2ポテ
ホテルTOMATOで僕らは抱き合っていた。最近は人のぬくもりに触れていないと気がおかしくなりそうだった。
「君を愛してると言ったらどうする?」
僕はタバコを吸いながらシーツとからみあって横たわる彼女に聞いた。彼女の肌はとてもきれいで、それはなまめかしい大人の女性の肌と言うよりも、新鮮なトマトが太陽の光を浴びているようなみずみずしさだった。
「あたしたち、付き合ってるわけじゃないでしょ?」
「たとえばの話だよ。僕が君を愛していて、君を大事にしたいという気持ちをもってるとしたら、どんなふうに思う?」
彼女は寝返りを打ち、しばらく僕の方を見つめながら微笑した。
「そうね、今裸で外に飛び出して、愛してるって叫んだらあたしも愛してあげるかも」
僕は苦笑した。
「君を愛するのは結構ハードルが高いことみたいだね」
「あら、そんなことないじゃない?ただ今言ったことをするだけよ?」
僕は立ちあがって彼女のそばに座り、愛してる、と言ってみた。
「だめよ。ちゃんと外で叫ばないと。全裸でね」
「それはここで君にささやくのと何が違うんだい?」
彼女は顔をそむけた。
僕は彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。いつものことだが、一見落ち着いたように見えて気難しいところがある。僕は洗面所に顔を洗いに行った。
人に愛されるというのはどういうことなんだろう。彼女が僕を愛してると言ったら愛してることになるのだろうか。僕はその言葉がほしいだけだろうか。
壁側に体を向ける彼女の横に再び腰をおろし、訪ねた。
「たとえば、たとえばだよ?もし君が僕を愛するようになったら、何をしてくれるの?」
彼女はしばらくなにも言わなかったが、僕の方を向き直って言った。
「『これ』をあげるわ」
「これって?」
「わからないならいいわよ」
僕もいい加減疲れてきた。
もうそろそろ帰ろう。服を着、お金だけ置いて黙って外へ出た。
いつものことなのだ。