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2 急に熱くすると脆いです

「リリアーナさんに見ていただきたい物がありまして。こちらなのですが・・・」


 リリアーナよりも少し年上、20歳くらいだろうか、イオリと名乗り、優しいお姉さんという感じです。


 彼女が手元から取り出したのは、一つのブレスレットの魔装具。

 リリアーナが手に取ると、そのブレスレットからは強い圧を感じたそうです。



 リリアーナはイオリを席へ案内して、テーブルへお水を出しました。


「さて、このブレスレット・・・どこで入手しましたか?」


 イオリはいきなりの質問で驚いた様子です。


「街中で偶然見つけた露天商です」

「その露天商は、いつも出店しているんですか?」

「そういえば、あれ以来見ていませんね。それが?」



「いえ、ちょっと思ったので聞いてみただけです。そして、このブレスレットが如何されましたか?」



「はい、あの・・・」


 イオリは、横でニコニコしているゼフィルを気まずそうに見ました。


 ピン!ときたリリアーナは、ゼフィルに言います。


「ゼフィルさん、席を外してください」

「え? 僕だけ仲間外れなの?」


 水しか出していないテーブルを指さして、


「ゼフィルさん、コーヒーをお出ししてください」

「なんで僕が・・・はい!」


 リリアーナが眉間にしわを寄せると、身の危険を感じ取ったゼフィルはすぐにカウンター奥へ引っ込み、コーヒーの準備を始めました。



「さて、話に戻りましょう。相談というのは・・・男性のこと・・・ですか?」

「・・・はい」

「ですよね。このブレスレットは・・・わかります」


 イオリは、泣きそうな表情でリリアーナに訴えます。


「恋愛に良いということで買い求めたんですが、これを身に着けてから意中の男性が私を避けるようになって。もしやと思ってこれを外しても、もう元通りになれなくて・・・」


 リリアーナは先ほどから、このブレスレットから、強い圧を感じていました。

 それは、まるで、「私に触るな」という圧に感じます。


「それまでは、意中の男性と仲良く過ごしていたんですか?」


「恋仲というわけではありませんが、良いなぁと思ってて、普通に会話も楽しくて、もっと仲良くなれたらなぁと思って・・・」


「それで、これを手にしたところ、まったく逆になってしまったんですね?」


 イオリは、小さくうなずきます。



「このブレスレットは、お二人には強過ぎたんだと思います。元々はこれがなくても、良い関係を築けたと思いますよ」


 リリアーナはにっこりと笑みをこぼし、奥にいるゼフィルを気にかけます。


「イオリさん、この魔装具のブレスレットからは『マハラト』の力が感じます。マハラトは、魔女の頂点に君臨します」


 一方、次第に部屋へコーヒー豆の匂いが漂い始めてきました。ゼフィルは美味しいコーヒーを淹れられるのでしょうか?


「もちろん、『マハラト』本体ではなく、マハラトの意思の欠片を継いだものです。

 一言でいえば、『マハラト』の力は上手く使えば恋愛に対して強く味方になってくれるんですが、今回は違う効果を出しています」



「もう少しで美味しいコーヒーが入るから、待っててくださいね~!」


 ・・・リリアーナさんは、少しお怒りのようです。ゼフィルは、空気を読めないようです。

 リリアーナはため息をつきながらも、話を続けます。


「素敵な男性に、この魔装具の力が強力過ぎるがゆえに、『マハラト』が嫉妬してしまったんだと思います。

 ゆえに、逆のことが起こったのでしょう。そう言われると思い当たるふしはありませんか?」


「そんな・・・」

 イオリは、良かれと思って手にした魔装具が、逆に作用したことに驚きを隠せません。


「はい、あの、避けられるようになりました・・・」




「お待たせしました、リリアーナが挽いた豆で、僕が淹れたコーヒーですよ♪」


 ゼフィルはカップを置いた際に見えた涙声のイオリを見て


「もう、リリアーナ、泣かせたらダメだよ」



 ゼフィルは、「ハウス!」と言われて、追い返されてしまったようです。

 すぐに、カウンター奥で小さくなっています。



 リリアーナは、近くの棚に置いてあった装具箱を取り出し、ピンセットとプラスのドライバーと、眼鏡を取り出しました。


 眼鏡をしたリリアーナが魔装具のブレスレットを見ながら力を込めると、魔装具は周囲を少しずつ照らすほどの光を帯びてきました。

 その光の中に覗き込むように顔を近づけて、同様に光の中で、ドライバーとピンセットを慎重に動かしています。

 光自体は眩しいので、外からはあまり見えなくて、リリアーナがしている眼鏡も光を弱めて見るためのものと思われます。


 リリアーナが少し手先を動かすと、時々光が揺らいだり、色が変化していきます。


「この光自体は何が出来るってわけでもないんですよ、勝手に光ってるだけで・・・」



 リリアーナは黙々と作業を進めて時折激しく光が揺れ動くのを、イオリとゼフィルは見守っているのでした。

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