猟師との出会い
「もういい加減ガチャはやめようかな」
と受付嬢に漏らすと
「月始めは…レアな仕事に当たりやすいですよ」
という。
「そんなものかの…」
といいながら、ガチャをすると…
ようやく…違うの来ました。
1か月連続の薬草採取から
卒業です。
受付嬢がテンション高めで
「猟師さんのお手伝いです」
とアピール。
「なにそれ猟師さんのお手伝い…
はいはい。やります。やります」
と
坂上茂吉は文句を言わず
働く男なのです。
30分後猟師は冒険者ギルドまでやってきた。
普段は小物ばかりなので
一人でいいが
干し肉を納品するために
大物を取る必要がある。
そこで月に1度くらい冒険者ギルドに
クエストを出すらしい。
報酬は1.5Gだった。
この世界の猟は弓を使う。
獲物の足あとから生息地や活動場所を特定し
風下でじっと待機し獲物が来たら弓で射る。
ワシがやっていた猟銃での猟と同じだ。
もっともワシは罠猟が多かったがな。
3時間程して大きなイノシシのような獲物が獲れる。
するといきなり
「かつげ。運ぶぞ」という。
「おいおい血抜きはしていかんのか?」
とワシは聞いた。
「血?なんで抜くんだ」
どうりでか…
なんか干し肉が生臭いとおもったら
血抜きをしてないのか。
「この獲物をな。足に紐をつけて、つるす。そして太い血管を切ると
血が流れる。1時間ほどすると、全部血が抜ける。
すると肉の臭みがなくなるし、運びやすいんじゃ。
血は体の中で一番腐りやすい。肉の匂いってのは、ほとんどが血のせいじゃからな」
というと…
目をまんまるにして
「おーそうなんじゃ。なんか肉が生臭いってよく言われてたんじゃよ。ありがとう。さっそくやろう」
とめちゃノリ気だった。
血抜きをし、猟師の家に戻ってきた。
これからがさばく工程だ。
見ていると
さばき方はウマいが
内臓や脂身や脂の多い場所は、どんどんゴミ箱に。
「おいおい。これまさか捨てるのか?」
とワシは思わず口にだす。
「そりゃそうだろ。こっちはすぐ腐っちまうし、干し肉にも向かないしな」
「たしかに腐りやすいんじゃが…脂身は一度火にかけて溶かし、不純物を取り除いて冷ませば、清潔な油になる。これがあれば、炒め物にも使えるし、皮膚のひび割れにも効く」
「ほうどうする?」
「この脂は火にかけて溶かしてな、
それを布でこしてやると…不純物が取れて、白くてええ油になるんじゃ。
保存もできるし、火にかければすぐ戻る。飯にも、肌にも、万能じゃよ」
「なるほどな。ちょっとまってくれ。母ちゃん。今の話聞いたか。これやってくれ」
「あいよ。肌にいいのわ…最高だね。これ売れるのかい?」
「そうだな。これ一瓶で0.1Gくらいなら売れるんじゃねーか。試しで配ってみてよ」
「おーなるほどな。うちの国では炒め物があまりないんだが、ほかにつかえねぇか」
「この国のスープは、野菜だけだろ。あのスープに少し(スプーン1杯くらい)加えるとたぶんうまいぞ」
「本当か。母ちゃん。スープの残りあったろ、あれに少し入れて作ってみてくれ」
…
「あいよ。できたよ」
「おっ!いいにおいするな。うん。これうまいぞ。母ちゃんも飲んでみな」
「ほんとだね。これはウマいよ」
…
その後ワシは
・筋の部分はコツコツ煮たらウマいこと
・脂身の多い肉も煮てスープにすること
・内臓は栄養がある事と加工のコツ
を教えた。
本当はカツレツを教えたかったのだが
それは今回はやめておくことにした。
そしてこの件がきっかけで
干し肉中心だった村は
月に1度
限定の屋台やレストランで肉を煮たスープなどが売り出されることに
なった。
また野菜を煮ただけのスープは、コクがでるようになった。
ワシもこの村のスープの味が…ずっと気がかりだったから
ちょうどよかった。