第85話 救世主
「な、なにっ……!?」
『ん~、ん~、ん~っ!』
自分で自分の首をはねろ、だとっ……!?
「や、約束が違うじゃないかっ……奇跡のハチミツを渡したら、メタムンを助けてくれるって――」
「だってきみは僕がこの島でしたことを知っている唯一の人間だ。そんな奴が生きていたら困るからね。死んでもらわないと」
「ふ、ふざけるなっ……そ、そんなこと出来るわけないだろっ……」
俺は反論する。
だがメタムンを人質に取られている以上、
「そうかい? だったらメタムンくんを殺すまでだよ」
案の定メタムンを盾にされてしまう。
『ん~、ん~~っ! ……ぷはっ、善っ! おいらのことなんかいいからこいつをやっつけ――』
「黙っててくれよ」
一瞬喋れるようになったメタムンだったが、すぐに米村にツタで出来た猿ぐつわをきつく口にくわえさせられてしまった。
「さあ、どうする? 僕はどっちでもいいんだよ」
米村はメタムンの首元から死神のデスサイスを決して離そうとはしない。
少しでも隙があれば瞬時に移動して米村からメタムンを取り戻せるのに……。
「いつまでも待ってあげたいところだけど、そういうわけにもいかないからね。シンキングタイムはあと十秒だけにしようか」
そう言った米村は「十、九、八……」と数を数えていく。
ど、どうすれば……?
俺が自死を選んだところで米村がメタムンを助ける保証はない。
かといって無視すればメタムンが確実に殺されてしまう。
「四、三、二……」
「く、くそっ……」
「わかった!」と俺が声を上げようとしたまさにその時だった。
米村の手からメタムンがひとりでに移動した。
「へっ?」
「なっ……!?」
『ん~っ!?』
そして米村から離れた場所にメタムンが下り立った直後、
「し、柴木さんっ……今ですっ!」
聞き覚えのある声が俺に向かって飛んできた。
米村と目が合う。
米村は目を見開き、口を大きく開けていた。
そんな米村の懐に飛び込んだ俺は、
「このヤローっ!」
全力で殴り飛ばしたい衝動を必死に抑え、一割程度の力で米村の顔面を殴りつけたのだった。
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