第3話 俺、冒険者になる
少し時間が出来たので、ちょっと書き物をしてみました
駄作ではありますが、読んでいただけたら幸いです
フギョァァァァァアアアアアー!
はい、俺マサオです
今日も安定した絶叫を皆様にお届けしています
いやぁ、悪い予感って当たるものですねぇ
自分でも怖くなるくらいに的中しちゃいましたよ
流石にあの姉ちゃんでも準備しないで町を発つなんて思っていなかったです
いや、ちょっと予想はしていましたが、まさか本当に起こってしまうなんて…
で、今マサオ君は姉ちゃんの脇に抱えられ運ばれています
「姉ちゃん! 早い! 早いって! てか、出ちゃうよ! 出ちゃうって!」
以前、海でも同じような事が起きた気がしますが、今回は陸路で起こっています
「む? これでもゆっくり走っているんだ! マサオも私の弟ならいい加減慣れるべきだ!」
こんなの慣れる奴居てたら見てみたいぞ!
「ピレネー殿のご子息と同じ事して遊んだが、喜んでいたぞ!」
…はい、居てました
しかもガキンチョでした…
そんな事は良い! 俺の口から何か出てくる
「お… おぃ! マサオ! うわっ! 私の服を汚すなぁぁぁあああああ!」
はい、こんなにも出ちゃいましたよ
俺は表現してはいけない物を口から出しまくり地面を転がる
へへへ… あの姉ちゃんに仕返しをしてやったぜ… グッジョブ俺 ガクッ
完
完じゃねぇよ!
俺はまだ生きてるからな!
はい、只今、マサオ君は簀巻きにされ、木の枝に吊るされています
わ~い! ミノムシだぁ~! キャッキャッ
って、遊んでいる訳じゃありません
というのも気が付いた時には既にミノムシになっていたのです
「姉ちゃん… ごめん… 許して」
俺は小動物が向ける愛らしい目をして姉ちゃんに許しを請う
すると普段無表情な姉ちゃんが満面の笑みを浮かべて俺に言ってきた
「駄目だぞ。 反省するまでこのままだ」
…………
次の日の昼下がり、俺と姉ちゃんは街道をトボトボと歩いている
うん、俺、今日の朝までミノムシになってた
ていうか、理不尽すぎる!
口から出る前にちゃんと警告したのに、それでも無視して走っていた姉ちゃんが悪い!
…と思ってはいるが、口には決して出せない
「よし、マサオ! あの辺りで休憩だ!」
姉ちゃんが街道の脇に立っている木を指差しながら言ってきた
俺と姉ちゃんは木陰で休憩中
その際、姉ちゃんが何処かへ行ったと思ったら、すぐに戻ってきたぞ
てっきり、お花摘みに行ったのかと思ったけど、全く違っていた
だって、背中に巨大な牛を背負って戻って来たからだ
敢えて俺は何も言わなかったけど…
姉ちゃんが大型トラック程の巨大な牛を、腕力だけで捌いていく
捌く相手が巨大なだけに、見たくない物が嫌でも目に入って来る
昨日から水しか口にしていない俺だけど、食欲が無くなってきた
「よし! 食うぞ。 マサオ!」
っ、てあんたは鬼か!
姉ちゃんが気合だけで焚き木に火をつけると、肉の細切れを調理していく
ウゲッ… 口からまた何かが…
出せばミノムシ 出さなければ巨大な牛だった物を…
究極の選択を迫られた時、救世主たちがこっちへ走って来た
「おぃ! お前ら! すぐに逃げろ! ギガントブルだ! すぐにここにも来るぞ!」
血相を変え必死に逃げる屈強な男達が、叫びながらこっちへ走って来る
何が起きているのか全く解らんが、究極の選択から逃げれそうだ
男達に何が起きているのか一瞬解らなかったが、その答えはすぐに解った
男達が来た方向を見て見ると、土埃を撒き上げながら巨大な牛がこっちに迫ってきている
その大きさからして、姉ちゃんが持ってきた牛の2周り以上の大きさだ
「おぉ!仕留めそこなった本命がこっちに来たでは無いか!」
姉ちゃんが俺と同じ方を向いて目を輝かせているようだ
てか、こいつだけは敢えて状況を理解しようとしていないな
そんな奴は放っておいて逃げないと!
俺はその場を素早く立ち去ろうとした
………
え~っと、只今、俺マサオは宙を飛んでいます
この世界に来てから、2度目の空中飛行です
ですが、まだ慣れる事はできません
ぐらぁぁ! マサオミサイル 再びじゃぁぁぁぁああああああ!
