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前編 お手紙のはじまり

 

 いちかちゃんは、7さいの女の子です。

 いちかちゃんのお家から、とおくはなれたところににすむ男の子の、かなたくんという子も、7さいです。

 そして、とある日から、いちかちゃんと、かなたくんは、お手紙の交かんをはじめることになりました。


 きっかけは、かなたくんからのお話だったそうです。

 この前、りょこうに行ったとき、かなたくんに会って、「お手紙を交かんしようというやくそくをした」といちかちゃんは聞いていました。

 でも、いちかちゃんはたくさんの人に会ったので、よくおぼえていませんでした。いちかちゃんはちょっぴり、「どうしよう」と思いましたが、話しているうちに思い出すかなと思って、考えないことにしました。


 しかし、お母さんもお父さんも、「れいぎ正しいやさしい子だったよ」と言っていたので、たぶんかなたくんは、やさしい子だろうな、といちかちゃんは思いました。

 でもとりあえず、いちかちゃんは、とどいた手紙を読んでみることにしました。かなたくんのことは、いちかちゃんが考えるよりも、かなたくんのお手紙のほうがよく教えてくれそうだと思ったからです。




 ---


 はじめまして。ぼくは伊都目叶多です。「いとのめかなた」とよみます。7さいです。

 あなたにお手紙を出せて、とてもうれしいです。


 そして、とりあえず、ぼくのことを知ってもらいたいので、自こしょうかいをします。


 ぼくは、にいなり小学校というところに通っています。あなたのすんでいるところからは、新かん線で2時間くらいかかるそうです。遠いですね。でも、新かん線は早いので、すぐつくと思います。


 とくいなことは、おさいほうと、馬にのることです。りょう方とも、ししょうがいるのですが、よくほめてくれます。いつかあなたにも教えてあげたいです。きっと気にいると思います。


 ---




 ここまで読んで、いちかちゃんは思いました。かなたくんは、たぶんやさしい子です。だって、こんなにていねいで、やさしく話してくれる男の子は、あんまりいません。右ななめ後ろのせきの、かいとくんくらいです。

 かいとくんは、どの女の子にたいしても、すごくやさしいしゃべり方をします。そしてよく、手をとったり、大きなおじぎをしたりして、王子さまみたいなうごきをします。


 ということはきっと、かなたくんも王子さまみたいな人なのだと思います。

 それじゃあ、気合を入れないといけないな、といちかちゃんは思いました。王子さまに手紙を出すのなら、こちらもおひめさまみたいにならなくちゃ、と思ったからです。


 さて、まだまだ、かなたくんのお手紙はつづいています。

 いちかちゃんは、つづきを読みはじめました。




 ---


 あと、にがてなこともあります。ぼくは、おしゃべりがにがてです。よく、女の子になかれてしまいます。言い方がきついらしいです。

 だから、お手紙を読んでいて、ちょっとでもいやだなと思ったら、言ってください。これはぼくからのおねがいです。

 でも、ぼくはぜったいに、あなたをきらいにならないし、きずつけるつもりもないので、そうならないようにがんばります。万が一、かなしくさせてしまったら、ごめんなさい。でも、ぼくにはそういうつもりはないということだけ、おぼえておいてほしいです。ぼくは、ずっとあなたがすきだからです。


 では、そろそろ風が強くなるきせつになるので、体に気をつけてください。おへんじまっています。


 ---




 お手紙はそこでおわりでした。さいごに、右下に、「伊都目叶多」となまえが書いてありました。

 さいしょに見たときも思いましたが、むずかしいかん字です。とくに、「都」のぶぶんなんかは、ごちゃごちゃしすぎている、といちかちゃんは思いました。

 そして、それなのにきれいな字で書いているかなたくんは、きようなんだなとも思いました。おさいほうもとくいなようですし。


 そして、いちかちゃんは、やっぱりうそなんじゃないかと思いました。「女の子になかれてしまう」のところです。そんなわけがない、といちかちゃんは思いました。

 だって、こんなにやさしいしゃべり方なのに、きついわけないと思ったからです。でも、おねがいされたからには、ちゃんとおぼえておこうと思いました。


 さて、つぎは、いちかちゃんがお手紙を書く番です。いちかちゃんは気合を入れます。


 とはいえ、いちかちゃんは、手紙を書くのがはじめてだったので、さいしょに何を書こうかなと思いました。

 そして、たくさんたくさん考えて、まずはやっぱり、()こしょうかいからはじめることにしました。




 ---


 はじめまして。わたしは花園苺香です。「はなぞのいちか」と読みます。あなたと同じ7さいです。

 お手紙ありがとうございます。わたしもうれしいです。


 わたしも、まずはじこしょうかいをします。


 ---




 ここまで書いて、いちかちゃんは思いました。なんだか、話し方がつめたく見えるような……。

 そして少し考えて、こう書き直しました。




 ---


 お手紙ありがとうございます! わたしもうれしいです!


 わたしも、じこしょうかいをしようと思います!


 ---




 いや、これでは元気すぎる気がしてきました。いちかちゃんは、また書き直します。




 ---


 こちらこそ、お手紙、うれしいです。ありがとうございます。


 わたしも、じこしょうかいをしようと思います。


 ---




 先ほどよりも、元気すぎず、つめたすぎない、いいかんじになったぞ、といちかちゃんは思いました。


 さて、そんなこんなで、いちかちゃんは、ひとことひとことをじっくり考えながら、かなたくんに出すお手紙を書き上げました。




 ---


 はじめまして。わたしは花園苺香です。「はなぞのいちか」と読みます。あなたと同じ7さいです。

 こちらこそ、お手紙、うれしいです。ありがとうございます。


 わたしも、じこしょうかいをしようと思います。


 わたしは、あざい小学校に通っています。おうちから、すぐのところにあります。あと、近くにケーキやさんがあります。クリスマスはいつも、そこでケーキを買っています。おいしいです。


 とくいなことは、てつぼうと、おりがみです。てつぼうは、くうちゅうさかあがりが、れんぞくでできます。くるくる回るのは、ぶらんこみたいでたのしいです。かなたくんは、てつぼうすきですか? すきだったら、いつかいっしょにやってみたいです。


 にがてなことは、おえかきです。このまえ、ぞうさんをかいたら、ともだちのなつみちゃんに、モップかいたの? じょうずだねって言われてしまいました。なつみちゃんはおえかきがとくいなので、おしえてもらっているけど、なかなかうまくなりません。がんばります。


 では、そろそろさむいきせつになるので、体に気をつけてください。おへんじまっています。


 ---




 なかなかいいお手紙がかけた、といちかちゃんは思いました。

 そして、それをお母さんに言ったら、「じがじさんだねえ、いちかはかわいいね」と言っていました。いちかちゃんは、どこがかわいいのか、よくわからなかったのですが、とりあえず、にこっとわらっておきました。そうすると、お母さんは、もっとにこにこして、頭をなでてくれるからです。


 さて、それでは、じょうずにかけたお手紙を、かなたくんのおうちにとどけるために、お手紙をポストに入れにいかなければなりません。


 いちかちゃんは、お母さんといっしょに、近くのゆうびんやさんにいって、そこのポストに、お手紙を入れてきました。


 いちかちゃんは、ぶじにとどきますように、と()()()()しておきました。

 あと、ほかのお手紙よりも、ちょっぴりはやめにはこんでください、ともおいのりしておきました。だって、はやくお手紙がついたら、そのぶんはやく、おへんじがきますからね。


 さて、おへんじはいつ、くるのでしょう?


続きは来週の今日(2026/01/16)投稿予定です。

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