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~本題に入る前にversion1~

ありふれた日常を生きてきたつもりでいた。

私も、私の周りの人々も。

私は普通の女の子で、私は親に従順で、私はありふれた一人の女の子で・・・。


そんな私の本当の姿はいつも冷たい洞窟の中で特定できない形で

まるでそれは鍾乳洞のようにかすかに、かすかに成長していっているようだった

だれも知らない暗闇の中で・・・


第一主人公

川上 温子(かわかみ はるこ)


私は〝はるこ〝。川上温子。私のお母さんは働き者のガンバリ屋さん。私のお家は小さな町の市営住宅。私の夢はお母さんが言う様な幸せなお嫁さんになること。私はいつも一人でお母さんの帰りを待っていた。

3~4才の時かな。お母さんが急に私を車に乗せておばあちゃん家に行ったのは。私は夜のお出かけが好きだったから、なんだか知らないけどお出かけするのかと思っておばあちゃん家に着いてからお泊まり気分でなかなか落ち着かなかったことを覚えてる。夜の車の中の匂いってわかりますか?私はあの使い古した落ち着くシートの匂いと夜のひんやりしたお外独特の匂いが子供の頃の私にはありふれた特別で好きだった。

それからしばらくして、おばあちゃん家の暮らしにすっかり慣れた私。保育所もおばあちゃん家から通ってなんとなくもうお父さんのいたお家には帰らないんだろうなと子供ながらに思ってたっけ。お母さんは帰りが遅いから朝はおじいちゃんが保育所に送ってくれたけど、帰りは暗くなるまで保育所で待ってた。お母さんは私のこと色々考えてくれてたみたいで、二人でも色んなところにお出かけしたけど、私はもうその頃の思い出は覚えてないからあまり細かいことは綴れない。悲しい。それからちょくちょく私の記憶に出てくるのは新しい父の姿だ。でも、私は彼がはっきりと私の前に現れたのは小学校低学年の頃だと思っているのに対して、現実ではもっと前、保育所の卒園式の頃にはいたようで、曖昧な記憶が揺らぐ。

つまりは、私の記憶は確かであって確かでない。私は父と母の離婚をきっかけに記憶があやふやになってしまった普通ではない女の子なのである。

おばあちゃん家で一番怖かったことは、おじいちゃんと誰かが喧嘩してることだった。おじいちゃんは怒ると暴力を振るう人だった。私は犬のようすけとソファーの陰に隠れていつもびくびくしていた。ようすけは私が生まれたのと同じくらいにばあちゃん家にやってきたシーズー犬で、私の兄弟みたいな存在だった。今思えば良く隣で大人しく私と隠れていてくれたなぁと思う。まぁ、私が隠れてるようすけの所に行ったからようすけも一緒にいてくれただけだった気もするけど。一緒に隠れていたのに、私はいつもお母さんに連れられて二階に避難していたから、階段を登れないようすけはいつも私を見上げて寂しそうにしていて私も寂しかった。ばあちゃん家のものは大抵防虫剤の匂いがして、お化けみたいな木目の天井を見ながら私は寝た。小学校に上がってからもおばあちゃん家にはよく行った。ようすけはいつも私の傍でごろごろしてて、私はいつも絵を描いたりテレビを見たりしてばあちゃん家で暇つぶしをしてた。その頃はあまり深く考えてなかったけど、お母さんは土曜日とか日曜日も仕事してたんだな。私は寂しがり屋のばあちゃん子になっていった。

一方、ばあちゃん家から出て市営住宅に引っ越して小学校に通うようになった私は、お母さんの帰りが遅いせいでカギっ子生活だったからもっと寂しがり屋になった。週末は必ずばあちゃん家に行ってばあちゃんとじいちゃんとおじさんとお買い物に行ってち○おとか買ってもらった。そんで、お母さんの迎えが来るまでに付録を組み立てて遊んで、帰ったら一週間かけてそれを熟読。平日は宿題を帰ったらすぐ終わらせて、好きなことを飽きるまでして、お風呂を洗って時計を確認してからポテトチップスを食べながらテレビを見て一人で笑ってた。お母さんが帰ってきたら夕食のお手伝いをしてお風呂を沸かしてごはんを一緒に食べて、大抵は一人でお風呂に入る。お母さんが独り占めできても一人の時間が多すぎて、私のお母さんとの記憶は一人の時間に喰われていってしまった。

その後、新しい父と再婚したお母さんと一緒に引っ越して、新しい学校で、新しい家で、生活し始めた。

いちいち文字にするのも、思い出すのもめんどくさいくらい私は新しい生活の中でちょっとした不満数え切れないほどを溜めていった。でも、みんなの前では普通の女の子。両親の前では聞きわけの良い子供。誰が見てもどこにでもいる一般市民。将来も簡単に想像できるような、表面的にはそんな子供に私は育っていった。


私だってほんとはそのままの普通の人で思い違いで自分を何か特別な人間に思ってるだけなんじゃないかなってよく思うんだけど、やっぱどうしてもわかんない。


普通っていうのが


決定的私の異常は初恋の相手にあった。

中学入学後一年が経って、中学二年生になった私は同じクラスになったある人に運命的なものを感じてしまった。自分でもわからないけど|『この人だ!』って思った。

自分でもよくわかんないけど、この人はなんか特別な気がした。

よくわかんないけど、私の気持ちがこんなに揺れ動いたのは初めてだったから、私はとりあえず私の気持ちに従順になった。



中学二年生の春。私はある女の子に恋をした。

春だから恋に落ちたんじゃない、あの子が春だったんだ。春に落とされたんだ。






夢と混じった記憶の中にあの子が出てきて離れない

私と周囲の見えない溝に春が現れ花が咲く

花に囲まれ見た夢は私を通して実現し

春がとうとう振り向けば私は・・・






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