強がりって言うもんじゃありませんね…
はい、何度も何度も生死の境を彷徨ってはいるのですが、今回も彷徨ってきますね
…………
「おぃ! 兄ちゃん! 生きているか? おぃ!」
う~ん… なんか野太い声が聞こえてくる
時折、頬をぶたれている気がするのだが…
なんか冷酷無比な姉ちゃんの声じゃないだけ、かなり気持ちが落ち着く
うん、もう俺… 逝っても良いかも…
「マサオ、いい加減起きろ!」
うげっ! 誰かが俺の顔を踏みつけやがった
そのせいか後頭部を地面に激突させちまったじゃねぇか!
まじで逝っちまう所だったぞ!
「誰だ! いま、俺の顔を踏みつけた奴は!」
意識を取り戻した俺からの開口一番目の言葉だ!
俺だって怒る時は怒るのだ!
「いつまで寝たふりをしているのだ! ちゃんと起きているなら人の呼びかけにはすぐに返事しろ! だからマサオはいつまで経ってもマサオなのだぞ!」
以前もどこかで同じような事を言われた気がするが、敢えて言おう… これからも俺はマサオだ!
って、あれ? 姉ちゃんと… このオッサン達は誰だ?
「おぉ! 兄ちゃん、無事だったか!」
オッサンの一人が俺に話しかけてくれた
…なんか他人から初めて優しくされた気がする
見知らぬオッサンの優しい言葉が俺の心を解放する
「てっきりこの『でかい』姉ちゃんがお前をぶん投げた時には、もう駄目かって思ったぞ」
だけど、俺は意気揚々と話しかけてくれたオッサンの言葉を聞き、再び心が凍り付く
このオッサン… 悪気は無いとは言え、言ってはいけないワードを口にしやがった
次の瞬間、このオッサンは天高く飛んで行った
恐らく大気圏外の世界まで行って、お星様になっただろう
オッサン あんたの事は一生忘れない、星になっても俺の活躍を見守っていて欲しい
「私は、背は高いが、決して『でかく』はない!」
無表情ではあるが、巨大な女が憤怒のオーラを身に纏っている
うん、普段の行いを見ていると俺の姉ちゃんは無茶苦茶な事を平気でする
昔も今も変わらない
しかも、こっちの世界に来てからその度合いはエスカレートしている
しかし、感情的になって怒り狂う事は余りない
そこは姉ちゃんの無表情っぷりと同じみたいに
だが、そんな姉ちゃんも怒り狂う事がある
その一つは、姉ちゃんの事を『でかい』と言う事だ
どうも、姉ちゃんは『背が高い』って言われるのは問題ないみたいなのだが、『でかい』って言われると怒り出す
以前その事を尋ねた事がある
どうも、姉ちゃんの中では背が高いことは自覚しているが、『でかい』と言われると太っていると言われている気がして嫌だそうだ
まぁ、同じ理由で『巨大』って言うのもNGだろう… 試す勇気はないが…
一応、俺の姉ちゃんって2つだけ年上なんだし、そう言ったお年頃って奴なんだろうな
ズシン
そんな事を思っていたら、天高くお星様になったオッサンが大気の層を突き破り地上まで戻ってきた
うん、一つ訂正
地上には戻ってきていない、地面にめり込み今は地中にいる
…………
空には星々が輝き、周囲からは虫の鳴き声が聞こえてくる
昼間は少し汗ばむくらいの陽気だったが、夜になると少し肌寒い
そんな中、俺と姉ちゃん、そして強面オッサンズの面々が焚火を取り囲み肉を頬張っていた
俺の向かいには強面オッサンズの一人、『剛腕のムキーさん』
そしてその隣には『敏捷のスキップさん』
んで、俺の隣に人間ロケットを経験した『無限のシンラさん』が陣取る
何でも、この3人のオッサンは皆『冒険者』で、しかも同じパーティーメンバーとの事
その名前は… うんもう面倒だ… この3人は『強面オッサンズ』で良い!
異論は聞かん!
