


「あぁ、また後日な。」



 そんな街の住人とギルハルトの受け応えを馬車の中で聞いていたリシュベリーは、外の様子が気になって馬車の小窓を開けて外の様子を覗いてみたのだった。




「まぁ・・・・ラナ、ラナ!

見て、あんなに人も店も賑わって!?」


「さすがはリンガ王国の首都、商業の中心地オレリオですね。

活気が違いますし、品揃えも郡を抜いていると聞いていますわ。」



 滅多に王宮の外に出ることがなかったリシュベリーにとって、国外の商店街、それも大陸随一と呼ばれる商業国家の首都オレリオの街並みは新鮮そのものであった。



「ラナ!あれはなにかしら?


あの花は見たことがないわ。


あの生地、なんて珍しい色なんでしょう。」



 街道のため、ゆっくりと走る馬車の中から、見るもの全てが珍しいとばかりにラナに声を掛けるリシュベリーを、ラナは微笑ましく思った。



 常日頃、王妹であるが故に己を厳しく律し、他者の手本であるべく振舞う姿は王家の人間としては素晴らしいと思う反面、素のリシュベリーはもっと伸び伸びとした輝いた姿をしているのにと歯がゆく思うのである。




「我が君にはこの街を気に入って貰えたようで何より。」


 馬車に馬を近づけて、ギルハルトはリシュベリーに向けてそう言った。


「物珍しくはしゃいでしまいまして、申し訳ございません。」


 子どものようにはしゃいでいた自分が恥ずかしく、顔を赤らめて答えるリシュベリーに、ギルハルトはスッと目を細めて否と言った。



「君が喜ぶ姿を見れて、俺は今とても幸せですよ。

その内、街まで遊びに連れていきましょう。」



「まぁ、街に出れるのですか?本当に?」


「もちろん。君には護衛を数人つけることになるが、普通に王宮から街へは出てこれる。

 ベルオット王は君が可愛すぎて王宮の外へは出していなかったみたいだが、俺は君を民に見せびらかしたいんでね。」



「先祖返りと呼ばれている私の容姿は、多国籍情緒溢れるこの街でも珍しく映るでしょうか?」


「あの、姫さま・・ギルハルトさまがおっしゃっているのは、そういう意味では・・」



 リシュベリーの答えに、クックッと笑うギルハルトを見て、ラナは思わずそう呟いてしまったのだった。



「ギルハルトさま、どういう意味ですの?」


「その話はまた後で、ほら。もうすぐ王宮です。」



 そう言われて馬車の進行方向に目を向けたリシュベリーの目に映ったのは、デルタ王宮とは違った造りのとても大きな城であった。


 それはまるで、空に羽ばたこうとしている大鳥の両翼のように、左右対称の質実剛健な建物であった。



「まるで要塞のようですわね。」


「当たりです。この王宮は有事には要塞となるべく建てられた、機能性重視の城でね。


デルタ王宮の優美さとは全く違う造りでしょう。」



 城壁を通り抜け、馬車は城の入り口近くまで寄せられた。

 ギルハルト達が乗っていた馬はすぐに厩舎へと従者達が連れて行き、ギルハルトは恭しく馬車の扉を開けてリシュベリーへと手を差し出した。



「ようこそ我がリンガ国へ、麗しの我が君リシュベリー姫。」







 リシュベリーを貴賓室へと案内した後、ギルハルトは父王に帰国の挨拶をするべく謁見室へと向かっていた。


 リシュベリーは一旦湯浴みと着替えを済ませたあと、国王に訪問の挨拶をする予定になっている。



「父上、母上。ただいま戻りました。」


 謁見室で待っていた両親と、その横で控えるように立っている弟王子を一瞥した後、ギルハルトは恭しく一応の挨拶をする。



「ギルハルト・・・そなた自分が何をしでかしたのかわかっておるのか!!


 一つ間違えば、彼の国との友好関係に問題が起こるだけでなく、戦争にも発展してもおかしくない事態なのだぞ!!」



「ベルオット王の承諾がある以上、別に友好関係にも何も問題はなく、戦争も起こりようもない。


 ベルオット王からは親書も一緒に頂いてお渡ししたはずですし、何かそれ以外に問題でも??」



 悪びれた様子もなく言う息子に、頭痛がしてくるジオラル王であるが、王からすれば問題は他にも山積みなのである。




「問題だらけじゃ馬鹿者!!


 お前にはデザール皇国の姫の一人か、ミヌ王国の貴族の娘を娶らすつもりで候補の姫たちに打診しておったのだぞ!!


それを勝手に婚約を決めてきましたではないわ!!!


 そもそも、元老院の長老達の許可もなく、そなたの婚約が決まるわけがなかろうが!!!


大体お前はいつも・・」



 いつまでも続きそうな父王の怒声にも怯むことなく、ギルハルトは飄々とした態度で父王の前に何食わぬ顔で立っていた。




「お言葉ですが父上、俺はこの5年間ことあるごとにずっと、結婚相手は彼女以外に考えられませんと申してきたはずですが?


 度々出ていた縁談も全て断りましたし、元老院のじじぃ達にもそう言ってあります。


 王位を継ぐのに彼女が妃ではダメだというならば、王位もいらぬと確か父上に宣言したはずですが?」



 この国の王になるよりも、リシュベリーとの結婚のほうが大事だという息子に益々頭痛がしてくる国王である。



「えぇい!もうよいわ!!勝手にせい!!!!」



「もちろん勝手にさせていただきます。


 あぁ、後ほどリシュベリー姫がご挨拶に伺うとのこと。

 彼女の余りの美しさに、父上、手を出さないようにしてください。

彼女は俺のモノですから。」



「出すかバカモノ!!!!」




 笑いながら出て行こうとするギルハルトに、今まで国王の横に座って話を聞いているだけだった王妃がギルハルトに声を掛ける。


「なんです、母上?」


「姫に、後日私とお茶を飲みましょうと言っておいてちょうだいな。」


「伝えておきましょう。それでは失礼いたします。」




 ギルハルトが出て行ったのを見送ったあと、王妃とカインハルトは口を揃えて言った。


「父上」

「あなた」


「「遊ばれすぎです。」」


「やかましいわ!!!」




もっとこう・・・王様いじりたいと思ったけど、いい会話が思いつかなかったのでした。

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