ナジアス様の恋わずらいの結果
もう一度言いますが、これは『ヤンデレ系乙女ゲームのヒロインになってしまった…(泣)』の番外編です。
第一章ゲームのプロローグ部分から第二章のゲーム本編に入るまでの、空白の11年間を、ナジアス殿下の従者アレクセイ視点で描いた物語です。
初めてシリーズを読むの方はくれぐれもお気をつけくださいませ!(;・ω・)
「なぁ、アレクセイ。俺はちゃんとミレーネ嬢と愛を育めているのだろうか?」
カーペットの上には赤い薔薇の花びらが散乱していた。ナジアス様が何度も花占いをした残骸だ。
いったい誰が掃除するというのか、少しは考えてほしいものである。
「私にはわかりかねます。私に恋だの云々がわかるとお思いですか?それに、まだ3日しか経っていません。育むも何もないのでは?」
ナジアス様にとっては酷な言い方かもしれないが、そういう言葉しか出てこないだから仕方がないのである。
実は、私には恋とか愛というものが理解できない…というよりも、知らないと言うべきだろうか。
幼い頃から母は殿下のお世話に係りきりで、私は執事やメイドに育てられた。子爵の父は仕事で城に入り浸っていた。両親とも王城にいるので、物心ついた頃には、食事という行為は一人でとるのが普通の事だと思っていた。
育ての親にあたる執事やメイドは、主の子息である私に親しくしすぎてはならず、距離もとりすぎてはならないという、事務的な教育の環境を貫いた。
だが、ある時を境に私の環境は一変した。
5歳なった頃、礼儀作法、勉強全般の家庭教師をしてくれていた執事頭のセバスチャンから、母上の元に行くように言われたのだ。
母上を訊ねていった所、どうやら私を第一王子のお世話係の一人にしようとしたらしい。こんなに早く従者にするつもりは元々なかったらしいが、どうやら私は知能が高いらしかった。一度見聞きしたものは忘れないし、また、情報処理能力にも長けていた。殿下と同い年なので、遊び相手にも従者として最適だそうだ。
ナジアス様の第一印象は、傲慢な王子だと思った。乳母である母上の愛情を一心に注がれていたり、周りからチヤホヤもてはやされて育てられている。それを当然のように思っているのだから。
私の欲しいもの全てを手に入れておきながら、その大事さに気づいてもいない。
でも、だんだんとお世話をするうちに可哀想な人だとも思うようになった。
周りがナジアス様を甘やかすのは、彼の母親が病気がちで、もう永くないからだった。第一王子の身体に何かあってはいけないと、息子なのにたまにしか会わせてもらえないまま、昨年、ナジアス様のお母上が亡くなった。彼が本当に欲しいものはもう手に入らなくなったのかもしれない…。
………っと、思っていたのに、つい先日会ったばかりの幼女にナジアス様は恋をされた。“会えない時間が愛を育む”とは、ミレーネ様もなかなか酷な事を仰る。
やっと出会えた好きな相手に、お母上の時と同様、いや、それ以上に会うことを禁止されたのだから。だが、それで引き下がるようなナジアス様ではなかった。
「まだ3日しか経っていないのか…。よし!アレクセイ、お前に任務を与える!ミレーネ嬢の様子や日常の行動を視てレポートにまとめて提出するのだ。こちらから会えないのなら覗き見れば良いことだ!頼んだぞ!」
やはり、ろくなことは考えていなかった。私は自身が、従者というよりもナジアス様お抱えの隠密な気がしてならない。なぜかは知らないが、私は気配を消すことが得意だ。独りきりでいた事もその要因になったのだろうか?
先日も、弟君であられるセントバル様がミレーネ嬢と二人きりで話したいと仰られた時も、『お前はここに隠れて監視していろ』と目線で命令された。
もう慣れたものである。
「承知しました」
私生活を覗き見られるミレーネ嬢を不憫に思いつつも、私は紙とペンとカメラを手にして彼女の元へと向かったのであった。
11年間の彼らの行動を色々と書きたくて書いてしまいました(^_^;)
本編も引き続き進めていきたいと思いますので、お付き合い頂けると嬉しいです!m(_ _)m