第83話 独白
「な、なんで……なんでこんなことを」
俺は地面に倒れている北原を見やる。
「うん? こんなことって?」
「人殺しに決まってるだろっ。なんでみんなを……北原を殺したんだっ」
「う~ん、殺しねぇ。これって殺しなのかなぁ?」
首をかしげ米村は俺に問いかけてきた。
「死神のデスサイスで斬りつけると相手の魂を奪えるらしいんだけど、体は冷たくなっていないんだよね。だからこれって正確には殺してはいないんじゃないかな。ねぇ、どう思う? 善くん」
「……っ」
俺は何も返せない。
「まあいいか、同じようなものだよね。それより、なんでこんなことをするのかって質問だったね。善くんには特別に教えてあげるよ」
米村はゆっくり近づいてくる。
俺はその分後ろへと下がった。
「僕はこれでも中学時代は暴走族の総長をやっていたんだ。それなりに大きな族だったんだよ。でもいつまでもそんなことやってるわけにはいかないからね、すぱっとやめて優等生に生まれ変わったんだ。とはいえ優等生をやっているとストレスが結構たまるんだ。だからそんな時に僕はね、近所の野良猫を保護してきて僕に懐くまで精一杯お世話をしてあげるんだよ」
何を言ってるんだ……?
「初めは大変だよ。人間のことを敵だと思っているからね、すぐにひっかいてくるし噛みついてくる。エサも食べようとしないしね。でも時間をかけて優しく優しく接してあげているとね、そのうちちょっとずつだけど僕に心を開いてくれるんだ」
「な、何の話をしているんだ……?」
「数週間の時もあれば数ヶ月かかる時もある。そして完全に僕に懐いたその猫を僕は……じわじわと時間をかけて殺すんだ」
「なっ……!?」
「信じていた者に裏切られ殺されると知った時のあの顔がたまらないんだよ」
米村は恍惚の表情を浮かべている。
「いつか人間にも出来たらいいなぁとは思っていたんだけど、まさかそのチャンスがこんな形でやってくるなんてね。最高だよ」
「あ、あんた、イカレてるぞ……」
「理解してもらおうなんて思っていないよ。そんなつもりで話したんじゃないからね」
「だ、だったら……」
「善くん、きみの持っている奇跡のハチミツを僕にくれないかい?」
またしても米村は俺の言葉を無視して話し出す。
「はっ? わ、渡すわけないだろっ……」
奇跡のハチミツは使用者とほかの誰かの居場所を入れ替えることの出来るアイテムだ。
そんなものを渡したらこの【魔物島】から米村を逃がすことになる。
「まあ、そうだよね。そう言うと思っていたからこいつを用意していたんだけどね」
そう言って米村はずっと後ろに隠していた左手を胸の前に出した。
「なっ……!?」
米村が左手に持っていたものは――
「メ、メタムンっ……!!」
『ん~、ん~っ』
口をツタでぐるぐる巻きにされたメタムンだった。
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