「でな! この辺りで雑魚モンスターを狩っていたんだ。 もちろん、ギガントブルの縄張りって知ってはいた…」
剛腕のムキーさんがモンスターから追われていた経緯を説明してくれる
なんでも、この辺りにギガントブル(超巨大な牛)が居てることは知ってはいたが、このモンスターって普段は大人しい
しかし、ちょっかいを出されたり、命に危険を感じると非常に狂暴になる
そんなギガントブルがいきなり現れて、『強面オッサンズ』を襲って来たらしい
どうして普段は大人しいギガントブル(超巨大な牛)が襲って来たのか、未だ皆目見当がつかないと言っていた
うん、俺知ってる
なんでオッサン達が襲われたのかを…
「これが原因だと思う」
俺がみんなで食べている肉を指差しながら答える
するとオッサン達はすぐ近くに置いてあった巨大な骨の山を見ていた
誰も何も言えない気まずい空気が辺りを支配する
しかし、姉ちゃんだけは何食わぬ顔して肉を頬張っているがな
「で… でも、あれだ! そこのでか… 背の高い姉ちゃんは物凄く強いな。 普通は軍隊が出動して追い立てるのが関の山だっつうのに、いとも簡単に倒してしまうのだからな」
この嫌な空気を打破しようと俊敏のスキップさんが無理やり会話を変えてくる
「確かに強いですが… その… 何て言うか… 近くには余りいない方が…」
俺がそういうと、何故か無限のシンラさんが大きく頷いていた
「で、兄ちゃん達はどこかへ向かう途中なんだ?」
そんな無限のシンラさんが俺に尋ねてくる
「うん、まぁ… 姉ちゃんどこに行くんだっけ?」
だって、どこへ向かっているのか正確な町の名前や場所なんて教えて貰っていないから聞くしかない
「ん? 言ってなかったか? ビン・ギニングの町だぞ!」
丁度、手元にあった肉を全て平らげた姉ちゃんは、新しい肉を焼こうとしながら答えてくれた
すると、強面オッサンズの面々が急に変わった
「おぉ! そうか! なら俺達も丁度ビン・ギニングに戻る所だったから奇遇だな!」
剛腕のムキーさんと俊敏のスキップさんは嬉しそうにしていたが、約一名、人間ロケットの… 違った… 無限のシンラさんだけ少し憂鬱そうな顔をしたのを俺は見逃さなかったぜ!
その後、冒険者の事や、俺達が目指しているビン・ギニングの事。 そして俺の後ろで昼間暴れていたギガントブルの亡骸について色々と話をした
その間、姉ちゃんは一人黙々と肉を食っていたのは内緒だぜ
……………
はい、マサオです
やっとです、やっと到着しました『ビン・ギニング』
ちょっとのどかな田園風景がそこいらで見られますが、これでもれっきとした町です
たぶんですが、この世界って城壁があれば町って感覚なんでしょうかね
一応石造りの城壁がでございますが、あまり高くなく少し高めの塀って感じですね
それと言うのも、この『ビン・ギニング』は国境に面してはいなく、周辺のモンスターも弱いものしか出てこないそうです
という訳で、戦火やモンスター襲来などほとんど無縁な土地らしいです
で、俺は今、そんな小さな町の冒険者ギルドに来ています
まぁ、町に入るとき『強面オッサンズ』の口利きや、姉ちゃんが持っていた手紙が功を奏したのか、すんなり入れました
すんなり入れたのは良いのですが、ギガントブル(大きいほう。 因みに小さい方は皆で食べちゃいました)を何食わぬ顔して運んでいた為(姉ちゃんが引きづっていただけ)町の人達が集まってきちゃいましたけど…
まぁ、ちょっとしたハプニングはございましたが、何とか無事にここへ来ております
「ほらよっ! ギガントブルの買い取り金だ!」
『強面オッサンズ』のリーダーを務める無限のシンラさんから金貨でいっぱいの袋を手渡された
無限のシンラさんのおかげでギガントブルを滞りなく卸す事ができたぜ!
このオッサン、顔はいかついが意外と良いオッサンだな
俺は金貨でいっぱいに膨れ上がった袋を手に取り、幸せな気分に包まれる
やっとだ… やっとこの世界に来てから俺の伝説がはじまるんだ!
「ふむ、これは私が貰っておこう」
理不尽大魔王が容赦無く俺の手から幸せが一杯に詰まっている袋を取り上げる
俺の伝説… わずか数分で終了
「これは貰い過ぎだ」
え? なに? 理不尽大魔王め! 何を言い出すんだ?
「何も知らない私達に良くしてくれたせめてもの礼だ。 受け取れ」
マジか? はぁ? ちょ… まて…
あぁぁぁああああああ! 俺の! 俺の金を! こんなオッサン共に渡すんじゃねぇ!
「いや、受け取れねえよ。 俺達の命を助けてくれたうえ、そいつを倒したのは姉ちゃん達じゃねぇか」
無限のシンラさんが驚いた顔で辞退している
そうだ! そうだぞ! この金は俺が稼いだ金だ!
