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世界はそれを愛ではなく、ストーキングと呼ぶ

 番外編第2話もお読み下さり、ありがとうございます!( ;∀;)

 イルファン伯爵邸につくと、足音や息づかいなどで気づかれぬよう、自分に音消しの魔法と人の気配を関知する魔法をかけた。身辺警護用に身につけた魔法が、今ではほとんど隠密系の仕事に使っている気がする。


 物陰や空き部屋に隠れながら邸の見取り図を書いていく。ついでに、ナジアス様に命令されていたように、殿下でも忍びやすそうな箇所をメモしていく。

ミレーネ様のお部屋らしき場所にも行ったが、誰もいなかった。部屋の内部を報告用の資料用に写真を撮っておく。ナジアス様が喜びそうだ。


 探索途中、書斎から一人気配を感知した。扉に耳を付けて中の様子を伺ってみる。ミレーネ様かもしれないし。


『カ……ニア公…ボル……キー伯爵………ルキ…シ…爵…ア…ガル………ダルタ…ス男爵……一体誰……の可愛い娘…害そうとした…な?ふふふ……あいつら…泣き顔…観る…は楽…だ…う…なぁ…』

 

 「………」どうやら中にはイルファン伯爵がいるらしい。ここはダメだ。近づいてはいけない場所だ。色んな意味で危なすぎる。地図の中から伯爵の書斎の周囲に大きなバッテンをつけた。



 よし、邸の見取り図はこれでOKだ。何て忍びやすい屋敷なのだろうか。粗方見て回れてしまった。だが、肝心のミレーネ様がいらっしゃらない。外出でもしているのだろうか?

念のため庭の端にいたるまで調べておこう。追加で遠耳の魔法をかける。すると、「はぁ~!」とか、「てやっ!」とか、聞き覚えある女の子の声が聞こえてきた。


 もしや暴漢に教われているのでは!??久しぶりに焦りを覚えた私は、庭へと急行することにした。


 「てやぁっ!」

 「なんのこれしき!はっ!」


 ……確かにミレーネ様は“オジサン”と戦ってはいた。だが、そのお方は…我が国の誇る四英傑のお一人であらせられる“戦場の鬼”こと、ガリウス・ヤジルマ侯爵だった。


 「ミレーネ様は本当に筋がいいですな」


 「そ、そんな事ありませんわ!ヤジルマ侯爵がお強すぎて私など、足元にも及ばず恥ずかしい限りですわ」


 頬を染め、眼をキラキラと輝かせヤジルマ侯爵を見つめている。恥じらう姿も愛らしいの一言につきる。写真はもちろん撮っておいた。ヤジルマ侯爵抜きで。


 「今日は急にお呼び立てして申し訳ありませんでした。稽古をつけて頂いておいて、なんなのですが…あの…貴方様にお願いがあるのです…」もじもじ


    パシャッパシャッ

 音消しの魔法はかけたままなので、外部にはシャッター音は一切聞こえない。ナジアス様用に隠し撮りをする。ナジアス様もこれで恋わずらいから立ち直ってくださると良いが。


 「ほう、何でしょうか?」


 「こ、これからも私に稽古をつけて下さいませんか!ぜひ師匠と呼ばせて頂きたいのです!!」

 ミレーネ様は眼をつむり、一息で言い切った。よほど勇気を振り絞って告げたのであろう。お顔がさらに真っ赤にそまっていらっしゃるし、拳はプルプル震えている。


   パシャッパシャッ


 「何だ、そんな事でしたか」


 「へっ?」


   パシャッバシャッバシャッバシャッバシャッ

 うつ向いた顔からの涙眼上目シフトアングルGET 。


 「むしろこちらから御願いしたいくらいです。ダイヤの原石のお嬢さん。私に貴方を磨かせてくれませんか?」


 「ヤジルマ師…「ガリウスとお呼びください。ミレーネ様。私の弟子となったからには容赦はいたしませんよ?」はっはい!よろしくお願いします!ガリウス師匠!!」


 感極まって侯爵に抱きつくミレーネ様。


 「おやおや。甘えるのは今日だけですよ?」

 孫を見るような穏やかな眼を向けるヤジルマ伯爵。

   バシャッ………あ、これはまずい。この写真はお見せしてはならない奴だ。魔法で消してしまおう。「一番新しい写真のみ消え失せたまえー。我が過ちを消したまえー」イメージを抱きながら呪文を唱える。よし、写真は隠滅できた。


