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月守り  作者: まりも
2/5

物語の続き

お年寄りから小さな子どもまで、誰もが知っているおとぎ話、『竹取物語』。

だが、かぐや姫は実在し、全ては実話だった。

そして、物語には、人々に知られていない続きがある。


月界からの迎えと共に一度は月へ返ったものの、帝を愛していたかぐや姫は、その想いを抑えきれず、もう一度地上へと降り立つ。


再びすぐに月界へと連れ戻されたものの、その短い逢瀬(おうせ)の中で、姫は帝の子を身籠った。

そうして、姫と帝の子どもが生まれたが、半分人の血が入ったその子を、月界へおいておくことは出来ず、姫は生まれた子どもを地上の帝へと託した。


愛する姫との、姫に似た美しい女児を帝は大変喜び、その子は帝の元で大切に育てられた。


そうして、全ては上手く収まったかのように思われたが、しばらくすると、帝の屋敷を度々(たびたび)妖怪が襲うようになった。


かぐや姫に求婚し、条件としてだされた燕の子安貝(つばめのこやすがい)を手に入れようとして断命した中納言石上麻呂(ちゅうなごんいそのかみのまろ)が悪霊となり、かぐや姫の娘を手に入れようと妖怪を操っていたのだ。


月界人の血を受け継ぐその子が悪霊の手に渡れば、どんな災いが降り注ぐか分らない。


かぐや姫は、愛する帝と娘を守るため、自分の月界人としての力を帝に渡した。帝はその力を、自分のもっとも信頼する側近達に与え、娘を守るよう命じた。


以来、彼等は月守り(つきもり)と呼ばれ、何千年もの間、月界の力を駆使して石上麻呂(いそのかみのまろ)と戦い続けている……







「あー、寝ちゃってたのかぁ…。」


蛍が目を覚ますと、目の前一面に銀色が広がっていた。


「寝ちゃってたのかぁ…じゃ、ないだろ!普通あのタイミングで寝るか!?しかも立ったまま!」


あの後、結局目を覚まさない蛍を、朔がおぶって運んでいたのだ。


「ゴメンって。でも睡眠は人間の三大欲求の一つなんだよー。我慢するのにも限界があるんだって。」


そう言って、自分の背中で大きなあくびをしている蛍を、朔は呆れ顔で振り返り、足を止めた。


この、どこまでもマイペースな少年が、月守り(つきもり)の中でも上位の力を誇る香具夜の当代当主だと、現状からは誰も想像出来ないだろう。


しかし、蛍の髪と瞳がその力の壮大さを物語っている。


月界の力を持つ者は、体のどこか一部に藍色を有した容姿を持って生まれてくる。

そして、その藍色の強さと力の強さは比例するため、より多くの部分に藍を持つ者が、大きな力を有しているということになる。

もっとも多いのは、片方の瞳が藍色というパターンだが、蛍の瞳は二つ共に藍。加えて髪まで藍色だ。

これ程の藍を有して生まれてきたのは、長い月守りの歴史の中でも、蛍を除けば300年前に一人きりとされている。


「起きたから自分で歩くよ。」


「いい。どうせもうすぐ家だ。このまま運んでやるよ。またいきなり寝られても困るしなー。」


背中から降りようとする蛍を止め、朔は再びゆっくりと歩き出した。


「あんまり甘やかすと、ダメな子に育つよー?」


「今日は特別。その代わり、明日からはきちんと昼寝すること。」


「了解。」


そっと翼に擦り寄る感覚を背中に感じ、朔は穏やかに微笑んだ。






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