しかも命を落としかけたのだからな!
当然、全部俺の金だ!
「いや、駄目だ! 受け取って貰わないと困る。 ならせめてこれだけでも受け取ってくれ」
理不尽大魔王が幸せが満たされた袋から、何枚もの金貨をむさ苦しいオッサン達に渡しだしたぞ!
うがぁぁぁあああああ! 幸せが! 俺の幸せがぁぁぁああああ!
…
俺の手元にはかなり軽くなった幸せの袋が手渡される
袋の中を覗くと、辛うじて3枚だけが残っていた。えぇっ?
んで、理不尽大魔王の手には大量金貨が…
辺りからは、ギャラリー共が拍手をしている
何処にも拍手をする要素なんてないじゃないか!
俺の金が減ってしまったのだぞ!
「いやぁ、久々に良いものが見れましたよ」
「話を聞いていましたが、あなたが倒したのに共の者にも礼節をとる姿… 非常に素晴らしい」
なんか、理不尽大魔王の元にギャラリー共がわんさと集まってきている
でもなぁ… あの金は俺の金だったんだからな! 全部俺の金だったんだからな!
…
「はい、次の方… あ、冒険者ギルドに登録の方ですね」
俺は今、ギルドの登録を済ませている
目の前には愛らしい受付の女の子
そんな年頃の女の子が制服を着て話しかけてくれるなんて、ちょっと照れてしまう
この世界って、男はピンからキリまで居てるけど、女性は皆、綺麗なんだ
だから余計に照れてしまうのは仕方ない事だよね!
「はははははい! マサオと言います! 登録したいです! ていうか何処に住んでいるんですか? 何歳ですか?」
少し焦ってしまって、声が高くなってしまった… あと、自分でも何を言っているのか解らん事を口走ってしまった
「え? …じゃぁ、この用紙に必要事項を記入してください」
変な物を見る目つきをされた様に感じたが、言われた通りに記入していく
まぁ、名前の欄には『マサオ』とだけ記入したけど…
だって、ファーストネームがあるのって、この世界だと御貴族様しか居てないんだもん!
「え~っと、クエストを受けるのには条件がありまして… マサオさんの場合だと『駆け出し冒険者クラス』なので…」
うん、目の前の可愛い娘が、俺に微笑みながら説明してくれている
何か言っているが、俺はその娘の声を聞くだけで十分だ
うっとり幸せ気分を満喫する俺
「おぃ、マサオ! お前、十分すぎる位気持ち悪いぞ!」
冷酷無比な声が、俺の幸せをぶち壊す
「マサオは、昔から女を気味悪がらせる素質があるからな! もっと自重しろ! 私やお母さまの様な優しい者などほとんど居ないのだぞ!」
俺の横にはいつの間にか巨大な女が…
「俺のどこが気持ち悪いっていうんだよ!」
流石に俺も頭にきたから言ってやったんだが… 巨大な女の腕には先ほどまで優しいほほ笑みを浮かべていたあの子が必死にしがみついている
…はい、すいません。 自重します
…………
俺はまだ、冒険者ギルドにいてる
え? 登録まだ終わらせていないの?
いやいや、紙に名前を書くだけの作業だぞ! 流石の俺でもヘマはしない
じゃぁ、なぜいるのかって?
そりゃぁ、目の前に水晶玉があるが… これだけで勘の良い奴は気づくだろう?
ここは、冒険者ギルド、そして目の前には水晶玉…
このワード2つでピンときた奴、挙手!
そうです、ステータスやら魔力とかを計測するイベントです!
といってもここでするのはステータス確認ではなく魔力の計測ですよ
はい! 今からマサオ君の魔力測定イベント開始~ わ~ぱちぱちぱち
さて、皆さん
どういった展開になるか予想してみましょう
その1
俺が水晶玉に手をかざす
すると余りにも魔力が強すぎて水晶玉が壊れてしまう
これはお約束って言う奴ですね
その2
俺が水晶玉に手をかざす
すると眩い光が辺りを照らし伝説級の魔力が示される
これも良くある奴ですね
その3
俺が水晶玉に手をかざす
すると有り得ない表示を示して周囲を驚かす
これに関しては、余りないパターンですよね
さて、皆さんはどの結末に落ち着くのか予想できたかな?
