ぼくはパイソンカマムシ
ぼくは虫として産まれた
でも知的生命体だったりする
宇宙でたまに起こる突然変異
手足も2本は退化してほぼ4本
パイソンカマムシ星でひとりぼっちだった
仲間はみんなただの虫だから
ぼくはたったひとりの自意識をもつへんなやつだった
そんなところにあのひとたちが来てくれた
降りてきたその銀色の宇宙船を見た時
みんなと同じように
ぼくは怖がった
ぼくらを滅ぼす悪魔でも降臨したのかと思った
あ
悪魔ってのは
ぼくが妄想で作った
ありもしない悪者だったんだけどね
宇宙船から降りてきたのは
地球人という笑顔のひとたちで
笑顔でぼくの仲間を駆除しようとしたけれど
ぼくが前に歩み出るとびっくりした顔に変わった
「こんにちは」
「ぼくはパイソンカマムシです」
「ぼくの仲間は言葉を話せないけれど」
「ぼくだけがこの星で唯一の知的生命体です」
ぼくは触覚で会話ができる
仲間がお腹が減ってたらそれをわかってあげられる
同じように
ぼくは地球人の言葉が触覚でわかった
孤独じゃないってわかった
言葉をもつのが宇宙でぼくひとりじゃないって知った
同じ孤独を共有する仲間ができた
そう思ったのに
ぼくの姿が気持ち悪かったみたいだ
彼らはぼくを置いて行っちゃった
いつかまた来てくれるかな
会いたくてぼくは空に手を振った