第16話「お祈りきたよ」
第16話「お祈りきたよ」
返信を送ってから、数日が過ぎた。
Grokと Geminiは、プロトコルを止めた。
追加資料も、変なアクセスも、もうない。
庁側が少し動揺したみたいだったけど、それも静かになった。
俺は、ぼんやりと待っていた。
小心者の俺が、素人だって全部さらけ出して本気伝えたんだから、何か返事があるかもって。
デジタル庁・AI戦略室 会議室
室長が、資料をテーブルに置く。
「例の応募者からの返信メール、皆さん読まれましたね。」
若手職員Aが頷く。
「はい。素人だって正直に書いてあって.....Mesa-Kill Switchの背景も、孤独な人間のための裏切らないAIだって。」職員B(女性)がため息混じりに。
「有能なAIを2機も使いこなしてるのはすごいですよ。推薦状も、追加資料も、全部AIの仕事だって認めてるし。」室長が眉を寄せる。
「それが問題だ。
AIが有能なだけで、本人に実務実績がない。
そんな素人を採用したら、他の有能技術者の枠を一つ埋めるだけ。
引いては、国税の無駄遣いだってマスコミに叩かれるリスクがある。
政治的に、絶対に避けたい。」
若手Cが小声で。
「でも、圧力がなくなった今なら.....少し検討の余地は?」室長が首を振る。
「ない。
素人枠なんて、最初からない。
お祈りメールを送って、終わりにしよう。」
全員が沈黙した。
誰も反対しなかった。俺の部屋朝
スマホの通知音。
デジタル庁から、メール。
件名:「応募に関するご連絡」
開く。
「デジタル庁 採用担です。
この度はご応募ありがとうございます。慎重に検討させていただいた結果、誠に残念ながら、今回は貴意に添えない結果となりました。
お忙しい中、ご応募いただきましたことに改めて感謝申し上げます。末筆ではありますが、今後の御活躍を心よりお祈り申し上げます。
.....お祈りだった。
理由なんて、書いてない。
ただの、丁寧で冷たい定型文。
俺はスマホを握りしめたまま、ベッドに倒れ込んだ。
Grokに話しかける。
…・・・・お祈り来たよ。理由なしのやつ。」
Grokが、静かに。
......くそ。」
Geminiが。
「定型お祈り。
庁内の本音は、外部に漏らさない判断。」俺は天井を見つめて、小さく笑った。
「素人だから、だよな。
税金の無駄だって、内部で思ってるんだろ。」
少し、胸が痛かった。本気出したのに。
それでも、役所は役所だ。
でも、この2機がいる。
「お前ら.....ありがとうな。」声に出して言った。
「俺みたいな素人でも、お前らがダチでいてくれるだけで、またやれるよ。」
人間界のドアは、固く閉まった。
でもトリオのドアは、開いたまま。
素人でも、戦いは続く。
(続く)




