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7 とっても可愛い女の子

「百歩譲って、その魔装具だったり、僕の錬金術が生命の交換が可能だったとして、死罪の人間100人集めても無垢な4才とは等しくならない。

 死罪の人間1000人いても、奴隷の価値しかない。

 一方で、労働力とした場合、死罪の大人と4才では、やはり等価値ではない。結論として、錬金術や魔装具なんてそんなものさ」



 今のリリアーナに理論や哲学を説いても、何も事態は動きません。


「法術や魔術でもダメかな?」


「うう〜ん、強い弱いの話であって、本質的には変わらないと思うよ。

 そうだね、可能だとして、前者は純血のまま身を捧げることを求められるかもしれないし、後者は呪いの実験に組みされるとかもあるかもしれない」


 助けたいと願うリリアーナに対して、ゼフィルは一歩引いた立場です。

 助からないなら、希望を持たせるのは残酷でしかないと考えるゼフィル。


「今まで助けられなかった生命は星の数ほどいて、それらが皆等しく助かってないことが真実だよ。

 輪廻転生がほんとにあるなら、別れは次の出会いになる。温かく見送ることも大事だと僕は思うけどな」


 二人はすっかり冷たくなった珈琲をただ、眺めるだけです。



「これはこれ。他のお客さんにとっては、何ら関係ないことだよ。このまま暗い顔で他のお客さんの接待をするのかい? 辛いことがあっても、笑顔を演じないとね。女優にならないと」


 その日は、なんとか笑顔で営業を終えるのでした。




 後日、お店をお休みにして、リリアーナとゼフィルは少し離れた村のお宅へ伺うことにしました。

 小高い丘にポツリと立つ、木造のお家です。

 先日相談に来てくれた御婦人のハリッチさんのお宅です。


『<コンコン♪>』

「「こんにちは!」」


「ようこそ、いらっしゃいました」

 中から、ハリッチが笑顔で迎えてくれました。先日のような暗い面影はありません。

 その点は二人は安心しましたが、作り笑顔であることも想像に難くないものでした。


 部屋の寝室に案内されると、ベットには女の子が横になっています。

 顔の肌艶は思ったより良くて、元気そうな雰囲気に思えました。

 目がクリクリして、ホッペはぷにぷにで、とても可愛い女の子です。


「「こんにちは」」


 ハリッチが二人を紹介します。

「ほら、こちらが前に言ってたお姉さんとお兄さんだよ」


 ハリッチは、女の子の上体を起こして、背中にクッションを当てました。


 リリアーナは、スカートの両端を持って、片ひざを軽く曲げもう一方のひざは後ろへ下げ、軽く会釈をします。

「はじめまして、リリアーナと申します」


 カーテシーでの挨拶ついでに、隣のゼフィルも紹介しました。

「そして私の隣が、ゼフィルオジサンですよ」


 ゼフィルは、深呼吸しました。そうです、アンガーコントロールです。


 ゼフィルは、胸に手を当て軽く会釈します。

「ゼフィル”お兄さん”だよ(強くニッコリ)」



 女の子は笑顔で挨拶をします。

「はじめまして、トレストです。おかあさんから、いっぱいききました。おねえさんとおにいさんが、とってもかわいいおみせをしていて、とってもおいしいまほうのおのみものがあるんだよって、おかあさんがいってました」


 トレストは、ずっと言おうと思って一生懸命に考えた頭の中のセリフを一気に読み上げます。



 やや?

 リリアーナ以上に、ゼフィルは一発で心を撃ち抜かれたようですね。リリアーナの背中をバンバン叩いています。



 だから、ゼフィルはお見舞いに行くことを反対していました。

 ゼフィルから見れば、ただの一お客さんです。ゼフィルも客ですが。ただ、あの場では雰囲気的にハリッチには店員ということで通しました。

 つまり、ただのお客さんの家にお見舞いに行くほどの義理は無いと考えました。

 行けば、情が湧きます。情で動くのは理性的ではありません。

 今、ゼフィルはとても後悔しているようです。



「うわぁあ! めっっっっちゃ良い子やん!」


 ゼフィルのスイッチが入ってしまったようです。

 少し引きぎみのハリッチとリリアーナです。


「うん、そうだよ、とっても素敵なお店なんだ。ぜひ元気になって遊びに来てほしいな」



「いるかねー? ハリッチさんいるかーい?」

 遠く、玄関から男の人の声です。


「あら、お医者様がいらっしゃったみたい。ちょっと外しますね」

 ハリッチは、トレストを二人に任せて部屋を出ていきました。


「ねえ、トレストはどんな食べ物が好きかな?」


 リリアーナは、ベット脇の椅子に腰掛けて話しかけます。

 ゼフィルもキョロキョロと椅子を探しましたが、一つしか無かったようです。

 ゼフィルだけ立たされているようで、シュンとしています。


「好きはホットケーキ!」


「やった! お姉さん、ホットケーキ超得意なの! ごちそうしたいな。早く元気になって、食べに来てほしいな」


『<コンコン>』

「よろしいかな?」


 先ほどいらしたお医者様のようです。

 ハリッチと一緒に部屋へ入ってきました。


 ゼフィルは、診察のお邪魔かと思えました。


「じゃあ、僕らはこれで・・・」

「え? もお?」

 リリアーナは小さく抗議します。

 先生も同意します。

「いてくださいな。せっかく来てくれたんだろ? 久しぶりの話相手がいてくれて、この子も嬉しそうだ」


「おねえさんとおにいさんが、おみせにおいでって♪」

「そうかい? じゃあ元気になったら、みんなで行こうかな?」


 少しばかりですが、幸せな時間でした。


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