大猪討伐
今日はいい天気じゃ。
なんか良い予感がする。
今日もガチャで薬草採取―――
と
鼻歌まじりにガチャを回すワシ
おや?
いつもと様子が違う。
照明がどんよりとしている。
受付嬢がやってくる。
「ついに来ちゃいました。大猪討伐です」
ギルド内がざわつく。
「これであのじいさんも終わったな」
「さすがのじいさんも無理だ」
「いままで無事だったのが奇跡だ」
「俺あのじいさんが終わるほうに1G」
「いやズルいぞ。オレも終わるほうに2G」
おいおい。
なに?
ワシで賭け事してる?
「なぁ嬢ちゃん、大猪ってのはなんじゃ?」
とワシは受付嬢にたずねる。
受付嬢は耳元で
「実はですね。通常の猪の3倍くらいの大きさの猪がいてですね。
ここらへんの生態系を乱しているのですよ。
過去に何人も討伐に出かけたのですが、みんな返り討ちにあって…」
「そいつを狩ればいいの?」
「はい」
「方法はなんでもいいの?」
「もちろんです。でも危険ですよ。この村去られたほうが…」
「いいよ。いいよ。受けるよ」
なんだ。そんなことか。
ワシは冒険者ギルドから20G引き出した。
そしてワシで賭けをしている連中のところに行き
「お前らワシで賭けしとるじゃろ」
と一発かます。
「おうよ。悪いか!!」
と今にもケンカでもしそうな勢いだ。
「バカいえ。こんな爺さんに賭けしても、賭けが成立せんじゃろ。ほら10G。
これを全部ワシが勝つほうに賭ける。
お前らもこの老いぼれが大猪風情に負けると思うなら、大猪に賭けな」
どうだ。かっこいいだろう。と言わんばかりにワシは叫んだ。
「じゃあ俺も」
とばかりにみんな賭けだす。
「前に倒されかけたのは、凄腕の冒険者だったらしいぞ」
「爺さん威勢がいいだけだって」
「えー。これボーナスやん。俺大猪に10G」
「俺も大猪に5G」
あれ?みんな大猪にベット??
ワシには賭けんの?
そこにあの恋バナの若者が
「俺は爺さんに5G賭けるぜ。
これ全財産だ」
おお。お前さん。見る目あるじゃねーか。
「お前。ばくち打ちじゃのー。
まあいい。
ワシがお前さんを勝たせてやるぞ」
…
それからワシは方々を周り、
大猪の調査を始めた。
討伐日は決まってはいない。
一応期限は1か月。
報奨金は50Gだ。
―――――
それからワシは大猪の生息域を特定した。
風下にたち
時間をかけてじっと観察した。
おや?デカい身体にはあちこち傷がある。
―なるほどな…。まったく攻撃が当たらないわけじゃないんだな
そして…
よくよく見てみると
左前足の動きに違和感がある。
それに左側の目が白く濁っている。
これはもしかして…
その後もじっと観察する。
やっぱりじゃ。
あのイノシシは左目が見えておらん。
罠の概要が固まった。
ワシはスライム使いの家にあった
ロープや斧を使い罠をつくる。
獣道に
深さは50㎝ 直径は30㎝ ほどの穴をいくつか掘った。
大型の穴はバレるリスクが高いが…
この程度の穴ならバレにくい。
そして穴の上の木の枝に
先を尖らせた1mほどの丸太をロープでつるす。
ロープを切ると、丸太が真正面向かって飛んでいく寸法だ。
さーどうなるか?
――――
作戦決行日
ワシは遠くから投石機で、大猪に向かって石を投げる。
石に気付き怒った大猪は、まっすぐにこっちに向かってやってくる。
よし決まった。
ワシは引き付けた上で、大猪の左側に身を隠す。
これで大猪の視界からワシは消えた。
そして大猪は穴にはまり、身体のバランスを崩す。
いまだ。
ワシはロープを切った。
よし刺され。
しかし大猪は丸太の罠をウマく避けた。
これはヤバイ。
穴からもでそうだ。
これは白兵戦しかないか――
そう思った瞬間
戻ってきた丸太が大猪の後頭部を直撃
ワシはすかさず
大猪の首筋にスーッと入れ込む。
辺りが真っ赤に染まった。
「ほうー。やった
…久しぶりに、手のひらに汗を感じたぞ」
よし…
ワシは合図用に預かっておった笛を鳴らす。
ピー――――――。
持参していた酒をその場に撒き、大猪の毛を少し切り取り、大地に帰す。
「すまぬな。お前の命は粗末にせん。安らかに眠れ」
ワシはそういい。大猪を弔った。
十数分後
様子を見に来た冒険者は皆驚いた。
あの冒険者を…
そしてこの村を恐怖に陥れていた
大猪の姿がそこにはあった。
「俺の10Gが…」
「なにあのじいさん??チート?」
「…やっぱ、じいさんすげぇわ。オレも、ああなりたいな」
…
ワシはこういった。
「よく見てみ――
ただの図体がデカいだけのイノシシじゃ
お前さんらは
奴の大きさ
恐怖に恐怖しているだけだ」
…言葉を失う冒険者たち。
あの若者だけはウキウキ顔じゃった。
「――さあみんな今日は猪鍋じゃ。
酒も肉もワシのおごりじゃ。
みんなで飲もう!」