では、やってみましょう
「お姉さん… 俺にその水晶玉を…」
うんうん、良いぞ俺! やや影のある人物を見事に演出できている
目の前のお姉さんがそっと水晶玉を俺に差し出す
因みに、受付で対応してくれた女の子は奥の部屋に走り去っていったよ
その後、奥の部屋から女性の泣き声が聞こえて来たけど気にはしない
それはさておき、俺は水晶玉に手をかざす…
「ふふふ… 我が魔力、しかと刮目せよ!」
よしよし、良いぞ俺! 孤高の魔法使いっぽさを見事に演出できている
…
何も反応しない…
ふむふむ… ただ手をかざすだけじゃ駄目ってことかな?
なら少しだけ力を込めて… だって、いきなり本気で力を入れると水晶玉が砕け散ってしまう恐れがあるからな!
「むぅぅうううううん! 魔力の奔流よ! この手に集えぇぇぇえええええ!」
…
な… なんと… 未だに反応がないとは…
いや、もしかしたら俺だけ解っていなくて、他の奴らには俺の凄さが伝わっているとか、使い方自体が違っているかのどちらかだな!
俺は目の前に居てるお姉さんにそっと目をむける
退屈そうにあくびをしていやがった!
「あ… あのぉ… これ壊れていませんか? それか、使い方ってこれで合ってます?」
退屈そうに耳をほじっているお姉さんに聞いてみる
「あ~… それで合っていますよぉ」
愛想も糞もない返事が返ってきた
「なら、俺の魔力は?」
なら、何かしら解っているはず…
予想していた結果ではなかったものの、俺の凄さは表示されているはずだからな
「無いですね」
へ?
無いって?
あぁ、そういう事か… ファンタジー世界の魔法属性アルアルで無属性って言うやつの事ね!
『無』属性… 超激レアな属性で、全ての属性を遥かに凌駕する偉大な属性ってやつだな!
「ふむ、俺の属性が『無』属性な事は解ったぞ。 で、俺の魔力量は?」
俺は再び目の前で居眠りをしはじめるお姉さんに声を掛ける
「ん?… 昨日夜遅くまで仕事していたもので… あぁ、マサオさんの魔力量は全く無いですよ。 それと『無』属性ってなんですか? そんなの知らないです。 では、他にも仕事があるので失礼しますね」
無情にも辛い現実を告げながら、お姉さんは俺の元を去ろうとした
「おぃ、そこの女、私にも今のをしてもらえないか?」
うわっ! 急に横から姉ちゃんが現れたよ!
「あ、はい! これに手をかざしてください」
俺を応対していたお姉さんが、急に顔を赤らめだしたぞ
「む、こうすれば良いのか?」
姉ちゃんが水晶玉に手をかざそうとする
「そうです、ここに手を…」
なんか、説明をしていたお姉さんが、俺の姉ちゃんの手をとり丁寧に説明しはじめたぞ
ていうか、俺との応対に差がある気がするんだが…
………
姉ちゃんの魔力について結果を言おう
水晶玉が壊れた… 訳ではなく、光輝いた訳でもない
俺と同じく全く変化なし
ふふふ… 俺と同じ魔力0だな!
ここで、姉ちゃんだけ凄い魔力を持っていたら、俺、心が折れちまっている
まぁ、俺が魔力0って言うのは少しショックだったけど、姉ちゃんも同じく0な訳だから、まずは良しとしとこう
「ふむ、すまんな時間をとらせて」
姉ちゃんが、謝っている
そりゃ、時間の無駄ってもんだよな
「いえ、魔力が無いとしても、私はあなたの魔法に掛かっています。 もし宜しければ、あなた様のお名前を」
ん? なんかギルドのお姉さんが変な事言っている
「ん? 私の名か? 私はマツザ…」
「はい! このでか… 背の高いおん… 女性はアリサって言います!」
俺は慌てて、姉ちゃんの名前を教える
マジで、焦った!
いきなり苗字を言おうとしたからな
俺達は御貴族様じゃねえっていうの!
ん? なんかギルドのお姉さんから痛い視線が…
「あ! アリサ様って言うのですね… 私は…」
ギルドのお姉さんの視線が、再び姉ちゃんに向けられる
しかも、どういう訳かは知らんが、なんか目を輝かせ、自己紹介し始めているんだが…
残念だったな… 俺の横に居てる巨大な女は聞いている素振りはしているが、ほとんど聞いてはいないぞ
貴重な時間を、この作品に費やして下さり感謝しています
色々と読みにくい箇所がありますが、そこはスルーして貰えれば嬉しいです
最後にもしこの作品が良ければコメント頂ければ励みになります