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1ポテ

 仮にきみの小世界をきみがポテトでしか表わせないとしよう。きみはきみの世界がポテトであることをひどく軽蔑するのかもしれない。ポテトでしか表わせないのなら表わさないほうがましだと思うかもしれない。

 

 しかし考えてみたまえ。逆にいえば君の世界には確固としてポテトが存在するのだ。これは喜ぶべきところである。きみがうれしいときポテトもうれしいし、きみが悲しいときポテトもまた悲しんでいるのだ。そんなポテトがきみの小世界に存在することをよろこぶべきなのだ。


                     ○


 「芸術性が人を救ってくれると思うか?」

 僕が尋ねると彼は興味なさそうに目を細めた。

 「さあね。ただ意味が無いとは思わないけどな」

 「じゃあどんな意味があると思う?」

 「どうかな。そんなことはあまり考えてみたことがないしな。時間をつぶすくらいの意味はあるだろうし、そうしている限り思い悩む隙を与えないで済むんじゃないか」


 駅前の喫茶店POTETOには日曜日のせいかやたらと人の出入りがおおく、あまり雰囲気を楽しむ気分にはなれなかった。そのうえ彼はあまり機嫌がよくないらしく、脂っぽいサンドウィッチをむさぼってからはずっと煙草を吸ってはもみ消した。

僕のアイスコーヒーは氷が溶けてやたらと薄まった。

 

 ここのところ僕は芸術や創作に何か期待していて、それが形になることをとても望んでいる。しかしそれが正しいのかはわからないし、結局は思い込みかもしれない。

 「僕は人生に理想を求めすぎかな?」

 「希望を持ちすぎるなと言う人も確かにいるよ。でも期待をもたない人生って人生と言えるかどうか」

彼はまた一本煙草を灰皿に押し付けて消し、外を見た。


 「あそこに噴水があるな。滝に近い形をしているが。創作者がわくわくしなかったらあれは作られなかったろうね。もっと平凡で形だけの噴水を取り付けただけだっただろう。創作者が人にどう見られるか、どう楽しませられるか、どんな名誉が自分に飛び込むか考えた結果があれだよ。理想に邁進しなければ当然平凡なものしか作られない。」

 

 「理想への期待とそれを創作する力が必要になるのかな」

 「理想は創作のモチベーションだよな。質のいい理想を持ってさらに表現する創作力を身につければ自分の人生くらいは救えるんじゃないか。」


そういうとアイスコーヒーに口をつけた。何か考えを練り直しているように見えた。


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