 そして私は、稽古後もミレーネ様の後をこっそり付いていき、その日の行動を逐一記録した。



 お城に戻ると、ナジアス様が仁王立ちでイライラしながら私の帰りを待ち構えていた。

さらに『まだか、まだなのか。早く渡せ』とウロチョロとまとわりついてくるので、急いで報告書をまとめあげ、写真付きで提出し、報告を述べる。


 「…と、まぁ、このような一日をミレーネ様はお過ごしになられておりました。あっ、あと四英傑のヤジルマ侯爵との稽古は毎週末に行われるとの事でしたよ。その日であれば、ナジアス様でもこっそりと覗き見る事ができるでしょう。………?…ナジアス様??いかがされたのですか?」


 報告書を握る手がなぜかプルプルと震えている殿下。でも、顔は笑っている。そして鼻血がたらりと床に垂れ落ちた。

 

 (…怖い。あらゆる意味で恐ろしすぎる)

 ブルッと寒気がして、自然と身体が一歩後ろに下がる。防衛本能というものだろうか。


 「…アレクセイ、よくやった」


 「…ありがとうございます」

 私はナジアス様にハンカチを差し出すと、また脚が勝手に一歩下がってしまった。まだあの変な笑みを浮かべていたからだ。従者としては行うべき行動ではないだろうが、なんて正直な身体なのだろうか。

 

 「アレクセイ、この調子で明日も頼むぞ」


 「え…は、はい。畏まりました」

 (げっ、また明日もやるのか…)


 ナジアス様はミレーネ様の写真をポケットにしまいながら次なる命令を下してきた。そんな事よりも早く鼻血を拭いて欲しい。


 「…だがな、アレクセイ。報告書にしては“物証”が少ないと思わないか?」


 「………大変申し訳ありません」


 「…まぁ、今回は許すとしよう。お前は大事な従者であると共に、私の唯一の友であるからな」


 「ありがたき幸せにございます」

 何故だろう。心の底からそう感じれないのは…。


 「明日の報告も楽しみにしているぞ。今日はもう下がってよい。私にはやることがある」


 「はっ!では、御前を失礼させて頂きます」


 やっと気づいて下さったか!

この3日間ナジアス様は恋の花占いに身をかまけていたせいで、やるべき事が山ほど溜まっているのだ。

それでなくとも、帝王学を始め、他国の言語やしきたりにいたるまで、様々な事を勉強されなくてはならないのだ。いくら御身がまだ幼いとはいえ、ナジアス様はこの国の第一王子であらせられるのだから。


…なのに、母上やメイド連中は『ナジアス様をそっとしておいてあげましょう』と、生暖かい眼で見守っていた。

 筆頭執事にも相談してみたが、『初恋とは身を焦がす青春なのだよ』と、私に延々と自身の過去の叶う事の無かった淡い初恋について語られてしまった。

その結果、もう誰にも相談しまいと私は誓った。


 だからこそ、ナジアス様がご自分で気づかれたようで、本当に良かった。

正妃のただ一人の実子である第二王子のセントバル様より劣っていては、今の地位から簡単に蹴落とされてしまう。王城とはハイエナの巣窟のような場所なのだから。

 現王様も、3人のご兄弟との壮絶な権力争いの末に今の地位にいらっしゃる。


 安心した私は自分の部屋に戻り、先程の命令の中にあった“物証”について考えてみた。ナジアス様の仰る“物証”とは…もしや……。



 次の日、私は初めて人様のお屋敷で盗みを働くはめになったのは、また別の話である。

 あともう1話、潜入編続きます!(*^▽^)/*♪


 残念ながら、アレクセイ君の受難はまだこれからなのでした(-∀-;)

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