池の進行状況と雨の恵み~農家の変化
ワシは山を買い
そこに穴を掘り沢山の池を作ることにした。
なぜそんな事をするかと言うと
この場所を緑豊かな場所にするためじゃ。
別にこの村に愛着があるわけではないが
自分が対策を打てるのに
打たないのは技術屋としてのプライドが許さない。
この村の状況を分析すると
・この村は年に降る雨の回数が少ない。
・でも雨の1回に降る量は多い。
そして山から縦に線が入っている…
ということは、雨は全部川になって流れて消える。
しかし雨をホールドできれば問題はなくなる。
ということ。
なので山の上から
深さ50㎝広さは直径3mくらいの穴を掘ることにした。
そして穴を掘って出てきた土で後ろ側に土を盛る。
つまりこれで水を漏れにくくすることができるわけじゃ。
この方法は、アフリカの緑のベルトなどで、緑化推進として
実際に使われている方法。
理論的には単純だが、コストも安く効果は髙い。
この異世界でも緑の修復は可能じゃろう。
とりあえず冒険者ギルドの仕事をしながら
スキマ時間には、池を掘る。
働くを繰り返した。
よそ者が変わったことをしていると
村人がよく見に来ていた。
田舎は娯楽がないから
少し変わった事をしていると注目される。
…
そして3か月が過ぎ
雨のシーズンが始まった。
穴のない場所では全部流れていくが。
ワシが穴を掘った山には水が溜まっていった。
水が溜まると、鳥や野生動物がやってくる。
最初にやってきたのは、一羽の鳥だった。羽ばたきの音が、まるで『ありがとう』と聞こえた。
鳥や野生動物は糞をして、それは土を肥えさす。
そして糞の中に種が混ざっていると、そこに自然と植物が生える。
始めは雑草
そして徐々に小さな木も育ちだした。
ワシはその間も黙々と穴を掘った。
「妻が今のワシを見たら、なんというじゃろうな」
そんな事を想いつつ、ただ黙々と作業した。
村人たちはひそかに噂した。
「なんか最近ずいぶん涼しくなったな」
「そういや。あの爺さんが穴を掘って植物が増えてから涼しくなった。
うちのじい様が、昔に戻ったみたいだ。
昔は涼しかったと言っていたぞ」
「あの爺さんは昔に戻しているだけなのかもしれんな」
…
ある日
農家がこぞってワシに会いにやってきた。
「マスター。わしらにもあの技術を教えてください」
と
マスター?なにマスター茂吉… 悪くないw
ワシは彼らにこの技術を教えることにした。
すると
ワシの山のうわさが広まり、国中で山に穴を掘ろう運動が始まった。
はげ山が1年程度で、薄毛になり、数年すると、ボウボウになる。
ワシの30Gの投資は
大きなきっかけとなった。
…
農家が驚いていたのは
野生動物の糞が、そのまま肥料として使えることだった。
この国では糞だけでなく人の排泄物も乾かして、燃やされる。
燃料としてではなく、ただのゴミとして燃やされていたのだった。
「排泄物はニオイがするし
燃やすのも悪いことではないが…
ワシの知っておる一つの方法としては
糞を肥料にするという方法がある。
これのメリットとしては
土が豊かになるということじゃ。
ただし
使いすぎもよくないから
量が重要なのだがな」
と教えると
「それは無理だ」
というもの
「糞が土になるなら、そいつは面白い」
というもの様々だった。
ワシはついでの雑草や食品ゴミを堆肥にする方法も教えてやった。
「オレたち、こんなもんで土地が変わるなんて思いもせんかったよ…マスター、ほんとにすげぇな」
そう言われもした。
「ワシは方法を教えるだけじゃ。これがいい方法だとか。
そういう事をいうわけじゃない。
どの方法にも一長一短あるもんじゃ。
使うかどうかはお前さんたちしだいじゃ」
そうシツコク何度も言った。
――政治に使われるのは面倒じゃからの――