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月守り  作者: まりも
1/5

蜘蛛と兎と少年と

「…眠い。」


「だからあれだけ昼寝しておけっていっただろう。」


「昼間は眠たくなかったんだよ。」


時刻は深夜2時。


すっかり寝静まった街を歩く、大きさのちがう二つの影がある。


「寝る子は育つって言葉知ってるか?夜眠れないのに昼寝もしないで寝不足が続いたら…その歳で身長止まるなんてことも有り得るなー。あー、可哀想。」


「…それ真剣に嫌。不吉なこと言わないでよ、(さく)。」


「ははっ。牛乳もしっかり飲めよー。カルシウムは大事だぞ。」


本気で嫌そうな顔をして自分を見上げる少年に、大きい方の影の主、(さく)はいたずらっぽく笑いかけた。


予想通りの反応に、満足そうな笑みを浮かべる瞳は、深みのある藤色。

月明かりに照らされる髪は銀色で、褐色の肌によく映えている。

スラリとした背中から伸びた、髪と同じ銀色の大きな翼が、彼が人とは異なる存在であることを物語っている。


「僕まだ12歳。牛乳だって飲んでるし、これから伸びるの、こ・れ・か・ら。早く来い成長期ー。」


そう言って、本日何度目になるか分らないあくびを浮かべ空を仰いでいるのは、小さい方の影の主、香具夜(かぐや) (ほたる)


肩まで伸びた柔らかな髪は、一見黒色に見えるが、よく見れば深い藍色だと分かる。

あくびのせいで潤んだ大きな瞳も、同じく美しい藍色だ。

白衣に深草色の袴の神主衣装を纏う(まとう)肌は、透き通るように白い。


「それにしても、今日は平和だな。いつもなら、もうとっくに現れてる頃だろ。」


「よろこばしいことじゃないか。平和万歳っ。出来れば今日はこのまま何事も無く終って…とにかく寝たいー。」


「…噂をすれば。残念ながら、平和な散歩は終了だ。…来るぞ。」


朔の言葉が終るか終らないかのタイミングで、前方からガサガサガサ…と、何か大きなものが、地面を這う音が聞こえてきた。


「…ぅわー。今回はまたずいぶんとグロテスクな見た目な敵さんだことで。」


音が近づくに連れ、物音の正体が明らかになると、蛍は顔を引きつらせた。


現れたのは、五メートルはあるであろう巨大な蜘蛛。大きさだけでも充分気味が悪いのに、その上体が毒々しい紫色、目が青色といった具合なので、こちらが受ける視覚的ダメージはかなり強い。


「蛍っ!来るぞ!」


朔が叫ぶと同時に、蜘蛛が勢いよく、こちらに向かって糸を吐き出した。

それよりも一呼吸早く、蛍を抱えて朔が空中へと飛び立つ。

さっきまで蛍達が立っていた地面は、蜘蛛の糸に触れると、ジュッと音をたてて溶け、アスファルトの焦げる嫌な臭いが辺りにたちこめる。


「糸まで紫!もーホント勘弁して欲しいよ!」


近くの家の屋根へと着地すると、蛍は首から提げていた朱色の勾玉に左手で触れた。


すると、辺り一帯が、薄い赤色の光に包まれる。それと同時に蛍の手には、勾玉の光によって具現化された、朱色の弓矢が現れた。


「よし!結界張ったな!じゃあ、俺が攻撃してあいつの動きを止める、お前はそこを狙え!」


「了解。」


短いやり取りを終らせると、ちょうど蜘蛛が再度こちらに向かって毒糸を吐き出そうとしているところだった。


「させるかぁっ!」


叫ぶ朔の姿は、人から獣へと変化していた。


その姿は、長い耳が特徴的な、銀色の巨大な美しい兎。

人型の時と同様に、背中には翼がある。

兎などと表現すると、可愛らしい印象を与えてしまいがちだが、研ぎ澄まされた大きな爪と、鋭い紫電の瞳が美しくも恐ろしく、本来の兎のイメージからは程遠いものへとしている。


糸が吐き出される前に、跳躍して蜘蛛との距離をいっきに詰めると、蜘蛛の右目を爪で攻撃した。

鋭い爪に瞳をえぐられた蜘蛛は、長い手足をばたつかせて暴れている。

いっきに爪を引き抜き、朔は空へと舞い上がる。


「今だ!」


「いっけぇぇぇぇー!!!!」


朔の合図と共に、蛍は先ほど具現化した弓矢を、蜘蛛の左目を狙って放つ。


朱色の光に包まれた矢が、ザクッと音を立てて蜘蛛の左目に命中すると、蜘蛛の体全体が、朱色の光で覆われる。

最後の抵抗なのか、大量の糸を撒き散らしてもがいていたが、程なく、そのまま地面へと吸い込まれていった。


「見た目の割りに、あっさり片付いたな。」


蜘蛛が完全に消えたのを確認し、人型に戻った朔が、蛍の方へと戻ってきた。


「あっさりじゃないよ。あの見た目…トラウマになりそう。」


項垂れている蛍の手に握られた弓矢は、次第に形を失い、朱色の光へと変わり勾玉の中へと吸い込まれていった。


「確かになかなかインパクトのあるヤツだったよなー。こぅ、全力で毒蜘蛛ですって主張してるような。でも、あんなんで参ってるようじゃお前もやっぱりまだまだだなぁ。この先、あれの百足(むかで)版とか出てくるかもしれないぞー。」


そう言っておどけてみせるが、蛍からは返事がない。

項垂れたまま、ピクリとも動かない蛍を見て、そんなに蜘蛛の見た目にショックを受けたのかと少し心配になる。


「…ゴメン朔。僕、限界かもしれない。」


やっと返ってきた返事は、そんな弱弱しいもので、焦って蛍の顔を覗き込むと…………


スヤスヤと穏やかな寝息を立てて眠っていた。


確かに、今日の蛍は絶好調に寝不足だった。

普通に考えて、12歳という年齢でこの時間に起きていることが困難なのも分かる。

分かる…が、しかし!


「立ったまま寝るなー!!」


静けさを取り戻した街に、朔の叫び声だけが虚しく響き渡った。




はじめましてな投稿です。

しかもいきなり連載…

書きたいことはたくさんあるけど、文才がなくてまとまらないぃぃ↓↓

とにもかくにも、とりあえずは無事完結させることを目標に頑張っていきたいと思います。

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